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「助けを求める」という強さがあれば・・ 《大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」での集団感染》 ( No.829 )
日時: 2020年02月20日 21:45
名前: はっちん [ 返信 ]
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↑(岩田健太郎氏提供/YouTubeより)2020年2月19日公開

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「助けを求める」という強さが(〇〇等に)あったならば、今回の事態は変わっていたかも知れません。
「助けを求められる」ということは、「自分の弱さを認められるほど強い」ということです。
人間とは本来弱いものであり、「弱い自分を決して受け入れられない」のは、大人の態度であるとはいえません。
プライドと命、一体どちらが大切なのでしょうか。(〇〇等には)「プライド」し・か・ないのが、この国の最も恐ろしいところです
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 新型コロナウイルスの集団感染が起きているクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船した、神戸大学教授の岩田健太郎医師が、船内の感染症対策のずさんさを告発する動画「ダイヤモンド・プリンセスはCOVID-19製造機。なぜ船に入って一日で追い出されたのか。」と題する動画をYouTubeに投稿しました。(2020/02/19夜投稿 ⇒ 2020/02/20早朝削除済み。)

告発動画の全文は下記の通りです。

 岩田健太郎です。神戸大学病院感染症内科教授をしていますけれど、いまからお話しする内容は神戸大学など所属する機関とは一切関係なく、私個人の見解です。あらかじめ申し上げておきます。
 きょう2月18日に「ダイヤモンド・プリンセス」に入ったんですけども、1日で追い出されてしまいました。なぜそういうことが起きたのかについて、簡単にお話ししようと思います。
 もともとダイヤモンド・プリンセスはすごくCOVID-19の感染症がどんどん増えているというとで、感染対策がうまくいっていないんじゃないかという懸念がありました。
 (日本)環境感染学会が入り、FETP(実地疫学専門家養成コース:Field Epidemiology Training Program)が入ったんですけど、あっという間に出ていってしまって。中がどうなっているか、よくわからないという状態でした。
 で、中の方からいくつかメッセージをいただいて、「すごく怖い」と。「感染が広がっていくんじゃないか」ということで、私に助けを求めてきたので、いろんな筋を通じて何とか入れないかという風に打診してたんですね。
 そうしたら昨日、2月17日に、厚労省で働いている某氏から電話があって、「入ってもいいよ」と。で、やり方を考えましょう、ということでした。
 最初は環境感染学会の人として入るという話だったんですけども、環境感染学会はもう中に人を入れないという決まりをつくったので「岩田一人を例外にできない」ということでお断りをされて。
 結局、DMAT(厚生労働省の災害派遣医療チーム:Disaster Medical Assistance Team)ですね。「災害対策のDMATのメンバーとして入ったらどうか」というご提案を厚労省の方からいただいたので、わかりましたと。

奇妙な電話

 18日の朝に新神戸から新横浜に向かったわけです。そうしたら、途中で電話がかかってきて、「誰とは言えないけども、非常に反対している人がいる。入ってもらったら困る」ということで。
 DMATのメンバーとして入るという話は立ち消えになりそうになりました。すごく困ったんですけど。「何とか方法を考える」ということで、しばらく新横浜で待っていたら、また電話がかかってきて。
 DMATの職員の下で、感染対策の専門家ではなくて、DMATの一員としてDMATの仕事をただやるだけなら入れてあげるという、非常に奇妙な電話をいただきました。
 なぜそういう結論が出たのかわからないですけど、「とにかく言うことを聞いてDMATの中で仕事をしていて、だんだん顔が割れてきたら感染のこともできるかもしれないから、それでやってもらえないか」という非常に奇妙な依頼を受けたんですけど。
 ほかに入る方法がないものですから、わかりましたと言って現場に行きました。そしてダイヤモンド・プリンセスに入ったわけです。
 入ってご挨拶をして、最初は「この人の下につけ」と言われた方にずっと従っているのかな?と思ったら、DMATのチーフのドクターとお話をして、そうすると「お前にDMATは何も期待してない。どうせ専門じゃないし」ということで。
 「お前は感染の仕事だろう。だったら感染の仕事をやるべきだ」ということで助言をいただきました。DMATの現場のトップの方ですね。
 あ、そうなんですかと。私はとにかく言うことを聞くと約束してましたので。「感染のことをやれ」と言われた以上はやりましょう、ということで。現場の案内をしていきながら、いろんな問題点を確認していったわけです。

