近畿植物同好会 掲示板
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Hedera(キヅタ、セイヨウキヅタ)の葉による識別は可能か?
藤井俊夫 投稿日:2023年03月17日 20:47 No.479
Hedera(キヅタ、セイヨウキヅタ)の葉による識別は可能か?
先日の室内例会の折に聞かれました。

●問題点
1。ヨーロッパの植物なので、手元に図鑑がない。
2.検討すべき標本がない(正確に同定された)
3.野生種を専門とする立場なので、園芸種は守備範囲外
4.園芸種については、植物園の緑の相談所に問い合わせるべき
あまり、愚痴を並べてもしょうがないので、可能な範囲で調べてみました。

まず、心当たりのwebsiteをしらみつぶしに調べる。
1ケ月ぐらいかかる。

1.Flora of Chinaなどで、世界に何種類ぐらいあり、種の識別点は何かなど、基本的情報を集める。
http://www.efloras.org/

2.The Plant List (formaly Plants Working List)で、accepted nameを調べる
http://www.theplantlist.org/

3.片っ端から、学名をPOWOに入力して、分布などの基本情報を調べる。
https://powo.science.kew.org/

4.Euro+Med PlantBaseで、分布など、詳しい情報を調べる。
https://www.europlusmed.org/

5.Hederaについては、葉の形質による区別点は見つからなかった。
  自分で、標本を集めて、比較することになる。
  ★注意点:園芸種の場合、挿し木や、株分けによる増殖が普通なので、集めた複数の標本が同一個体に由来する可能性がある。
   個体内の変異しか見ておらず、その種の変異をとらえていない可能性がることに注意する。

とりあえず、野外で在来と考えられるキヅタ(Hedera rhombea)、壁面緑化からセイヨウキヅタ(Hedera helix)、歩道沿いの植栽からカナリーキヅタ(Hedera Canariensis)と思われる植物を採集して比較する。

葉の裏面の毛の状態(顕微鏡レベルです。20倍のルーペで、何とかわかる程度)
1.キヅタ:葉裏に星状毛が散生
2.セイヨウキヅタ:葉裏全面に鱗状の小さな毛が散生
3.カナリーキヅタ:ほぼ無毛(葉脈上に、突起状の毛がある。葉脈の分枝部分に多く見られる)

これを裏付けるためには、正確に同定されたセイヨウキヅタ、カナリーキヅタ、キヅタの標本を取り寄せて、比較検討する必要があります(各々100枚ぐらいづつを比較する)。
以上の手順を踏めば、葉による識別ができると考えます。以上。


植村 修二 投稿日:2023年03月18日 08:04 No.480
藤井俊夫さま

 いつも、興味深い話題提供ありがとうございます。

 この仲間の外来種は、私が見てきた限りでは、逸出というよりは植栽されたものが放置され、残って生育を続けている感じです。

 ただ、セイヨウキヅタHedera helix L.もカナリーキヅタH. algeriensis Rantonnet ex C.Morrenも結実している個体を確認しており、今後、鳥による長距離分散で野生化していく可能性があります。

 なお、カナリーキヅタは以下の文献だったと思うのですが、これまで使ってきた学名Hedera canariensis Willd.は誤同定で、この種はまれに栽培されるとされています。

Hugh McAllister・Rosalyn Marshall2017:Hedera The complete guide,Royal Horticultural Society.

カナリーキヅタH. algeriensis
 https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:90646-1/images

Hedera canariensis
 https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:90665-1/images


木村雅行 投稿日:2023年03月18日 22:52 No.489
藤井 さま

いろいろと調べていただきありがとうございます。
市街地近郊での調査や観察会で「外形が在来のキヅタに似た外来キヅタ」が気になり、先生なら区別点など何かご存じかなと思ってお尋ねさせていただいたものです。

もっと多くの比較が必要だと思いますが、私が観察したもの写真を添付します。

在来のキヅタと思われるものは葉裏や葉柄の毛は幅があり鱗片状です。
外来のキヅタと思われるものは葉裏や葉柄の毛は細く針状です。


植村 修二 投稿日:2023年03月19日 09:51 No.490
木村雅行さま、藤井俊夫さまへ

 先に紹介したHugh McAllister・Rosalyn Marshall(2017)『Hedera The complete guide』によると、在来種のキヅタと外来種のセイヨウキヅタは、ある程度、葉の裏面にある毛の形態で区別できそうです。

 木村雅行さん、藤井俊夫さんが観察されてますが、この本で、キヅタは鱗片状毛(scale-lika hairs)、セイヨウキヅタは星状毛(Stellate hairs)とされています。

 以下は、同書に掲載されているヘデラ類の葉裏にある毛の走査型電子顕微鏡画像(SEM)です。

 ただ、カナリーキヅタH. algeriensisとHedera canariensisはともに鱗片状毛で、これで見分けるのは難しそうです。




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