先月行われた佐藤(康)9段と郷田9段の棋王戦の挑戦者決定トーナメントの将棋が ネットを賑わせたようです。自分は知らなかったので、改めて調べてみたら納得の一言で、 いわく「棒銀」ならぬ「暴銀」戦法。AIによる評価値は高くなかったようですが、 「そんなもの関係ない。自分はこう指したいんだ」みたいな意気込みを感じさせる、 これぞ佐藤康光の真骨頂といわんばかりの豪快無比な指し方でした。 佐藤9段といって思い出すのはある観戦記者が書いていた次のようなエピソード。 その観戦記者は知り合い(居飛車党)から「棋譜並べで最適なプロ棋士を教えて欲しい」と聞かれ、本格派で筋に明るい斎藤8段を勧めた。後日、その知り合いに記者が斎藤8段の棋譜並べを やっているのかと聞いたところ、彼は「佐藤康光9段の自由奔放な指し方に惹かれて彼の 棋譜並べをしている」と答えたので、記者は苦笑するほかなかった、というもの。 確かに棋譜並べの面白さという点なら佐藤9段は全棋士中トップクラスだとは思いますが、 アマチュアが並べて参考になるのかと見方を変えれば、逆の意味でもトップクラスだと思います。 あんな指し方を真似して指しこなせるアマチュアなんているわけないですからねえ。 一方、敗れた郷田9段も敗者復活戦で豊島9段を倒し、続く佐藤9段にリベンジを果たして 挑決戦まで進みましたが、惜しくも永瀬王座に敗れました。また郷田9段は今年初めに行われた 前期棋王戦の解説で、AIが最善手と示した指し手に対して一刀両断したことが話題となりました。 曰く「50000年生きていても考えないですね。美しくないですから。人間が美しいと 感じることはすごく大事なことなんです」。さすがに棋界で「格調高い将棋」の代名詞とされる 郷田9段らしい信念の一言です。もちろんこれに対しては賛否両論あったようですが、 これも郷田9段が郷田9段であるが所以であり、一言で言うと「格好いいな」と私は思いました。 |
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郷田九段が解説で 「指す人の棋力によって最善手は違うと思う」 ということを言ってました。 確かにその通りだと思いました。 あまり定跡や善悪にとらわれず、 自分の棋力に合った指し手や、将棋を指せば良いんだなと考えるようになりました。 |
この佐藤9段VS郷田9段戦が将棋フォーカスで紹介されていました。 ただMCの山口恵理子2段が「アマチュアの方は絶対にマネしないでください。 これは佐藤9段だからできる指し方です」みたいな注意喚起をしていたのが シュールで笑えました。 また同じフォーカス内で珍名の囲いを紹介していましたが、そこで紹介されていた 「トラック囲い」と「カニ缶囲い」は私も知りませんでした。前者は対振り飛車戦で 使ったこともあるのですが、あんな名前がついているとは意外でしたね。 |