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うつりゆく時代 9 (AI)
  ―――――【2017年3月11日「人工知能AIとは何か?(1)」再掲】―――――
 すでに指摘したように、これからの時代の変化を予兆させる大きな要因の一つに人工知能 (AI ,Artificial Intelligence) があると思われます。それでは、AIとは何でしょうか。人工知能の歴史を調べ、人工知能の将来の可能性とその特徴、それに伴うリスクや世界の開発の状況等を概観してみたいと思います。

 (1)人工知能AIの定義
 先ず、人工知能AIとは何かという定義から入っていきます。現在、特に決まった定義はないようです。
 日本オペレーションズ・リサーチ学会は「人間や生物の知能を機械によって実現したもの、あるいはその研究分野」と定義し、人工知能学会は「強いAI」として「人間の知能そのものを持つ機械を作ろうとする立場」と「弱いAI」として「人間が知能を使ってすることを機械にさせようとする立場」の研究があり、「強いAI」の実用化はまだ実現していないが、現在の開発の対象は「弱いAI」である、としているそうです。
 河野・豊田氏は「実用性に即して表現すれば『人間による判断や認識の一部あるいは全部をコンピュータによって支援・実現するための情報処理に関する技術』となろう」(河野浩二・豊田健志「AI 70年の歴史」『人工知能 超入門』東洋経済新報社(2016年、12 頁)と言っています。(以下のAIの歴史の内容は、この文献に拠っています。)

 (2)人工知能AIの歴史
○ AIの黎明期 
 1947年 ロンドンでの数学学会で、アラン・チューリング(Alan M. Turing)によりAIの概念が提唱されました。
1956年 アメリカのダートマス大学での会議で、ジョン・マッカーシー(John McCarthy)により初めてAIという言葉が提案されました。

〇 第1次AIブーム 1950年代後半~1960年代
 脳神経系の構造を模したニューラルネットワークの応用などがありAIの応用可能性が研究され、AIブームが起こりました。しかし、1969年、マッカーシーやパトリック・ヘイズ(Patrick J. Hayes)により「フレーム問題」が指摘され、悲観論が広がりブームは終息して第1次冬の時代に入ります。(「フレーム問題」とは、有限の情報処理能力しかないAIには、現実に起こりうる問題のすべてに対応できるわけではないという問題で、現実世界の無限の事象をコンピュータがすべて考慮することは不可能だということになります。)この冬の時代の間にも研究は進み、1977年にはエドワード・ファイゲンバウム(Edward A. Feigenbaum) により「知識工学」の概念が提唱され、80年代のブームに火をつけました。

○ 第2次AIブーム 1980年代
 知識工学をベースにしたエキスパートシステムが商用化されました。(エキスパートシステムとは、特定問題についての専門家の知識を格納する知識ベースと推論を実行する推論エンジンにより構成され、専門家の意思決定を模倣することを目的としていました。)日本では1982年に通商産業省の主導による「第5世代コンピュータ」開発を目指す国家プロジェクトが始まりました。しかし、専門家からの膨大な知識の獲得や知識の定式化、ルールの矛盾などの問題があり、ブームは下火となり90年代以降の第2次冬の時代を迎えることになります。しかしこの間にも、ニューラルネットワークの研究は継続されて、コンピュータの性能が向上してこれがAIの能力向上に結び付きました。1997年には、アメリカのIBMが開発した「ディープ・ブルー」がチェスの世界チャンピオンに勝つまでになりました。また、インターネットの普及で膨大なデータを得ることもできるようになり、次のブームに結び付きました。

○ 第3次AIブーム 2000年代
 第3次ブームを加速した要因に、2006年にジェフェリー・ヒントン(Geoffrey E. Hinton)らが提案したディープラーニング(深層学習)の技術があります。
 ディープラーニングについて、河野・豊田氏は、「視覚・聴覚・味覚など人間の認知メカニズムは、階層化されたネットワーク構造を持ち、対象を認識し概念を形成するために必要な情報である特徴量を効率的に取り出していると考えられる。ディープラーニングでは、そのメカニズムをモデル化したスパースコーディングを用いて、コンピュータが自ら特徴量を抽出する。
 入力された情報は階層の深部へ伝達されるにつれ学習の深度が段階的に大きくなる。入力情報が画像なら点から線、線から輪郭、輪郭から部分、部分から全体イメージへと、より高次の概念になっていく。すなわちディープラーニングとは学習深度が階層化されたニューラルネットワークだ」(上掲書、14頁)と説明しています。
 2011年には、IBMの「ワトソン」がクイズ番組「ジョパディ!」で人間のクイズ王に勝ちました。
 2012年にはグーグルとスタンフォード大学の研究チームが「ネコ」の画像の認識に成功して「ネコ認識、Cat Identifier」と言われています。
 2016年にはグーグルの「アルファ碁」が囲碁の世界のトップ棋士を破りました。特に「アルファ碁」では、コンピュータ自身が勝ちにつながる手を考え出したことになり、人工知能の飛躍的発展を見ました。
 このようにして、コンピュータの計算能力の向上と「ビッグデータ、Big Data」の集積により深層学習の実力が発揮されだしました。
 さらにこのことは、人工知能を組み込まれたロボットが限りなく人間に近づこうとすることを意味します。2017年1月8日の『朝日新聞ブローグ』では、AIの応用として以下のような例を挙げていました。
  ソフトバンクのロボット「Pepper」は目の前の物体を見分けられる。
  日本マイクロソフトの会話プログラム「りんな」は雑談ができる。
  「グーグル翻訳」も精度が上がった。
  大阪大学の石黒浩教授の開発したアンドロイド「エリカ」は皮膚感も人間に近く、受け答えを聞いていると本当に心があるように思える。
  すでに一般の家庭に広がりつつある、シャープ製の携帯電話型ロボット「ロボホン」もある。
                 ―――――【2017年3月17日の記事 終】――――

 以上、2017年ごろのAIの状況を見てきました。その後の流れとして、文部科学省「第1章 新時代を迎えたAI」(インターネット参照のこと)では、「2000年代以降の技術の進展に伴うインターネットや計算能力の拡大を背景として、大量のデータから帰納的にルールやモデルを構築する『機械学習』技術の進展等によって、2010年頃から『第3次ブーム』が牽引されてきましたが、さらに最近の生成AI技術の進展等を受けて、現在は『第4次ブーム』に差し掛かっているとも言われています」(第2節)とあります。
 この「機械学習」技術には様々な「モデル」と「学習法」があり、すでにみてきた深層学習はニューラルネットワークのモデルで、学習法としては「教師あり学習」、「教師なし学習、「強化学習」があります。
 さらに、AIの適用範囲や能力により二つのカテゴリーに分けることができます。上記の資料によると、「特定の機能や特定の状況下でのみ人間に近く、時には精度で人間を上回る動作をする『特化型AI』と、人間の知能の様々な側面を幅広くカバーし、様々な状況で人間の知能のように動作する汎用性の高いシステム『汎用AI(AGI)』です。第3次ブームにおいて、様々な応用に広がったAI技術は基本的に『特化型AI』に相当する技術群とされていますが、極めて大規模な深層学習によって作られた『基盤モデル』の登場により、研究開発の中心がこれまでの特化型AIと言われたものから、高いマルチモーダル性・汎用性を持つAIへと向かいつつあります」(第2節)とのことです。
 次回からは、これらの概念や進歩状況について具体的に見ていこうと思います。



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