近畿植物同好会 掲示板
★投稿用パスワードは不要です。誰でも、どしどし投稿できます。
| トップに戻る | 検索 | アルバム | 管理用 |

京都府内で:9月4日
伊吹寛子 投稿日:2022年09月04日 17:57 No.286
今日、京都府宇治市でヤマノイモによく似た植物を見ました。葉柄の両端に縮れたヒレがあり、ニガカシュウだと教わりました。花序がたくさん下がっていましたが、花はこれから開くのでしょうか?平凡社「日本の野生植物」(1982)には「雌株はめったにない」と書かれています。しばらくしたら花序の様子をまた見に行きたいと思います。最初の写真が花序の下がったニガカシュウ、2枚目が両端にヒレがついた葉柄、3枚目がいくつも突起が見られるムカゴです。

伊吹寛子 投稿日:2022年09月07日 15:44 No.291
9月7日、先日見たニガカシュウに花が咲いてないか見に行きました。咲き始めていました。ネットで紫の花と白い花を見ていたので、興味があったのです。

保育社「原色日本植物図鑑」(1977)には雄花の花被片は紫色を帯びるとあり、平凡社「日本の野生植物」(1982)では花被片は黄緑色で紫色を帯びるとなっていて、どちらも白い花は言及されていません。

ネットの「松江の花図鑑」では「花が白色から紫色になる」と書かれています。私が見た物は茎の一部が紫を帯びていて、花も葉腋から一本あるいは二本出ている穂状花序に純白と紫と両方が混在しています。今は純白の花が咲きそうな蕾がいっぱいで、紫の蕾はないので、どうやら白い花が次第に紫になるようだと思いましたが、推測です。

雌株は滅多にないと聞きますが、今日の株が雄株とは言い切れないので、花を調べました。花被片6枚、雄蕊6本は確認できましたが、柱頭は見えません。でも雌花の柱頭も0.7mmということですので、私には分かりません。とは言え、雌株は滅多にないそうですから、雄株の可能性が非常に高いのでしょう。

とりあえずは実際に咲いている花を、初心者の域ですが観察することができました。
最初の写真が一部に紫が見られる茎、2枚目が白と紫の花が混在する花序、最後が花を開いて見た様子です。


図鑑の記述は間違い 藤井俊夫 投稿日:2022年09月08日 14:07 No.292
ニガガシュウの雄花の色について

複数の図鑑の記述を調べてみました。

1.牧野富太郎.1949.牧野日本植物図鑑(改訂版)北隆館。
  「淡緑ニシテ紫色ヲ帯ビ」
2.大井次三郎.1953.日本植物誌。至文堂。
  花色の記述なし。
3.奥山春季.1984.新訂増補原色日本野外植物図譜3。誠文堂新光社。
  「白色から暗紫色に変わり」

上記のような記述が見られます。

日本の野生植物の「ヤマノイモ科」は、佐竹義輔が執筆している。
雄花が黄色のカエデドコロや、タチドコロ、イズドコロなどと誤認したのではないか?

図鑑の記載で、間違っている例
1.コバノチョウセンエノキの果実の色:「黒熟」としているが、実際はエノキと同じ「黄橙色」に熟する。
2.オオカラスウリの果実の色:「黄色に熟する」としているが、薄緑色に黄色が少し着く程度で、「緑色」に熟する。
3.ビナンカズラ:「雌雄異株」としているが、雌雄同株。性転換することが最近分かってきた。

など、研究が進むにつれて、記述が変わっている分類群があります。
版が新しくなるごとに、知らないうちに変わっていることがります。

1枚目:奥山春季.1984.新訂増補原色日本野外植物図譜3。誠文堂新光社。の記述。
2枚目:奥山春季.1984.新訂増補原色日本野外植物図譜3。誠文堂新光社。の分布図。
(実際に採集した、生植物を見て、書いている:写真図版と種の記載、分布図がある)


伊吹寛子 投稿日:2022年09月08日 15:38 No.293
藤井先生
貴重な情報をご教授くださりありがとうございます。

仰られますように、図鑑の記述は研究が進むと共に変わって行くことは、正確であろうとすれば避けられないのでしょうね。先生がお書き下さっている色々の図鑑の記述を興味深く拝見しました。奥山春季氏が実際に植物を見て記録しておられるのは素晴らしいことだと思います。そして氏が花の色について「白色から暗紫色に変り」と記されていたことは、私が見た花の状態からの推測とも一致するので、とても嬉しく思いました。今後の推移を観察し続けたいと思っています。

