◇ 2007年 7月 6日、最高裁は欠陥マンションに対して、新しい基準を示しました。 ● 裁判内容 大分県に建つマンションを、新築間も無く棟ごと買い取った親子が訴訟をおこしました。買い取ったマンションは雨漏り、バルコニー手摺のぐらつき、共用部やバルコニーに無数のクラックがある欠陥マンションだったのです。 ・ 一審 (大分地方裁判所) は、設計者と施工者に瑕疵担保責任があると判断。<控訴> ・ 二審 (福岡高等裁判所) は、直接の契約関係にない購入者に対して設計者と施工者は瑕疵担保責任を負わないとし、又、建物の瑕疵は構造耐力上の安全性を脅かすほどのものではなく違法性は強くないとして、設計者と施工者の不法行為責任も否定。<上告> ・ 最高裁は、二審判決を破棄し、福岡高裁に差し戻した。 ■ 今回の基準 1) 建物は、直接の契約関係にない建物利用者や隣人、通行人等の生命、身体または財産を危険にさらすことがないような安全性を備える。 2) 違法性の強さには関係なく、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵がある場合は 「不法行為責任」 が成立する。 3) 建物の完成・引き渡しから 20年以内に瑕疵の存在を知り、それから 3年以内であれば責任追及や損害賠償請求ができる。 * 今までの基準 1. 建物は居住者の安全を考慮する。 2. 瑕疵を生じさせた建築関係者を追及して損害賠償を請求するためには、直接の契約当事者でなければ追及できませんし、「不法行為責任」 としての責任を追及する側は相手方の過失について立証しなければなりません。 3. 2000年に成立した建築物品質確保促進法では、瑕疵担保責任を追及できる期間は 「建物の主要構造部と雨漏り」 について 10年、それ以外は 2年としています。 ● つまり、共用部分の瑕疵についても全区分所有者、居住者が不法行為責任の追及が出来るようになります。 ● さらに、築 20年までは、分譲会社や設計者、建設会社に対しても瑕疵を理由に損害賠償請求ができるようになります。 しかもその瑕疵の範囲は 「基礎や主要構造部」 に限らない事になります。 ● 「建物の基本的な安全性」 は 「建物の基礎や建物躯体に瑕疵がある場合に限られない」 という今回の判決文は、利用者の生命を危険にさらすのであれば、バルコニーのぐらつく手すりであっても 「基本的な安全性」 を満たさない瑕疵であり、その瑕疵を生じさせた関係者を不法行為責任で追及できると言っています。 ■ 建物の欠陥には『瑕疵担保責任』とは別の法的責任として『不法行為責任』があります。『期間制限』の点で,瑕疵担保責任とは大きく違います。 <不法行為責任x時効(期間制限)> 起算点 期間 法的性質 ・不法行為の時点 20年 除斥期間 ・被害者が『被害+加害者』を知った時 3年 消滅時効 (民法724条) 『請求の相手方』という点でも『不法行為責任』は『瑕疵担保責任』より有利です。 <建物の建築・設計・施工監督者 ⇒ 『不法行為責任』> あ)義務を負う者 建物の建築に携わる設計者・施工者・工事監理者 い)賠償請求をできる者 建築請負などの契約関係にない者を含む 例;居住者を含む建物利用者・隣人・通行人など (最高裁2007年7月6日) ※ 元々『不法行為』は契約関係を前提としない責任です。 【関連記事】 ・これが実態! <DH工業のマンション 工事編> ( No.171 ):http://rara.jp/royal_chateau_nagaizumi/page171 |