エボラもSARSも怖くなかったが…

 それはもう、酷いものでした。この仕事20年以上やってきてですね。アフリカのエボラとか、中国のSARSとか、いろんな感染症と立ち向かってきました。
 もちろん身の危険を感じることは多々あったわけですけど、自分が感染症にかかる恐怖っていうのは、そんなに感じたことがないです。
 どうしてかっていうと、僕はプロなので。自分がエボラにかからない方法、SARSにかからない方法は知ってるわけです。あるいは他の人をエボラにしない、SARSにしない方法とか。
 施設の中でどういう風にすれば、感染がさらに広がらないかっていうことを熟知しているからです。それがわかっているから、ど真ん中にいても怖くない。
 アフリカにいても、中国にいても怖くなかったわけですが、ダイヤモンド・プリンセスの中はものすごい悲惨な状態で、心の底から怖いと思いました。これはもう、COVID-19に感染してもしょうがないんじゃないかと、本気で思いました。

レッドとグリーンがぐちゃぐちゃ

 レッドゾーンとグリーンゾーンっていうんですけど。ウイルスがまったくない安全なゾーンと、ウイルスがいるかもしれない危ないゾーンをキチッと分けて。
 レッドゾーンではPPEという防護服をつけ、グリーンゾーンでは何もしなくていいと。こういう風にキチッと区別することによって、ウイルスから身を守るのが我々の世界の鉄則なんです。
 ところが、ダイヤモンド・プリンセスの中はですね、グリーンもレッドもぐちゃぐちゃになっていて、どこが危なくて、どこが危なくないのか、まったく区別がつかない。
 どこにウイルスが…ウイルスって目に見えないですから、完全な区分けをすることで、初めて自分の身を守るんですけど。もう、どこの手すり、どこのじゅうたん、どこにウイルスがいるのか、さっぱりわからない状態で。
 いろんな人がアドホックにPPEをつけてみたり、手袋をはめてみたり、マスクをつけてみたり、つけなかったりするわけです。
 クルーの方もN95(高性能マスク)をつけてみたり、つけなかったり。熱のある方が自分の部屋から歩いて医務室に行ったりするということが、通常で行われているということです。

「御法度」がまかり通る

 私が聞いた限りでは、DMATの職員、それから厚労省の方、検疫官の方がPCR陽性になったという話は聞いてたんですけど、それは「むべなるかな」と思いました。
 中の方に聞いたら、「我々、自分たちも感染すると思ってますよ」と言われて、ビックリしたわけです。
 どうしてかというと、我々がこういう感染症のミッションに出る時は、必ず自分たち医療従事者の身を守るっていうのが大前提で。
 自分たちの感染のリスクをほったらかしにして、患者さんとか一般の方々に立ち向かうっていうのはご法度。ルール違反なわけです。
 環境感染学会やFETPが入って数日で出て行ったっていう話を聞いた時に、どうしてだろう?と思ったんですけど、中の方は「自分たちが感染するの怖かったんじゃない」とおっしゃっていた人もいたんですが。
 その気持ちはよくわかります。なぜならば感染症のプロだったら、あんな環境にいたら、ものすごく怖くてしょうがないからです。僕も怖かったです。
 いま某、ちょっと言えない部屋にいますけど、自分自身も隔離して、診療も休んで、家族とも会わずに…。でないとヤバイんじゃないかと、個人的にはすごく思っています。

