閣下にもふもふする板


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旧ログ掲載 管理@早坂 投稿日: 2018年03月24日 04:22:31 No.29 【返信】

2016土用の丑の日におはようございます そのぎ 2016年07月30日(Sat) 08:16

[晦日の丑の日]

最近ヤンは俺の目から見ても明らかに疲れている。
空の歯磨き粉のチューブを振り回して『ねえ、パスタの買い置きは?』などとのたまうし。
コンビニで釣り銭を貰ったらまた支払おうとしたし。
だが決定打だったのは選挙で投票用紙にあろうことか『ヨブ・トリューニヒト』と書きかけた事だった。
俺は直ちに対策を講じる事にした。

「で、今日はロイエンタールの特別手料理で治してくれるって訳?」
「そうだ。お前のは夏バテどころか夏ボケの領域だからな」
割と的確な指摘をしつつロイエンタールは味噌風味の鍋を持って来た。
「これは……牛鍋?」
中では牛肉の角切りが葱などと共に煮たっていた。
「丑の日で『う』のつく牛、そして今日三十日は晦日(みそか)で『味噌の日』だ」
「なるほど、大豆の蛋白質は脳にいいと言うしねえ」
「俺にしてみれば商業主義もいいとこだが」
「まあまあ、美味しければいいじゃないか。それに牛鍋は文明開化の象徴の一つで、日本人が積極的に肉食を始めるきっかけとなって……」
ヤンの歴史講義を交えつつ、楽しい会食が続いた。
「ふう、ごちそうさま!美味しかった!」
「それは良かった。歴史に関してはボケて無くて幸いだったな」
「はは……」
「ところで今日はもう一つあるんだが……」
ロイエンタールは後ろからヤンの首に手をまわした。
「今日はな……『プロレスの日』でもあるのだ!」

このあと、夜の興行が始まったかは定かではない。

おしまい


旧ログ掲載 管理@早坂 投稿日: 2018年03月24日 04:21:40 No.28 【返信】

2016七夕の朝におはようございます。 そのぎ 2016年07月07日(Thu) 05:47


『人の事は言えない』


そりゃあ私だって好きで体を許さない訳じゃない。
まだ心の準備が出来てないだけで。
そしてロイエンタールは自制してくれている。
だからロイエンタールがエヴァと話し込んでいるからって、私が腹を立てる権利なんか無い。なのになぜ……

私は呆然とするロイエンタールを雨の中に残し、とにかくスーパーへ駆け込んだ。
ヤケ酒にと籠へ乱暴に缶を投げ込んでたら、陳列棚を崩してしまった。

――店の人はいいですと言ってくれたけど――道義的理由からボコボコの缶入り袋を引きずりつつ帰宅すると、ロイエンタールとなぜかミッターマイヤーがいた。
少し気まずい雰囲気の後、私は二人を招き入れた。
一人でこのカルピスサワーは飲みきれないと悟ったから。

ロイエンタールから話を切り出した。
お前の怒りの理由が分からずミッターマイヤーに相談したと。
そして得た答えは『独占欲』だと。
こればかりは努力ではどうにも出来ないと。
私は黙ったままだった。
既に空き缶は十個以上転がっていた。
するとミッターマイヤーが言った。
俺もエヴァがロイエンタールと話し込んでいるのを見て嫉妬を抑えるのに苦労したと。
私とロイエンタールは思わずミッターマイヤーの顔を見た。
戸惑ったミッターマイヤーは酔い醒ましに庭へ出ようと提案した。

真夜中の天の川は雨に洗われ、煌めいていた。
ふと私の脳裏に、ベガとアルタイルが嫉妬する機会も無くひたすら再会の日を待つ姿が浮かんだ。
私は自分の傲慢さを恥じたが、ただロイエンタールの手を握るしか出来なかった。
だがその上に別の手が添えられると、心臓が思い切り跳ね上がった。
そのままお互い動かずにいた。
いつのまにかミッターマイヤーが帰った事にも気付かずに――

おわり


旧ログ掲載 管理@早坂 投稿日: 2018年03月24日 04:20:42 No.27 【返信】

20160505端午の節句におはようございます そのぎ 2016年05月05日(Thu) 07:58

【秘密の天使】

何が欲しい?と聞かれたヤンは思い切って『君の秘密!』と答えた。
ロイエンタールはそんな大したものは無いぞと笑った。
だが探せば何か秘密が見付かるかも知れんと、ある別荘へヤンを誘ったのだった。

