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うつりゆく時代 8
 (5)揺れる世界と日本 3 (2026年8月~)

 前回までは、日本経済新聞の2017年と2025~26年の記事を利用してこの間の時代の変化を見てきました。今年(2026年)の8月に日経は「動乱2026年 この先」というタイトルで「国内外で政治や経済が激しく揺れる2026年の先行きを展望する」という5回シリーズの記事を載せていました。今回から「人工知能AI」について取り上げると予告していましたが、その前に今後の世界と日本の方向について書かれたこのシリーズを以下で紹介しておきます。

 ①「任期4割過ぎ、功を焦る:トランプ路線、より過激に」(8月13日)日経コメンテーター 秋田浩之
 7月末でトランプ氏の任期が約4割を過ぎたが、「相互関税は司法の壁にぶつかった。外交ではウクライナの停戦仲介が滞り、イランへの軍事作戦も成果が乏しい」という「看板挫折続き」状態で11月3日の中間選挙を迎えることになります。トランプ氏の性格から「内政で行き詰まるほど功を焦り、外交でより過激な行動に走る」可能性があります。
 そのため秋田氏は二つの次元の異なる外交政策が考えられるとし、第一は、ウクライナ停戦仲介や北朝鮮問題、第二は、NATOからの撤退やデンマーク領グリーンランドの支配権追及、さらに対中外交を挙げています。ウクライナについては「最終的にはロシアに有利な条件で停戦を急ぐ恐れがある」、北朝鮮問題では「会談が実現すれば、合意を優先するあまり、北朝鮮を『核保有国』と認めてしまうことが最悪の展開だ」、対中外交では「中国からの通商面で譲歩を得る代わりに、台湾への武器売却を制限するーー」など「やりかねない」と言っています。

 ②「AI覇権競う米テック:日本に漂う『負け意識』」((8月14日)日経コメンテーター 中山淳史
 アメリカのアンソロピック社は「ベネズエラへの攻撃に同社のAIが使われたのが今年1月。その3カ月後にはネットワークの脆弱性を一瞬で見破る『クロード・ミュトス』も発表した」、またアメリカのスペースXのイ―ロン・マスク氏は「アバンダンス(有り余るほどの豊かさ)」という持論を披露して、「『人類が未経験の豊かさをAIと宇宙で実現する』。6月の株式公開は世界中から資金を集め、史上最大規模になった」ということに象徴されるように、アメリカの『GAFAM』の投資の「2025年度の5社合計額は3702億ドル(約60兆円)と日本の国家予算の半分程度にも達した」とのことです。
(GAFAMとは、Google(親会社Alphabet)、Apple、Facebook(現Meta Platforms)、Amazon、Microsoftです、念のため!)
 中山氏は、日本はAIと宇宙で水をあけられているが、日本は「日本企業に眠る豊富なデータ」をもち、「データ埋蔵量では屈指の日本」だから、「データがAIで価値を生む時代は製造業が強い日本企業にこそ好機だが、心理学でいえば、最初から負けを意識する『学習性無力感』と似た空気も漂う」と警告しています。

 ③「減税の『穴』探る市場:インフレ頼み、財政に限界」(8月15日)日経コメンテーター  奥村茂三郎
 高市早苗首相が食料品の消費税率引き下げを決定しましたが、問題は減税の財源をどうするかです。「首相は減税への財源について『あらゆる特別会計や基金などからさらなる歳入を確保する』と説明する。2027~28年度の2年間で10兆円の財源は『12月の第2週ごろ』(片山さつき財務相)まで示せないという」が「年末に決める27年度予算案の、どこかに財源の『穴』がないか。市場は赤字国債の増発の有無に目を凝らしている」としています。
 具体案がなければインフレに頼ることになりますが、奥村氏は「気がかりなのはインフレに対処するための円安是正や金融引き締めを後押しする言葉が首相自身から聞かれないことだ」とし、「『インフレとの戦いに勝たない限り、持続的な成長の確かな基盤は築けない』(サッチャー元英首相)。首相にはトラス氏ではなくサッチャー氏に学んでほしい」とコメントしています。