聞く耳を持たない官僚

 いま私がCOVIDウイルスの感染を起こしても、まったく不思議はない。どんなにPPEとか手袋があっても、安全なところと安全じゃないところをちゃんと区別できていないと、そんなものは何の役にも立たないんですね。
 レッドゾーンでだけPPEをキチッとつけて、それを安全に脱ぐということを遵守して初めて、自らの安全が守れる。自らの安全が保障できない時に、を守れないときに、他の方の安全なんか守れない。
 きょうは藤田医科大学に人を送ったり、搬送したりするので皆さんすごく忙しくしてたんですけど。検疫所の方と一緒に歩いてて、ひゅっと患者さんとすれ違ったりする。
 「ああ、いま患者さんとすれ違っちゃう」と笑顔で検疫所の職員が言ってるわけですね。我々的には超非常識なことを、平気で皆さんやってて。みんな、それについて何も思ってないと。
 聞いたら、そもそも常駐しているプロの感染対策の専門家が一人もいない。時々いらっしゃる方はいるんですけど。彼らもヤバイなとは思っているんだけど、進言できないし、進言しても聞いてもらえない。
 やっているのは厚労省の官僚たちで、私も厚労省のトップの人と話をしましたけれども、ものすごく嫌な顔をされて聞く耳を持つ気がない。
 「何でお前がこんなところにいるんだ」「何でお前がそんなことを言うんだ」みたいな感じで、知らん顔すると。非常に冷たい態度をとられました。

「岩田にムカついた人がいる」

 DMATの方にも「夕方のカンファレンスで提言を申し上げてもよろしいですか」と聞いて、「いいですよ」という話はしてたんですけど。
 突如として夕方5時ぐらいに電話がかかってきて、「お前は出ていきなさい。検疫の許可は与えない」と。臨時の検疫官として入ってたんですけど、その許可を取り消すということで、資格を取られて検疫所の方に連れられて。
 当初電話をくれた厚労省にいる人に会って、「何でDMATの下でDMATの仕事をしなかったんだ。感染管理の仕事はするなと言ったじゃないか」と言われました。
 「DMATの方に、そもそも感染管理してくれと言われたんですよ」という話をしたんですけど、「とにかく岩田に対してすごくムカついた人がいる。誰とは言えないけどムカついた。お前はもう出ていくしかないんだ」という話をしました。
 「でも、僕がいなくなったら、今度は感染対策をするプロが一人もいなくなっちゃいますよ。構わないんですか?」と聞いたんですけど。
 このままだと、もっと何百人という感染者が出て、DMATの方も…DMATの方を責める気はさらさらなくて。あの方々は、まったく感染のプロではないですから。
 どうも環境感染学会の方が入った時に色々言われて、DMATの方は感染のプロたちにすごく嫌な思いをしたらしいんですね。それは申し訳ないなと思うんですけども。

アフリカや中国より全然酷い

 別に彼らが悪いとは全然思わない。専門領域が違いますから。しかしながら、彼らがリスクの状態にいるわけです。自分たちが感染する。
 それを防ぐこともできるわけです。方法はちゃんとありますから。ところがその方法さえ知らされずに、自分たちをリスク下に置いていると。そしてそのチャンスを奪い取ってしまう、という状態です。
 彼らは医療従事者ですから、帰ると自分たちの病院で仕事をするわけで。今度はそこから院内感染が広がってしまいかねない。
 もうこれは大変なことで、アフリカや中国なんかに比べても全然酷い感染対策をしているし、シエラレオネなんかの方がよっぽどマシでした。
 日本にCDC(疾病管理予防センター)がないとは言え、まさかここまで酷いとは思っていなくて。
 もうちょっと専門家が入って、専門家が責任をとって、リーダーシップをとって、ちゃんと感染対策についてのルールを決めてやっているのだろうと思ったんですけど。まったくそんなことはないわけです。
 もう、とんでもないことなわけです。これ拙い英語で収録させていただきましたけれども、とにかく多くの方にダイヤモンド・プリンセスで起きていることをちゃんと知っていただきたいと思います。
 できるならば学術界とか国際的な団体が、日本に変わるように促していただきたいと思います。

SARSの時の方が「はるかに楽」

 考えてみると、2003年のSARSの時に、僕も北京にいてすごく大変だったんですけど。特に大変だったのが、中国が情報公開を十分してくれなかったっていうのが、すごくつらくて。何が起きているのかよくわからないと。
 北京にいて本当に怖かったです。でも、その時ですらもうちょっとキチッと情報は入ってきたし、少なくとも対策の仕方は明確で。
 SARS死亡率10%で怖かったですけれども、今回のCOVID、少なくともダイヤモンド・プリンセスの中のカオスの状態よりははるかに楽でした。
 思い出していただきたいので、COVIDが中国・武漢で流行り出した時に、警鐘を鳴らしたドクターがソーシャルネットワークを使って、これはヤバイということを勇気を持って言ったわけです。
 昔の中国だったら、ああいうメッセージが外に出るのは絶対許さなかったはずですけど。中国は今、BBCのニュースなんかを聞くと、オープンネスとトランスペアレンスをすごく大事にしているとアピールしています。
 それがどこまで正しいのか僕は知りませんけど、少なくとも透明性があること、情報公開をちゃんとやることが国際的な信用を勝ち得る上で大事なんだということは理解しているらしい。
 中国は世界の大国になろうとしていますから、そこをしっかりやろうとしている。ところが、日本はダイヤモンド・プリンセスの中で起きていること全然、情報を出していない。