煩わしい事は避けたかったので一切の使用人を連れず二人だけで秘密探しを始めた。
そこかしこの棚、箱、物置、クローゼット等々、埃こそ溜まっていなかったが代わりに疲労が溜まってしまった。
「お願いロイエンタール!少し休ませて!」
「そうだな、秘密は逃げんだろうしな」
二人は持参したものでティータイム。
「ねえロイエンタール、どうしてここで探そうと?」
「……何となく小さい頃の思い出があるらしい。ぼんやりとだが。」
「執事に聞いたら、一時期自分が俺の父親の命令で連れてきていたそうだ」
「……父親は母親が俺のせいでああだったから遠ざけたかったんだろう。出来れば永遠にな」
ヤンは既に知っている事とは言え、辛い事を思い出させてしまったと後悔した。
気まずくなったヤンはお茶のお代わりをと台所へ向かった。
ドシン!ガタン!
「いたた……」
お約束通りヤンは散らかった物につまずいた。
「あれ……?」
ヤンはいつの間にか封筒を手にしていた。表には『O・V・R』と書かれていた。
「大丈夫かヤン……何だこれは?」
ロイエンタールが中身を取り出すと、それは平面写真だった。
「どれどれ私にも……可愛い!」
どの写真にも金銀妖眼の小さな男の子が写っていた。
三歳か四歳位だろうか。無邪気にはしゃいでいる表情が眩しかった。
「参ったな、執事の奴の仕業だな?」
ロイエンタールは苦笑こそしていたが目は怒りと正反対だった。
しかし次の瞬間、ロイエンタールは写真を引ったくった。
「ちょっと!返してよ!」
「駄目だ!絶対に駄目だ!」
「いいじゃないか!素敵なポーズだったぞ!」
「お前そんな趣味があるのか!?」
「違うよ!!」
「とにかくこれは門外不出だ!小川で全裸姿の俺なんぞ……!!」
室内で追いかけっこする二人をよそに、小川の天使はフレーム内で微笑んでいた。

終わり


旧ログ掲載 管理@早坂 投稿日: 2018年03月24日 04:18:07 No.24 【返信】

20160404ヤン提督の誕生日にこんばんは そのぎ 2016年04月04日(Mon) 21:59


【夜桜の巣の下で】

今は四月。なのに外は雨。ロイエンタールと唯一山の夜桜が見られる日だったのに。
せめて春雨のデートでもと思ったら『病欠の同僚のピンチヒッターで残業』と素っ気ないメール。
仕方なくヤンは一人で山頂行きのバスに乗った。

ヤンは展望台のあずまやで一人佇んでいた。
山頂と言っても都会の山である。
見下ろせばビル群の灯りが輝いていた。
あの中でロイエンタールは仕事に追われているんだろうか、と思いつつ水筒を取り出した。
とっておきのラプサンスーチョンを出来るだけ温かい内にと会社で淹れて来たものだった。
馥郁とした香りはしかし一人では半減したような気がした。
肝心の桜は雨の中でもそれがどうしたと言わんばかりに美しさを誇っていた。
夜の桜は昼間と違い蠱惑的なものを感じた。
ヤンはしばし寂しさを忘れ、その魅力に自ら引き込まれていった。

どれくらいそうしていただろうか。
少し遠くで最後の上りのバスが停まる音がした。
もともと雨で殆ど人の気配がしなかった。なのに今、とても強く――
「俺にも紅茶を一杯頼む」
ヤンは固まった 。
「ロ、ロイ……!?」
「どうした?デートをすっぽかしたと怒っているのか?」
混乱したヤンは水筒ごとロイエンタールに差し出した。
ロイエンタールは香りを肺いっぱいに吸い込むと一口啜った。
「こいつは生き返るな。だがお前はずっと風に曝されてたんだろう?」
そう言うとロイエンタールはスプリングコートの片身頃をヤンに被せた。
まるで母鳥が雛鳥を守るように。
ヤンはその温もりにようやく我に返った。
現金なもので欲の出たヤンは雛鳥がそうするように更に深くその懐に顔を埋めた。

風が強く吹いた。
桜達は二羽の鳥を覆う巣のようにしだれかかった。

終わり

Re: 旧ログ掲載 管理@早坂 投稿日: 2018年03月24日 04:19:10 No.25
りほ 2016年04月04日(Mon) 23:46

夜桜花見デート~~~
ふぁわわわわ~

そのぎさん、ありがとうです!大好きです!めっちゃはっぴー!

