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『新年のラブレター』
真木こまき 投稿日:2017年01月06日 18:03 No.4

関西の田舎で、のんびり育っていたころ小学一年生の同じクラスに、堀くんという少年がいました。お父さんが高校の教頭先生だとかで、着ているものも都会的。女の子たちにとって彼は特別な存在でした。私も、堀くんがなんとなくまぶしくて他の男の子に話すようには話せません。堀くんは、まるで私に関心がないようでした。

当時、元日には登校して新年のあいさつをすることになっていました。女の先生たちは全員和服で、ふだんとは違う華やかさです。出かけようとしていた私に、母が一枚の年賀状を手渡しながら「堀くんからよ」 私は、びっくりして読みました。きれいなしっかりした字で『あけましておめでとうございます。ぼくは、○○さんがだいすきです。ことしもなかよくしてください。』とありました。6歳の女の子がもらった初めてのラブレター。

それにしても、よく書いたものです。あの上品な教頭夫人であるお母さんは、それを知っているのかしら。なにがなにやらわからないままに、登校した私は、堀くんの姿を探しました。いた! いつも通りの、すっきりと気高い彼が。でも私はそばに行けませんでした。

私は賀状の返事を書いたのか書かなかったのか覚えていません。他の女の子たちには賀状を出さなかったらしいけど、堀くんの態度はそれまでと変わらず特にアプローチもしてきませんでした(小学一年ですものね)。中学も同じだったのですが、いつのまにか堀くんは、普通の男の子にしか見えなくなり、私には別のかっこいい子の方が気になって、彼はその他大勢組になってしまいました。

何十年も経ち、このことを思い出すと、いまも笑みがこぼれます。堀くんは覚えているかな? 不思議な淡い夢のようなできごと。




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