近畿植物同好会 掲示板
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モンステラの果実
磯野久美子 投稿日:2023年03月10日 00:55 No.470
3月3~5日、八丈島を歩いて来ました。
たまたまモンステラ(おそらくMonstera deliciosaサトイモ科)の果実が1つ落ちていました。
現地ガイドさんの話によると、これは買うと1つ2~3千円もする高級フルーツだそうで、八丈島では、栽培しているわけではないが、いつでも採れるので、島民は落ちていたら拾って帰るのだそうです。
なので、どうぞお持ち帰り下さいと言ってくれましたが、私以外誰も欲しがらないので、有難く頂戴して帰りました。
数日そのまま放っておくと、皮がボロっと剥がれる、皮が剥がれたら食べられるとのこと。
バナナみたいなパイナップルみたいなトウモロコシみたいなフルーツで、桃のような甘みがあるという話だったので、楽しみにしていたら、9日夕方、仕事から帰るとホントに皮がボロっと剥がれ落ちていたので、食べてみました。
トロピカルな感じで甘くて美味しい♪
ただ一つ、ガイドさんが胃がチクチクするかも、と言っていたのが気になって調べたら、サトイモ科あるあるでシュウ酸カルシウム(針状結晶)が災いをもたらすのだと分かりました。熟していてもチクチクが感じられる場合もあるようなので、とりあえず少なくとも自然に皮が剥がれるまで熟すのを待つことにします。そうすると、ちょっとずつしか食べられませんので、しばらく楽しめそうです。
八丈島、色々面白いでした。

写真
1枚目
3月5日果実が生っている様子(八丈植物公園)
2枚目
3月5日拾った果実
3~5枚目
3月9日皮が剥がれた所
6枚目
3月9日皮を取り除き、取り出した可食部


シュウ酸カルシウム 磯野久美子 投稿日:2023年03月10日 12:04 No.471
シュウ酸カルシウムを調べていたら、2月に国立科学博物館で終わったばかりで、この3月18日からは大阪自然史博物館でも開催される特別展「毒」でも、外敵から身を守るための毒ということで紹介されていたことが分かりました。

以下、本展についてのネット情報より
≪シュウ酸カルシウム≫
サトイモ科植物の細胞にはシュウ酸カルシウムー水和物の針状結晶がたくさん含まれている。
食べるとこれがロの中などに刺さって炎症を起こす。
また、この結晶はタンパク質分解酵素と共存することにより耐虫害効果が高まる。
この結晶は、植物体内でしか生成されず、現在のところ人工的に合成することはできない。
≪植物の毒のいろいろ≫
植物はタンニン、シュウ酸カルシウム、アルカロイドや精油成分などさまざまな毒性のある防御物質を生産して植物を食べる外敵から身を守っている。
これらの防御物質は植物の成長、生殖や発生などとは関係がない物質で、ニ次代謝産物と呼ばれる。

因みに、毒劇法ではシュウ酸カルシウムは劇物に指定されていると知りました。
遠い昔にヘビ毒を実験に使ったことも思い出しました。
「毒」展、楽しみです。


野菜のシュウ酸カルシウム含有量などについて 藤井俊夫 投稿日:2023年03月10日 17:04 No.472
●山中英明・久能昌朗・塩見一雄・菊池武昭。1983.酵素法による食品中のシュウ酸の定量。食衛誌. Vol..24, No.5.454-458.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shokueishi1960/24/5/24_5_454/_pdf/-char/ja
野菜の中では、ホウレンソウがダントツに高い。植物の種類によってシュウ酸カルシウムの構造が変わり、この構造によって舌に焼けつくような痛みを感じると考えられている。

●サトイモのシュウ酸カルシウムについての報文
村上賢治・植田京子。2007.サトイモ(Colocasia esculenta Schott)の組織中シュウ酸カルシウム結晶密度における品種間差異。
岡山大学農学部学術報告 Vol。 96,25-28.
https://core.ac.uk/download/pdf/12546159.pdf
結論
サトイモの葉柄や球茎の食味(えぐ味)は,組織のシュウ酸カルシウム結晶を含む細胞密度と関連し,シュウ酸塩濃度とは関連していないことが示された.