院内感染が拡大するリスク

 院内感染が起きているかどうかは、発熱のオンセットを記録してカーブをつくっていく統計手法、エピカーブというのがあるんですけど。そのデータを全然とってないということを、きょう教えてもらいました。
 PCRの検査をした日をカウントしても、感染の状態はわからないわけです(※)。
 このことも厚労省の方に何日も前に申し上げていたんですけど。全然されていないと。
 要は院内感染がどんどん起きていても、それにまったく気づかなければ、対応すらできない。専門家もいない。ぐちゃぐちゃな状態になったままにいるわけです。
 このことを日本の皆さん、世界の皆さんが知らないままになっていて。特に外国の皆さんなんかは、悪いマネジメントでずっとクルーズの中で感染のリスクに耐えなければいけなかったということですね。

失敗の隠蔽はもっと恥ずかしい

 これは日本の失敗なわけですけど、これを隠すともっと失敗なわけです。確かにまずい対応であることがバレるのは恥ずかしいことかもしれないですけど、これを隠蔽するともっと恥ずかしいわけです。
 やはり、情報公開は大事なんですね。誰も情報公開しない以上は、ここでやるしかないわけです。
 ぜひこの悲惨な現実を知っていただきたいということと、ダイヤモンド・プリンセスの中の方々、それから、DMATやDPAT(災害派遣精神医療チーム:Disaster Psychiatric Assistance Team)や厚労省の方、あるいは検疫所の方が、もっとちゃんとプロフェッショナルなプロテクションを受けて、安全に仕事ができるように。彼ら、本当にお気の毒でした。
 ということで、まったく役に立てなくて非常に申し訳ないなという思いと、この大きな問題意識を皆さんと共有したくて、この動画をあげさせていただきました。
岩田健太郎でした。
 
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(※)既に下船は始まっており、大勢の人が市中へと・・・。


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Re: 「助けを求める」という強さがあれば・・ 《大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」での集団感染》 ( No.832 )
日時: 2020年02月22日 13:03
名前: はっちん [ 返信 ]
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【元記事:https://digital.asahi.com/articles/ASN2Q33TGN2PUHBI05Y.html?pn=3

感染拡大の阻止「チャンス減っている」 WHOが危機感

2020年2月22日 9時35分


 新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長は21日の記者会見で、中国への渡航歴がなかったり、感染者との接触がなかったりするのに感染する例が出ていることに懸念を示した。「感染拡大の阻止はまだ可能な段階だが、チャンスは減ってきている」と危機感を示し、各国に対策の徹底を呼びかけた。
 テドロス氏は、2日間で18人の感染と4人の死亡が報告されたイランの状況に言及。WHOはウイルスの検査キットを同国に送っており、今後も必要なサポートをしていく、とした。
 また、これまで中国の北京や四川省、広東省で活動してきたWHO主導の専門家チームが22日、患者が集中する武漢市入りすることも明らかにした。感染の現状や医療態勢などを確認するとみられる。

 大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号で感染が広がったことについては検証の重要性を強調した。WHOで緊急対策を担当するジャウアド・マジュール氏は「通常、(検証は)その出来事が起きた国が主導するもので、日本の当局にも検証を一緒にやることを提案する。何がうまくいき、何がうまくいかなかったかを確認し、その国の改善の教訓とするだけでなく、WHOの指導の向上や、船を扱う他の機関にも示唆を与えるものにすることが目的だ」と語った。(ジュネーブ=下司佳代子)


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◇歴史に残る汚点になるのは確実です。


Re: 「助けを求める」という強さがあれば・・ 《大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」での集団感染》 ( No.916 )
日時: 2020年03月29日 22:54
名前: はっちん [ 返信 ]
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【元記事:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200329-00036902-bunshun-soci&p=1


