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『新・日本の階級社会』橋本健二(現代新書18/1)
愉しい本棚 投稿日:2018年06月16日 20:07 No.118
▶日本はもはや「格差社会」ではない、「階級社会」である、という現実

日本社会の格差はますます広がり、固定化され、〈階級社会〉と呼ぶべき様相を呈している。著者は最新の学術的データを用い、そんな現代の格差の輪郭を明瞭に描き出す。

「著者は以前から著作で、日本が階級社会への道を歩んでいることを指摘してきました。ここに来てそれがより多数の読者に手に取られるようになったのは、事態が悪化し、目を背けていた現実に向かいあわざるを得ない状況が生まれたからではないでしょうか」(担当編集者)

格差拡大が放置され続けたことで、膨大な貧困層が形成された。中間層も厳しい状況に追いやられている。わずかな躓(つまず)きで転落し、ひとたび貧困に陥ると、階級を上昇することは極めて難しい。本書は厳しい現実を冷静に指し示している。

「自己責任論に肯定的な、ある種エリートと呼ばれる立場にある方も、ご自身は中間層に留まることができても、お子さんまでそうとは限りません。就職の失敗や、大きな病気や怪我などで、貧困層になりうる可能性は多々ある。そうした不安から本書を手に取る方も多いのかもしれません。本の中で1章分を割いている、女性たちからの反響も大きいですね。女性の階級は配偶者に左右されがちで、死別などをきっかけに困難な立場に置かれることが多い。『明日は我が身』のような不安が、今の日本社会全体に漂っているのではないでしょうか」(担当編集者)
評者:前田久
(週刊文春 2018年04月12日号掲載)
かつて日本には、「一億総中流」といわれた時代がありました。高度成長の恩恵で、日本は国民のほとんどが豊かな暮らしを送る格差の小さい社会だとみなされていました。しかし、それも今や昔。最新の社会調査によれば1980年前後、新自由主義の台頭とともに始まった格差拡大は、いまやどのような「神話」によっても糊塗できない厳然たる事実となり、ついにはその「負の遺産」は世代を超えて固定化し、日本社会は「階級社会」へ変貌を遂げたのです。
900万人を超える、非正規労働者から成る階級以下の階層(アンダークラス)が誕生。男性は人口の3割が貧困から家庭を持つことができず、またひとり親世帯(約9割が母子世帯)に限った貧困率は50・8%にも達しています。日本にはすでに、膨大な貧困層が形成されているのです。
人々はこうした格差の存在をはっきりと感じ、豊かな人々は豊かさを、貧しい人々は貧しさをそれぞれに自覚しながら日々を送っています。現在は「そこそこ上」の生活を享受できている中間層も、現在の地位を維持するのさえも難しく、その子供は「階層転落」の脅威に常にさらされている。この40年間の政府の無策により、現代日本は、金持ち以外には非常に生きるのが困難な、恐るべき社会になったのです。
官庁等の統計の他、さまざまな社会調査データ、なかでもSSM(「社会階層と社会移動全国調査」)調査データと、2016年首都圏調査データを中心にしたデータを基に、衝撃の現実が暴き出されてゆきます。