藤井注:
水溶性のシュウ酸塩、結晶のシュウ酸カルシウムで、体内での作用が異なります。
シュウ酸カルシウム結晶は尿結石の原因として考えられています。針状の結晶になり、この構造が舌に刺さって痛くなるらしい。
ホウレンソウは、煮炊きすることでシュウ酸塩が水に溶けだすため、大量に摂取しなければ、問題にならないと考えられています。

●日本医療機能評価機構:Mindsガイドライン ライブラリ
CQ29:シュウ酸はどのような食物に多く含まれるか?また、シュウ酸の接種について工夫すべきことはあるか?
https://minds.jcqhc.or.jp/n/cq/D0003085

●新潟臨港病院:尿路結石の予防について
https://ngt-rinkohc.jp/rinko/column/576/

●日本植物生理学会の、みんなの広場「植物Q&A」に、コンニャク芋の場合の「シュウ酸カルシウム」濃度が載っていました。
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=5265
こんにゃく芋のシュウ酸カルシウムの無毒化について

●コンニャク芋の濃度:78mg/100g(組織)
 コンニャク(製品)の濃度:20mg/100g(75%のシュウ酸カルシウムが除かれている)
★藤井注
 食品分析表などのシュウ酸カルシウム濃度は、生野菜の濃度が記載されているはずです。
 調理後に、コンニャクのように7-8割が水やゆで汁に溶出することを考慮しないと、いけないと思います。

二次代謝産物:(Wikipediaより)
生物の細胞成長、発生、生殖には直接的には関与していない有機化合物である。
一次代謝産物とは異なり、二次代謝産物の欠如は、即時の死に至らないが、生物の生存や繁殖力に、長期的な不利益をもたらすことがある。
●草食動物による摂食を回避する
1.化学的防衛:毒を産生すること(二次代謝産物)
2.物理的防衛:トゲや鎧、表皮を固くするなど、組織の硬化。

追伸
3年ほど前(コロナの広がる前)、滋賀県の食品衛生局だったかな。毒草の話をしてくれと頼まれました。
にわか仕込みで、食中毒になりやすい毒草の御三家を話した記憶があります。
1.ニリンソウと、トリカブトの若葉
2.ギボウシと、バイケイソウの若葉
3.ギョウジャニンニクとイヌサフランの若葉
※花壇に、一緒に植えていると間違うので、要注意。


モンステラの果実および種子について 藤井俊夫 投稿日:2023年03月12日 18:28 No.474
モンステラの果実および種子について

磯野様

ホウライショウ:Monstera deliciosa
CCDB (Chromosome Counts Database)
http://ccdb.tau.ac.il/search/
によると、染色体数は 24、50、56,58、60、70が報告されています。

50以上は、正確に染色体数を測定するのは困難と思われるので、誤差を考えて、基本数は、n=8と考えられます。
3n=24、4n=32、5n=40、6n=48、7n=56、8n=64、9n=72
3倍体、6倍体、7倍体、8倍体、9倍体の可能性が考えられます。
奇数倍数性が報告されています。
多分、奇数倍数性の系統を園芸的に増殖しているものと思います。
従って、果実は途中まで成長するが、種子がほとんど熟していないものと考えられます。
園芸上は、株分けによる繁殖が主になると思います。

(写真は、以下のsiteから転載)
https://www.hort.net/lists/aroid-l/sep07/msg00122.html


モンステラの栽培 磯野久美子 投稿日:2023年03月12日 21:22 No.475
藤井様

早速、種子の写真をありがとうございます!