コロナ・パニック「それでも私が告発をやめない理由」――岩田健太郎医師インタビュー
2020/3/29(日) 11:00配信 文春オンライン



「すごい悲惨な状態で、心の底から怖いと思いました」

 神戸大学医学研究科感染症内科教授の岩田健太郎医師が、新型コロナウイルスの感染者が続出する「ダイヤモンド・プリンセス号」の内部に入り、その惨状をYouTube動画で「(船内は)ウイルス培養器」と暴露したのは2月18日のこと。世間からは「勇気ある行動」と賞賛の声が挙がる一方で、「恐怖を煽った」との批判も少なくなかった。

 あれから1カ月半、世界中で人々の生活は一変した。ヨーロッパ各国は相次いで「外出禁止令」を出し、日本でも3月28日、29日の週末は東京都と隣接4県で外出の自粛が求められた。

 しかし、3月28日には国内で1日に確認された感染者の数が、初めて200人超え。国内で確認された感染者の数は、空港の検疫で見つかった人やチャーター機で帰国した人なども含めて計2436人、死亡者は計65人となった。そのうちクルーズ船の乗客・乗員の感染者は712人、死亡者は10名にのぼる(3月28日時点)。

 3月4日、下船後の「自主隔離」を終えた岩田医師と、『週刊文春WOMAN』 はメディアで初めて対面した。『週刊文春WOMAN』2020春号に掲載した岩田医師のインタビューを、緊急転載する。

◆ ◆ ◆

「誰かを非難した」誤解を与えたことは、申し訳なかった

――クルーズ船の感染対策の何が問題だったのでしょうか。

 まず、ウイルスは目に見えないので、ウイルスがいる危険な感染区域と全くいない安全区域、いわゆる「レッドゾーン」と「グリーンゾーン」の分離が感染対策の鉄則です。船内でそれができていないのは一目瞭然でした。ウイルスが付着しているかもしれない防護服を着た人がグリーンゾーンに入ったり、検疫所の人が患者とすれ違って、「今、すれ違っちゃいましたね」と苦笑いしている場面にも遭遇しました。

 私は20年以上、感染症の研究をしてきて、アフリカのエボラ出血熱や、03年の中国のSARSなど、感染症の対策現場に立ち会ってきました。それでも、今回ほど身の危険を感じたことはなかった。

――批判が集まるとたちまち動画を削除したことから、先生の告発を信用できないという声もあります。

 私は船内から助けを求める連絡を受け、関係筋を伝って災害派遣医療チーム(DMAT)に同行するかたちで、中に入りました。その後、「誰か」の指示が出たため、2時間ほどで「出ていきなさい」と締め出されましたが。それでも「むちゃくちゃな状態」であることは明らかで、少しでも悲惨な現実を知ってもらいたくて動画をアップしました。再生回数は100万回を超えましたが、後に「船内の環境が改善した」との情報を得て、2日後に削除しました。結果的に誰かを非難しているかのような誤解を与える面もあり、その点は申し訳なかったと思っています。


官僚が意思決定をしたのが誤り

――動画では「感染症対策の専門家が一人もいない」と言っていましたが、その後、厚労省や、同じく船内に入っていた沖縄県立中部病院の高山義浩医師が「岩田先生をご存じない方々には、(動画は)ちょっと刺激が強すぎた」として反論。その中で「専門家はいた」と主張しています。

 あれはin charge (統括している)という私が動画で言った言葉が外され、微妙に議論がずらされてしまったがゆえの問題です。確かに、船内には国立感染症研究所の疫学チームや日本環境感染学会の災害時感染制御支援チームなどが入っていました。しかし、それは「専門家がいる」という数を合わせていたという程度で、実質的な感染防御機能の向上に寄与していないに等しかった。派遣されたDMATも、災害現場での外傷や熱傷の治療が専門です。もちろん、DMATに専門外の感染対策能力を求めているわけではありません。役割が違うということです。

 最大の問題は、指揮権が厚生労働省にあったことです。船内の隔離はどうするか、ゾーニングはどうするか、防護服は誰が着て、どう脱ぐのか、こうしたことを決めるのは官僚の仕事ではありません。彼らは感染対策については素人で、今回のように医学的な意思決定など絶対にしてはいけないはずなんです。

