感情喪失時代 現代は、「不安の時代」だと云はれる。-略- 感情といふ語の内容も色々であらうが、「独り居て怡しむ」底の感情、対人的に発露するに非ざる、そこはかとなき欣怡の情である。之の欠乏する限り、対人せる場合に現はれる感情も、飢えた獣の感情に似る他はないのではあるまいか。 又、之の欠乏する限り、判断といふものもひどく相対的にしか行はれないのではあるまいか。 それはさて、人が皆その幼時に、欣怡の情を有することは確かである。ではそれは何時如何様にして喪失されていつたのであらうか。答へは簡単だ、野望のせゐだ。事そのもの、物そのものを、知る間もあらせずその事その物の利用を思つた心のせゐだ。 とまれ感情なくしては、現代が不安の時代であるとしてからが、その不安さへも不安と感じられないであらうやうなものではないか。-略- では、どうしたらよいのであらうか・・・<下記サイトの原文をお読みください。> 感情喪失時代 中原中也 <青空文庫 https://www.aozora.gr.jp/cards/000026/files/55730_57397.html> |