残念ながらニガカシュウが掲載されている図鑑は手許には投稿に記した物しかなく、最新のを府立図書館で調べるべきですがズボラしてしまい、それでも気が咎めて出版年を記した次第でした。愛用の詳しい図鑑でニガカシュウが掲載されていないのもありました。

奥山氏のニガカシュウの分布図で、京都が分布域に含まれていないのは、興味深いです。私が見た物は、植栽とは思い難いですが、不明です。

ニガカシュウ、あるいはニガガシュウという名前については、私が調べた保育社の図鑑では先生が書いておられるようにニガガシュウ、平凡社ではニガカシュウとなっており、平凡社には「和名は苦何首烏の意味で…地下の塊茎や葉が何首烏(タデ科のツルドクダミ)に似ており、塊根も珠芽も苦いことに基づく」となっています(尚、同書ツルドクダミの項では「何首烏」は漢名として記されています)。「何」の漢読みを調べてみると、私が見た範囲では「カ」でしたので、和名の読みとしてはニガカシュウ、あるいは濁ってニガガシュウの両者が受け入れられるかと思い、ひとまずニガカシュウで投稿しました。

藤井先生、今後ともどうぞ宜しくご教授くださいませ。ビナンカズラが性転換することが最近分かってきたということも初めて知りました。ありがとうございました。


分布情報及び標準和名についての蛇足 藤井俊夫 投稿日:2022年09月08日 17:29 No.294
奥山(1984)の分布図は、当時の情報にもとづいています。
●現在は、もっと多数の標本情報があり(40年近くたっている)、サイエンスミュージアムネットで検索できます。
https://science-net.kahaku.go.jp/
近畿では、滋賀県を除く地域で確認されているようです。

●植物名は「Y-list」が標準になりつつあります。
http://ylist.info/index.html
Y-listでは、「ニガカシュウ」としています。
おそらく、東南アジアに分布するカシュウイモ(Dioscorea bulbifera L. f. domestica (Makino) Makino et Nemoto)を基本種とするため、整合性を求めたものと考えられます。
和名には、学名のような厳密な呼び方の規約がないので、世間一般に流通する名前が標準和名になることが多い。

ゲンゲ(標準和名)→レンゲ
スギナ(標準和名)→ツクシ(スギナの胞子葉)
ナルトサワギク(標準和名)→コウベギク(二地点でほぼ同時に見つかったが、先に発表された和名が採用された)
ススキ(標準和名)→カヤ(萱)、オバナ(尾花)。:利用部位によって名称が異なる。
ドクダミ(標準和名)→十薬(薬用としての名前)


●カシュウイモ
Plants of the World Onlne (POWO)
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:323908-2
雌花の写真が載っている。

性転換では、ウリハダカエデや、ヤマウルシも稀ではあるが、性転換することがわかっています。
雄花が咲いているのに、前年枝に果実がついている個体が存在する。
このような稀な現象を図鑑に記載するのは、スペースの関係や、図鑑という書籍の使用目的を考えれば、割愛せざるを得ないと思います。

Kew Gardenなどのinternet siteで、信頼できるsiteの情報を調べると、新しい情報が得られることがあります。
Missouri Botanical Gardenの、eFloras.orgなど。

https://powo.science.kew.org/
http://www.efloras.org/


伊吹寛子 投稿日:2022年09月08日 18:00 No.295
藤井先生
多くの情報をありがとうございます。
知らないことだらけです。
勉強いたします。
ありがとうございました。今後ともどうぞ宜しくご指導下さいませ。


滋賀県のニガカシュウ 相良真佐美 投稿日:2022年09月08日 20:15 No.296
標本情報では、ニガカシュウは滋賀県で確認されていないとされていますが、
2019年8月3日に実施された、第681回観察会の滋賀県草津市 烏丸半島で観察していました。
滋賀県にも分布していました。

http://kinshoku.eco.coocan.jp/20190803news.html


Re:滋賀県のニガカシュウ 植村 修二 投稿日:2022年09月15日 08:54 No.307
相良真佐美さんへ。

 私も滋賀県で村長昭義さんの案内で、ニガカシュウをみています。たぶん、同じ場所だと思います。

 滋賀県草津市 烏丸半島には帰化植物が不思議と多く、ニワゼキショウとオオニワゼキショウとの雑種アキマルニワゼキショウが多くみられます。

 付近の湖岸にはモミジアオイがあり、花の時期に写真を撮りたいですがまだ実現できていないです。


Re:モミジアオイ 相良真佐美 投稿日:2022年09月15日 11:18 No.308
この時の観察会で、モミジアオイも観察しました。

伊吹寛子 投稿日:2022年09月15日 21:01 No.311
ニガカシュウについて、そしてその生育地などについて藤井先生、植村先生、相良さんに色々お教えいただきありがとうございます。この間まで何も知らなかった私がとても色々学習させていただきました。

