| (5) 揺れる世界と日本 2 (2025年12月~2026年1月) 前回は、同じタイトルで2017年初頭の日本経済新聞の社説を見てきました。今回は、うつりゆく時代という視点から、2026年に関する日本経済新聞の記事を取り上げてみます。 日本経済新聞は、昨年2025年の12月22日~30日までに「2026年を読む 混沌の先に」というタイトルで、日本経済新聞のコメンテーターによる以下の7回シリーズの記事を載せていました。 12月22日 政策覆う「極端の競争」: 現実主義で経済停滞破れ 12月23日 漂流する世界の経済秩序: 波乱の米国に「耐性」を 12月24日 AIエージェントの時代: 技術国家の素地生かせ 12月25日 マネー、日本の決断問う: AI駆使し成長つかめ 12月26日 平時と戦時、崩れる壁: 紛争がいつもある世界 12月29日 メード・バイ・ジャパンへ進化: 世界水準の競争絶やすな 12月30日 AI覇権 電力が制する: 資源・エネ秩序、力学一変 さらに、2026年1月には「海図なき時代に」という視点から、以下の社説を掲載していました。 1月1日 混迷を好機にする行動の1年に 1月3日 米中に翻弄されぬ多国間外交導け 1月9日 危機感を高め高齢化に克つ日本を 1月10日 民主主義の衰退を止める希望の灯を 日本経済新聞(以下日経とする)は今年の元旦の社説で「未知なる年への希望と不安が交錯する2026年が明けた。戦後80年の間に確立したルールや枠組みが至るところでほころび、世界も日本も新たな秩序を手探りする『海図なき時代』を迎えた」(1/1)と書き出しています。(これまでと同じように( )内の数字は日経新聞の記事の掲載(月/日)を示します。) ここでは、前回に続いて、「うつりゆく時代」の視点から、日経の上記11の記事をまとめる形で以下のような項目に整理して順に考えてみようと思います。 ① 崩れる国際秩序 ② 問われる民主主義 ③ 高齢化社会の実態 ④ AIと経済成長 ① 崩れる国際秩序 第2次大戦後、世界はいろいろな困難を乗り越えて曲がりなりにも国連を中心とした世界秩序を作ってきました。しかし、日経が「トランプ米大統領は世界貿易機構(WTO)のルールを無視した高関税を全世界にかけ、自由貿易体制をディール(取引)で翻弄した。米主導で発足した国連を『我々のために存在していない』と酷評し、気候変動を詐欺とみなす。地球規模の課題解決への国際協調は崩れ続けている」(1/1)というように、また世界に起こっているいくつかの戦争を見ると「力による現状変更」の様相が強くなり、国連を中心としたこれまでの国際秩序が役に立たなくなってきたのではないかと感じます。 このような状況の中で「トランプ氏は超大国の関係を『G2』と公言する。日米欧の主要7カ国(G7)の存在はかすむ」(1/1)なかで、さらに南半球をアメリカの勢力圏にしようとする新モンロー主義の考え方も出てきました。日経の社説は、「秩序崩壊の悪影響に気づかぬまま、人類は取り返しのつかない誤った道を進み始めたのではないか。そんな強い危機感を抱く」と警告しています。 これに対して、アメリカ抜きの世界秩序を探る動きも出てきました。「(昨年)11月20日、オーストラリアのメルボルン。欧州連合(EU)と環太平洋経済連携協定(TPP)加盟12カ国の閣僚が初めて対話した」(12/23)。この2つの自由貿易圏の世界全体に占める割合は、2024年データでアメリカが26%に対し、EUの27カ国17%とTPPの12カ国14%で31%を占めることになります。このような動きが新しい世界秩序形成にどのような影響を与えるか、今後の動きを注視したいと思います。 このような状況の中で日経は「日本の国力を内と外の両方向で高めねばならない」(1/1)とし、内の国力を経済成長等に、外の国力を他国との連携の強化に求め、サプライチェーンやAIのルール等の国際的な秩序や強化に貢献する努力をすべき、としています。 さらに、10年前と違って最近問題になってきたのは、現在の世界は平時なのか、それとも戦時なのか、ということです。