ロイさん、夜桜の下にヤンさん放置したら、そのまま桜の鬼に桜の国につれていかれるかと思って慌てておっかけてきたんですよね!!
お仕事おつかれさまです!!
Re: 旧ログ掲載 管理@早坂 投稿日: 2018年03月24日 04:19:53 No.26
そのぎ 2016年04月09日(Sat) 12:49

こんにちは早坂様、りほ様。

ひょっとして以前似た物を投下してしまったのではと気掛かりだったのですが、喜んでいただけたなら幸いですv
先日大風で桜が散ってしまいましたので、ロイエンタールも無理した甲斐があったんですねvv


旧ログ掲載 管理@早坂 投稿日: 2018年03月24日 04:16:51 No.23 【返信】

20160314ホワイトデーの朝におはようございます そのぎ 2016年03月14日(Mon) 06:57

【どうぞごゆっくりお過ごし下さい】


ユリアンのカフェはいつも癒しを求める女性客でいっぱい。
特に今日はホワイトデーなので『思い付きで奢るサービス』に勤しんでいた。

あるテーブルには腐女子(常連客)や同人作家(やっぱり常連客)の集まりが。
ホワイトデーのSSをどうしようかと鳩首を集めていた。
「ヤンが皇帝にお初を奪われロイエンタールがタイムマシンで先にお初を、と言うのは?」
……かなり煮詰まってるなと感じたユリアンは、早速『薬効スパイスたっぷりのチャイラテ』を彼女達に処方した――
「大学に入ったヤンが孤独なロイエンタールと出逢い、大学生活を共にしていく中で愛を育んでいく、何てのは?」
いい流れになったようだとユリアンはひと安心した。

予約テーブルに座ったイベントで戦い抜いた早坂様に『ローゼンリッターのウィンナーコーヒー』を、りほ様に『イゼルローン要塞奪還ティー』を運んだ時の事。
「ええっ!銀河英雄伝説ファンのバー『海鷲』が食べログに載ってたんですか !?僕、知らなかった……」

奥の個室には珍しく二名の男性客が。
俳優のナイトハルト・フォン・ロイエンタールとヤン・パイロンである。
ちなみに女性客が来ないのは自分達の世界に浸っている為。
「で、この海外映画の役どころが掴めないんだけど。ナイトハルトはどう思う?」
「うーん、吹替え自体がお互い初めてだから今一つ役に乗れないなあ」
頭を抱える二人にユリアンは、『リフレッシュをもたらすシナモンマーマレードコーヒー』を用意した――
やがて二人は台詞合わせを始めた。
ロイ「誰もいない教室で逢瀬も悪くないな。おっと逃げないでくれよ?」
ヤン「は、離してくれ!そ、そこは駄目……!」
ロイ「嫌だ。少し静かにしてもらうぞ」
ヤン「んっ、あっ……黒板が痛い……」
ロイ「じゃあ教壇の上だな?さあ、いい声を聞かせてもらうぞ?」
ヤン「はあ……あ、熱い……よ……」
ついつい聞き入ってしまったユリアンは、芝居と分かっていても赤らめずにはいられなかった。

最後にはSSの仕上がった腐女子&同人作家ズ、次のイベントへの鋭気を養った早坂様&りほ様、役の仕上がった二俳優に『ココナツホワイトチョコケーキ』を
振る舞ったのだった。

終わり


旧ログ掲載 管理@早坂 投稿日: 2018年03月24日 04:16:06 No.22 【返信】

20160303桃の節句にこんばんは そのぎ 2016年03月03日(Thu) 02:22

【春雨の日の出来事】


雨の降りしきる真夜中過ぎ。
ロイエンタールとヤンは黙々と書類とにらめっこしていた。
実はロイエンタールはヤンの分を手伝っていたに過ぎないのだが。
とは言え睡魔には勝てぬとロイエンタールは添え付けのエスプレッソマシーンへ向かったが、すぐに舌打ちした。
『故障中』の張り紙に。
こんな時間に部下を呼ぶのもどうかと思ったロイエンタールはコンビニに出掛けた。