ホウライショウという和名を教えていただいたので、ウィキペディアの「ホウライショウ」を覗いてみたら、果実は食用になるが、果実採取を目的とする商業的な栽培は行われていないと書いてありました。
その理由は、果実の成熟に時間が掛かりすぎること(開花から果実の成熟までに1年を要するとのこと)と、果肉に繊維質が多すぎるためと、人によってはえぐみを強く感じるので薦められないとの声もあるためと書いてありました。
今日試食して下さった方々は大丈夫でしたでしょうか。
石垣島の通販サイトで、超レア、お一人様1個、4800円で売っていましたが、完売御礼、次回未定となっていましたので、採れた時だけ販売しているということでしょうか。

八丈島でも果実の栽培はしていないとのことでしたが、どこにでもあるという話でしたので、野外で自生的に生育しているものを観葉植物や切り葉として出荷しているのかもしれません。
あるいは、切り葉を出荷するためにフェニックス・ロベレニーを整然と栽培している畑はあちこちで見かけましたので、気づかなかっただけで、モンステラもそのように畑で栽培しているのかもしれません。
いずれにしても通常は種子ができなくても全然問題ないということですよね。

ところで、ネットサーフィンをしていたら、モンステラマニアのためのサイトが出て来ました。
モンステラはモンスターを意味するとかで、奇怪な姿が魅力なのだそうです。そのサイトでは、大量生産品とは異なり、穴が異様に多いとか斑入りとか、1点もののようなより奇怪なモンステラを実生から選別したりもしていることを強調していました。
こういう時に種子が役立つのですね。6倍体とか8倍体とかの個体なら種子ができることもあるのでしょう。
ちょっと値段を見たら7万円とか8万円とかのもありました。時間をかけて手間をかけて生み出される1品なので、高いのですね。


植村 修二 投稿日:2023年03月18日 10:44 No.481
磯野久美子さん、藤井俊夫さんへ。

 モンステラの投稿記事、興味深く読ませていただきました。いつも、亀レスでごめんなさい。

 我が家にも20年以上育てているモンステラがありますが、まだ花が咲かないですね。

 ずっと以前に勤務していました大阪府立園芸高等学校には植物園にあるような大温室があって、数々の熱帯植物が育てられていました。

 今自宅にあるモンステラは私が大阪府立農芸高等学校へ異動になった時、温室担当の技師さんに分けていただいた挿し芽苗が大きくなったものなのです。長いこと慣れ親しんできた植物たちと別れるのはさすがに辛かったです。そんな気持ちを分かってくれたのでしょう。うれしかった!

 モンステラは花が蕾から開花する際、発熱すると先輩の先生から聞いて、園芸高等学校の大温室で確認してみたのですが、あまり良くわからなかった経験があります。

 ネット検索すると、同じサトイモ科のザゼンソウも開花する際、自ら発熱し、極寒の環境下で花を咲かせるようです。

 No.4: 発熱する植物!? -ザゼンソウの不思議-(筑波大学山岳科学センター菅平高原実感所)
 https://www.sugadaira.tsukuba.ac.jp/column/201005column.html

 シュウ酸は、農芸高校で食品化学を担当するようになって、よく実験に使った薬品でした。果物に含まれる有機酸の量を調べる時に使用する水酸化ナトリウム溶液の正確な濃度を中和滴定で求める時にシュウ酸溶液を使います。酸と塩基とを過不足なく反応させる化学反応が中和反応で、中和反応で水と一緒に生じるのが塩(えん)です。この中和反応によって未知試料の酸あるいは塩基の濃度を測定する手法が中和滴定です。

 実験した生徒から提出されたレポートに「なぜシュウ酸じゃないといけないのですか?ほかの酸でもいいじゃん。シュウ酸は2価だから計算めんどくさい」と書いてあったので、「液体の酸は扱いにくいが粉末ならやりやすい、安くて純度の高い試薬が買える」と答えて返したもののちょっと自信がなかったので、ヤフウ知恵袋に質問したところ、当量やら~やら難しい専門用語がある回答がベストアンサーで、全然わからなかったことがありました。

 以下の画像は今日撮影した我が家のモンステラとシュウ酸溶液を使った中和滴定の様子1枚です。


発熱! 磯野久美子 投稿日:2023年03月18日 11:36 No.482
植村様

レス、ありがとうございます!
兎より亀の方がありがたいかもです(^^;

ザゼンソウが発熱する話は聞いたことがありますが、寒い所に住んでいるからだと思っていました。
暑い地域に住むモンステラも発熱するとはビックリです。
同じ科とは言え、植物って面白いですね!