最近、以下のような侵攻や攻撃の紛争があり、現在も解決しないで続いています。 2022年2月24日に始まる、ロシア・ウクライナ戦争 2023年10月7日に始まる、イスラエル・ハマス戦争 2026年2月28に始まる、アメリカとイスラエル・イラン戦争 日経は、「世界がこれほど危険になったのは、主に二つの理由がある。第一に、13年にオバマ大統領(当時)が世界の警察役を担わないと宣言して以来、紛争の抑え役が消えた。トランプ米大統領がその流れに拍車をかける。第二に、戦争の姿が変わった。ドローンやサイバー攻撃、電子兵器が多く使われるようになり、戦場とそうでない地域の堺がぼやけてきた」(12/26)と説明しています。 ② 問われる民主主義 日経は「ことしこそ、民主主義の衰退を食い止める転機にしなければならない。それは内からむしばむポピュリズムと、外から押し寄せる権威主義の荒波を乗り越えられるかどうかにかかっている」(1/10)とし、「ポピュリズムは庶民の不満に財政拡張と敵をつくることで留飲を下げさせる。そこで社会は分断され、政治は多党が乱立し、決められない政党政治から強権的な権威主義に傾く国が相次ぐ。第2次大戦前夜に世界が見た光景だ」(1/10)とし、それにSNSのデジタル社会になると不満は可視化しやすくなり、ポピュリストが力を握り「政党やメディア、アカデミズムといった中間組織がないがしろにされる」(1/10)と説明しています。そのうえ権威主義的な指導者ほどSNS利用がうまいので「ポピュリズムとデジタル技術を連動させるデジタル権威主義は大きな脅威だ」(1/10)と警告しています。 このような状況の中で、選挙を通じて民主主義国の権威主義化が始まっているようです。 日経は、国連機関の選挙は新興国を取り込む中国が優位に立ち、グローバルサウス(新興・途上国)にも民主主義への幻滅が広がり、中国やロシアなどの権威主義国との競争でも民主主義国は劣位にある、と言っています。 スウェーデンのV-Dem研究所によると、権威主義の国・地域は91、民主主義の国・地域は88とのこと、日本は後手に回っているがSNS情報の質を高めて強権政治にならないようにすべき、とし「民主主義は幾多の試練を生き延びてきた。あらゆる手を尽くし、海図なき時代が大戦へと向かうのを阻止しなければならない」(1/10)と結んでいます。 ③ 高齢化社会の実態 国連は、高齢化した国・地域を65歳以上の人口の比率から以下のように定義しています。 人口比7%を超えた国・地域・・・高齢化社会 人口比14%を超えた国・地域・・・高齢社会 人口比21%を超えた国・地域・・・超高齢社会 日経は「高齢化率29%の日本はこれらをはるかにしのぎ、『重老齢社会』とも呼ぶべき社会構造になっている」(1/9)とし、2026年の日本の人口の6人に1人が75歳以上の後期高齢者となり、若年層の減少で2042年には5人に1人を超えると言っています。そして「最も重要なのは年齢による線引きをやめることだ。高齢者を一律に弱者として扱うのはやめ、能力のある人には社会を支える側に回ってもらう必要がある」(1/9)と指摘しています。 この「能力に応じた負担」を徹底するために以下のような提案をしています * 負担は所得だけでなく、株式などの保有資産も考慮したルールにすべき。そのためにマイナンバーで保有資産を確認できる仕組みを急ぐべき。 * 現在の高齢者医療制度ができたときと比べると高齢者の健康状態は5歳ほど若返っているとして「2割負担、1割負担の対象年齢を5歳ずつ引き上げたり、すべての年齢で3割負担とし、高額医療には月額上限の設定で対応したりする改革に踏み込むときだ」(1/9)と言っています。 * 高齢者を支える体制としても、労働供給不足の中、人工知能(AI)やセンサー、遠隔診療などのデジタル化を進めることや少子化対策も必要だとしています。 「海図なき時代に必要なのは変える勇気だ。変化や摩擦を恐れて古いルールや慣習に固執していては人口危機には克(か)てない」(1/9)と結んでいます。 |