「ほらヤン」
「何これ?」
渡されたのは五百mlのピーチフレーバーティーと『手袋』
「エスプレッソ缶六本で貰える景品だ。お前は無くし屋さんだからな」
その後、飲み物の甲斐あってか夜明け頃には終らせる事が出来た。
ささやかな打ち上げにと二人で雨上がりの街へ出た。
ふとヤンはポケットをまさぐり始めた。
「あ、あれっ?」
「どうした?」
「手袋が無い!探して来る!」
「お、おいおい……」
しばらくして何かをつまんで戻って来た。
「水溜まりに落ちてた……」
そんなヤンの手は痛々しい程に白く見えた。
思わずロイエンタールは手袋を街路樹に掛けさせると、ヤンの手をさすり始めた。
「バカだな、たかが景品ではないか」
「だって……」
やがてヤンの手は桃色に変わり始めた。
「手袋くらいもっといいのを買ってやるぞ?」
「でも……」
「何だ?」
「君から貰った物は……何一つ粗末にしたくなかったんだ」
ヤンの顔は手よりももっと濃い桃色になっていた。

おわり


旧ログ掲載 管理@早坂 投稿日: 2018年03月24日 04:15:05 No.21 【返信】

20160214バレンタインにこんばんは そのぎ 2016年02月14日(Sun) 00:18

ハッピープアライフシリーズ

【しろたへの】


貧しいながらも仲睦まじく暮らすヤンとロイエンタール。
しかし家計の苦しい二人には祝日もバレンタインデーもあったものでは無かった。
今日も早朝から二人は工事現場の警備アルバイトの為、降りしきる雪の中を黙々と歩いて行った。
だがその途中、暴風雪警報の為に中止との連絡が。
仕方無く二人は白い溜め息をつきながら足元をしっかり踏みしめつつ帰宅した。
と、そこに思わぬプレゼントが待っていた。
隣人からのたくさんのジャガイモのおすそ分けだった。

たちまち二人の灰色の時間は輝くバレンタインパーティ計画に切り替わった。
まず家にあるものをチェック。
小麦粉、油、ケチャップ、塩コショウ、少しのジャム……
それから二人は作業に掛かった。
ジャガイモを細い千切りにし、塩コショウと小麦粉を加え混ぜた。
熱したフライパンに油を多目に入れ、ジャガイモを丸く敷き詰め両面をカリッと焼き上げた。
いくつか作ったが最後に二つだけハート型にしておいた。
こうして素敵なポテトパンケーキが皿に盛り上げられた。
香ばしいかおりが漂う中、二人はあえてホットココアで乾杯した。
二人は丸いパンケーキにケチャップを、ハート型にはジャムを塗って味わった。
部屋の中は抑えた暖房だったが、二人は充分に暖まっていった。
ニュースでは雪で難儀し慌てる人々が映し出され、雪が吹き荒れていた。窓の外の車も人も二、三くらいしか数えられなかった。
やがて満腹になった二人は雑談に興じた。
ヤンは今読んでいる万葉集の本を手に取り、気に入っている歌を見せた。

〈第十四巻3410〉
伊香保ろの沿(そ)ひの榛原(はりはら)ねもころに奥をなかねそまさかしよかば
《意味:いかほの山の山岸にあると言う榛の林がずっと続いている様に、私達の未来もあまり考えなくていいよ。今が良ければそれでいいじゃないか》

するとロイエンタールはその隣の歌がいいと指した。
ただし『雲』の部分を『雪』に変えて。

〈第十四巻3409〉
伊香保(いかほ)ろに天雲(あまぐも)い継(づ)ぎかぬまづく人とおたはふいざ寝しめとら
《意味:いかほの山に入道雲が次々にわいて雷が鳴り、人々が騒いで気を取られている。そう言う時だから――さあ寝よう》

ヤンは呆れつつも本をたたみ、カーテンを閉めたのだった。

おわり


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