昨日9月14日、炎天下を自転車で30分ほど走ってニガカシュウに会いに行って来ました。花がずいぶん咲いていて、その姿は私にはまるで藤娘の頭飾りのように見えました。花はやはり白と紫で、藤井先生がご指摘くださいましたように、一部の図鑑に淡緑を帯びているように書かれているのは誤りだと思います。1個の花を毎日見ての観察はできていないので分かりませんが、一番弱っている花が濃い紫であることから、奥山春季氏が書いておられ、私自身も目撃したことから、咲き始めは白で次第に紫になるように思いました。一方、下垂する花序にたくさんつく花を見て初心者の私に興味深いのは、花が開くのが花序の根元からでも先端からでもなく、途中であることです。

ニガカシュウの関係で烏丸半島のことを教えていただき、同時に私が以前庭に植えていた大好きなモミジアオイが外来で、特殊な成り立ちを持つ烏丸半島に生えていることを知ることができて興味深く思いました。いつか烏丸半島に行きたく思います。


Re:モミジアオイ 植村 修二 投稿日:2022年09月18日 08:51 No.320
 相良さん、モミジアオイの画像、ありがとうございます。

 モミジアオイは、北アメリカ原産の園芸植物で、丈夫なのでよく見かけます。

 では私がなぜ「烏丸半島のモミジアオイの画像」にこだわるのか? 

 相良さんは、この画像、湖岸の水辺で撮影されたと思います。

 モミジアオイは原産地では、湿地や沼地などに自生しています。このため、市街地では植栽しない限り、野外では生育しにくいと考えています。

 烏丸半島に見られるモミジアオイは、このような情報を知ったうえで意図的に持ち込んだと思われるからです。

 もしそうであれば、このような行為は絶対してほしくないです。モミジアオイは見慣れた園芸植物で大きな赤い花をつけることから、警鐘を鳴らす意味で「烏丸半島でのモミジアオイの開花期の画像」を使いたかったのです。


ニガカシュウ顛末記 伊吹寛子 投稿日:2022年10月20日 22:01 No.379
つまらぬ事にしつこいと思われそうですが、深山渓谷に一人で分け入れない私は、近くの物に足しげく通い、経過を見るのが楽しみです。自転車で30分余りの所のニガカシュウもその対象でした。電車沿いの金網に、歩測ですが15mあまりに亘って絡まっていて、かなりの勢いでした。

今日の画像は初見の9月4日からほぼ1か月と1か月半の様子です。藤娘の頭飾りのような可愛さのあった花序も、ほぼ1か月の9月30日には、最初の画像のように以後咲く気があるのか無いのか分からない状況でほとんどが蕾のまま下がっていましたが、1か月半の今日10月20日には2枚目のようにほぼ総て咲くことなく枯れていて、そうでない物も同じような経過を辿るように見えました。3枚目のようにムカゴは相当数ついていました。2個齧ってみると歯ごたえよく割れて、中は白くヤマイモのようなトロミが少しありました。苦味はほとんど感じませんでした。

ムカゴ繁殖だからこれで良いのでしょうけれど、無数に下がるほとんど花の咲かない花序が、この株にとってエネルギーの浪費のように感じられたのは素人の無知ゆえでしょうか。これは雄株で雌株は非常に少ないと聞きますし、花が咲いても虫を誘引する手段も必要も無いのか、花に虫が来る姿を私は一度も見ませんでした。あの小さなキクモかコギクモの花にさえ、私がいた短い時間にハチが来ていましたのに。

最初の画像が9月30日(初見から1か月ほど)の花序の様子、
2枚目と3枚目が今日10月20日の様子です。




お名前
タイトル
画像添付





編集キー ( 記事を編集・削除する際に使用 )
文字色