ところで、私は教育実習(高校の化学)をさせてもらった時、1クラス何十人もいる生徒たちに実験をさせるのは本当に大変だと思いました。
もう何の実験をさせたのかも忘れてしまいましたが、万一、生徒が怪我したり、火傷したりしたらどうしようとハラハラし通しでした。
何事もなく楽しく終われてホッとしましたが、なかなか目が届く人数でもなく、化学実験をされる先生方には本当に頭が下がります。


ショクダイオオコンニャクも発熱します 藤井俊夫 投稿日:2023年03月18日 16:42 No.483
磯野様

●ショクダイオオコンニャク開花時の発熱について
Taketoの京都ブログ(2021.07.17)
https://kyoto-taketo.com/2021/07/17/plante-125/
39.2℃に達したとあります。(花の模式図写真のすぐ下に記述)

●東京大学大学院 農学生命科学研究科 プレスリリース(2010/12/07)
世界最大級の花ショクダイオオコンニャクが放つ特異臭気成分を特定
https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2010/20101207-1.html

●ショクダイオオコンニャクの訪花昆虫
リケラボのsiteで、筑波実験植物園の説明に載っていました(2020.05。15)
https://www.rikelab.jp/post/3114.html
地表性昆虫のシデムシの仲間です(写真が載っている)。
アカモンオオモモブトシデムシ(Diamesus osculans)は、西表島から南に分布している。

●日本のシデムシは羽が退化しているが、熱帯のシデムシは、どうなんだろう?
茎を這い上がるとは思えないので、後翅が発達しているかもしれない?

●甲虫の種多様化要因の新説~飛翔能力の退化が種分化を促進(2012年2月1日)
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/archive/prev/news_data/h/h1/news6/2011/120201_1
後翅をもっているシデムシの写真が載っていました。

藤井注:
最近(この10年ほどで)、世界各地の植物園で栽培されるようになった。
多分、絶滅危惧種の系統保存(危険分散)だと思います。
(ぜひとも栽培個体から種子繁殖を行ってほしいと思います)

●1991年に、小石川植物園で初めて開花(日本初)しました。
丁度、上野(学芸員資格試験)に行っていたので、見たかったけど次の用事(都立大の牧野標本庫で、標本の閲覧)があったので、見れなかった苦い記憶があります。
後で聞くと、すごい来園者が押し寄せて、入場制限があったとか。
https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/story/newsletter/42/3/features/02.html
(2010年7月22日の記事)


腐臭の拡散 磯野久美子 投稿日:2023年03月18日 20:37 No.487
藤井様

早速、ありがとうございます!
そうでした、ショクダイオオコンニャクも臭かったのでした。
ザゼンソウも臭い。
寒い所に住んでいるから温かくしてハエをおびき寄せているのかと単純に思っていましたが、寒かろうが暑かろうが、来てほしい虫を誘う腐臭を外へ放つために発熱しているのですね!
頭の中が整理されてスッキリしました。
ということは、モンステラの花も臭いのでしょうね…。
どうせなら良い香りを放ってくれたらいいのに、と思いますが、それでは他の植物と競合してしまうからあえて腐臭に近づく虫を選んでいるということでしょうか。
サトイモ科、恐るべし!

ところで、鹿沢インフォメーションセンターのサイトhttp://www.kazawa.jp/fieldnote/2018-04-14-01-45-59にこんなことが書かれていました。
ザゼンソウは発熱温度が一定で発熱期間が長いのだそうです。
腐臭を外に拡散するだけなら発熱温度を一定にする必要はないとのことで、これは冷涼な環境への適応と関わりがあるとのことです。
気温が低い時でも受精しやすい状態にしたり、訪花昆虫の活性が低い時期に開花するので受粉機会を得るためには発熱期間を長くせざるを得なくなったのだそうです。




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