――専門家不在で政治主導で決まる、日本の医療行政に警鐘を鳴らしてきました。

 例えば、私たちが食品や医療を語るとき、「安全・安心」という言葉をよく耳にします。安全とは、科学的に検証されたデータに裏付けられたものですが、なぜか、日本人は加えて感情的な保障としての「安心」を求める。マスクについても、米国CDC(疾病予防管理センター)やWHOがあれだけ予防効果がないと発信しても、「安心」だからと多くの人が買い占めに走っています。

 今回のクルーズ船でも、政治主導のもと「安心」を求める傾向が顕著で、ネガティブな指摘は絶対にしてほしくないという空気が現場に漂っていました。現に私が、船内で厚労省の幹部に具体的な対策を進言しても、「何でお前がそんなこと言うんだ」と冷たい態度を取られました。

 菅官房長官が2月18日の会見で「全て終わった後に検証して(略)次につなげていきたい」と語りましたが、終息して半年もすれば、「やるだけのことをやって、もう終わったんだからいいじゃないか」となるのが日本の国民性です。

――政治主導と言えば、安倍首相が全国の小中高に3月2日から春休みまで臨時休校を要請し、今は一斉休校の真っただ中です。

 感染者を「一日でどれだけ減らすか」といった目標設定もなく、専門家の意見も聞かずに場当たり的に発表されたので、今後この判断が妥当だったか検証する必要があります。個人的には子供ではなく、重症化しやすい高齢者の外出を自粛すべきではないかと思っています。


日本の対応は中国より遅れている

――PCR検査が保険適用になりました。

 無症状であっても全例PCR検査すべきという議論が巻き起こっています。

 しかし、現状では一般の検査機関での準備が整っておらず、優先すべきは重症者への検査です。検査の精度も万能ではなく、結果に対する誤った解釈で感染者数を増やしてしまうリスクも考えると、全例への適応は検査の無駄遣いです。

 ただ、必要な検査ができないのも問題なので、検査キャパの拡大自体には反対していません。

――岩田先生は情報提供のあり方について、日本の遅れを指摘されていますね。

 米国のCDCは新たな感染症が発生すれば、安全策を講じるうえで必要な情報提供をします。中国でも、SARSの際に実態把握に苦労した教訓を生かし、中国版CDCが今回の新型コロナウイルスでは、いち早くウイルスの遺伝子型を特定し、感染状況を世界に発信しています。

 それに比べて、日本は09年に発生した新型インフルエンザの封じ込めに苦心したにもかかわらず、これを教訓とせず、日本版CDCを作らなかった。感染症の専門家の養成もしてこなかった。こうした“専門家軽視”の姿勢が今回のクルーズ船の惨事に繋がったと考えます。

――今後、私たちは新型コロナウイルスとどう向き合えばよいのでしょうか。

 国立感染症研究所は、クルーズ船内の感染流行の度合いを示す「エピカーブ」を2月19日に発表しています。一見すると多くの患者が隔離前から感染しており、二次感染者はごくわずか。隔離政策が成功したかのように理解できる結果になっています。しかし、データは不完全なもので、発症者不明のデータも現時点で多くあります。このデータの不備も動画で指摘しましたが、「データはあるのにないと勘違いしている」と的はずれな批判もされました。「データがある」と「データが完全にある」は同義ではないのですが。

 ご存知のように下船後の発症者は国内だけではなく、オーストラリア、米国、香港などで発見されており、まだ予断を許さない状況です。

 今はいかに封じ込めるかが大事で、手指消毒や閉鎖空間でのイベントを避けるなど、個人で、できることをすること。中国で封じ込めできつつあるのだから、我々にも希望はまだあるとは思います。


取材・構成:内田朋子

岩田健太郎(いわたけんたろう)

1971年島根県生まれ。島根医科大学(現・島根大学)卒業。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院を経て、2008年より神戸大学。神戸大学都市安全研究センター医療リスクマネジメント分野および医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学病院感染症内科診療科長。

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世界中が注目していました。総理肝煎りインバウンドへの悪影響は必至かと。
 
 
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