 ④「想定外の株高、攻めに使え:市場が迫る『次の日立』」(8月17日)日経コメンテーター 梶原誠
 梶原氏は、日本の経営者にとって想定外の株高が進んでいるとし、「株高をけん引するのは外国人投資家で、今年10兆円以上買い越した。多くの外国人が日本株の変化の象徴とするのが『ヒタチの改革』だ」と例示しています。(「ヒタチの改革」とは、「動かぬ日本企業」の代表だった日立製作所が経営危機に直面し、非中核事業の売却、戦略部門に投資、ノジマへの家電事業売却などで変身して信認を回復したことを指します。)これは市場が経営者に攻めを迫っていることになり、梶原氏は「物価上昇が進む今、企業は高い価格で売れる製品を提供しないと原材料費や人件費に押されて収益が悪化する。不採算事業からの撤退も待ったなしだ。設備や研究開発への投資、事業の再編という解が浮かぶ」と言っています。
 そして、日本とアメリカを比較して、PBRでみると1を下回る比率は日本が33%に対し「『落第生』が2%の米国」と比べ日本の企業価値が帳簿価格を下回っていると疑われる、ROEでみると日本が10%に対しアメリカは21%、売上高に対するEBITでみると日本が10%に対しアメリカが18%などと日本の企業が見劣りしています。
(PBR(株価純資産倍率 Price Book-value Ratio)=株価÷1株当たり純資産、ROE(自己資本利益率 Return On Equity)=当期純利益÷自己資本×100)、EBIT(利払い・税引き前利益 Earnings Before Interest and Taxes)を指します、念のため!)
 梶原氏は「日本企業も収益力を高めたが、米企業はその先をゆく。これでは投資家に選ばれ続けない」として、「市場には、12年末に始まった『アベノミクス相場』の教訓がある。外国人は、当初の3年で20兆円以上も買い越した。だが企業改革が進まないと見るや、20年までにほとんど売り払った」という例を出して、「株高が続くカギは改革の裾野が広がるかだ」、「危うい構図は今も同じだ。マネーはいつまでも寛容ではいてくれない」と言っています。

 ⑤「中東揺らす2つの選挙:新秩序の胎動、見逃すな」(8月18日)特別編集委員 松尾博文
 松尾氏は「中東混迷の出口が見えない。行方を左右するのは、今秋に迫る米国とイスラエルの選挙だ」として、選挙の結果の可能性と今後の動きを書いています。
 11月のアメリカの中間選挙で共和党が敗北した場合、トランプ大統領は過激な軍事行動に出るか、中東への関心を失うか、と見方は分かれているが、どちらにしても「米イランのはざまにあるサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などアラブの湾岸産油国は災厄が待ち受ける」、軍事行動に出た場合は、エネルギーインフラの破壊とホルムズ海峡の自由航行は遠のくし、関心を失った場合は、中東産油国だけでなくこの地域に依存する日本や欧州に海峡の安全確保を担う覚悟を迫る、ことになります。
 10月にイスラエルでは国会(クネセト)選挙が予定されているが、ネタニヤフ首相の劣勢が伝えられています。このため選挙までに新たな軍事挑発に動く懸念はある、と松尾氏は指摘しています。
 他方、イランはホルムズ海峡の支配権を手放さない、紅海ではイエメンの新イラン武装組織フーシが南側のバベルマンデブ海峡を封鎖、紅海北側のスエズ運河を抜け出す地中海ルートも安全ではない、という問題があります。この7月にはウクライナがカスピ海でイラン戦を攻撃というように、「2つの戦場がエネルギー不安を増幅する」という状態にあります。
 この軍事衝突から湾岸産油国が安全保障をアメリカに頼る限界を知り、「サウジとトルコ、パキスタンは7日、共同防衛協定を締結した。北大西洋条約機構(NATO)型の集団安保体制構築への一歩となる」という動きがあり、松尾氏は「日本は胎動を見逃してはならない。軍事衝突の教訓は脱中東だけではない。戦後に出現する新秩序を中東との関係強化につなぐ発想が必要だ」と締め括っています。



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