近畿植物同好会 掲示板
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高知県立牧野植物園と四国カルスト・天狗高原へ 伊吹寛子 投稿日: 2023年10月03日 21:12:43 No.909 【返信】

9月末に講師つきの2泊3日のツアー(参加者13名)で四国に行ってきました。四国内はバス移動で、1日目:高知県立牧野植物園、2日目:四国カルスト・天狗高原、3日目:仁淀川支流にこ渕、伊尾木洞に行きました。

1日目の牧野植物園は、昨秋のちょうどキイジョウロウホトトギスの頃に行っていて私は2度目でした。到着後の半日では広大な植物園の一部しか見られませんでしたが、オカダイコン、コシロネ、ダイサギソウ等の花、サツマスゲ他、数多く見ることができ、実をいっぱいつけて頭上の木々を這いまわるトビカズラには「キケン」の札が下がっていました。果実の表面の棘が刺さると取れず、ととても痛いそうです。

宿泊した土佐市近くの伊野への道中では、去年、南紀で見た丈高いダンチクが海岸沿いに風に揺れていましたし、宿泊地のそばを散策するとイモネノホシアサガオが咲き競い、ショウジョウソウの朱が目を引きました。前日の植物園でもそうでしたが、宿泊地そばでも、見た範囲ではキツネノマゴはシロバナばかりでした。

2日目のカルスト台地の「天狗の森」へのコースは花盛りで、レイジンソウ、ヒナシャジン、シオガマギク、ハガクレツリフネが目を楽しませ、クサボタン、ヒナノウスツボ、ミツバベンケイソウ、トリカブト、マルバタケフキの花々のほか、クロミノニシゴリ、シロモジ、ツリバナ、そしてトチバニンジンなどの果実が見られました。

その後、立ち寄った「カルストテラス」では夕日に輝くススキに混じってヒメヒゴタイの花の可憐な姿が見られ、まんたろうのように空を飛びたい気分でした。

3日目は仁淀川支流にある「にこ渕」に立ち寄りました。濡れると滑りそうな急勾配の階段を降りると滝があり、流れ落ちる水、滝つぼの水の「仁淀ブルー」と呼ばれる緑がかった深い青に魅せられました。

その後、伊尾木洞という海食洞に向かいました。かつての海底が隆起後、打ち付ける波の浸食で形成されたもので、その後、更に起こった地盤の隆起・海面の低下に伴って内陸の洞窟となったそうです。崖に挟まれた流れに沿って遊歩道が400m続いており、シダの宝庫と言われています。ホウビシダの大群落、ちょうど黄色い胞子葉をつけたシロヤマゼンマイ、マツザカシダ、クリハラン、ノコギリシダなどがすぐ近くにありましたが、40種類以上が見られるそうです。また、かつて海底であったことを示す様々な貝の化石も見られるとのことで、モミジツキヒガイという絶滅した大きな二枚貝の化石がついた石が置かれていました。現場の保護をしておられる職員の方は、最近はミドリハカタカラクサの侵入が激しく、手を焼いていると嘆いておられました。

長距離をバスで移動して疲れましたが、楽しい旅でした。どこでも植物を見ると誰もが夢中になるものですから、添乗員は時間のやりくりにハラハラしながらも一生懸命笑顔を作っていました。

写真1:高知県立牧野植物園のダイサギソウ
写真2、3,4:順に天狗の森コースのヒナシャジン、ハガクレツリフネ、トチバニンジン
写真5:カルスト台地のヒメヒゴタイ
写真6:伊尾木洞のシロヤマゼンマイ


仁淀川下流の伊野町で植物を町おこしに役立てている例がありました 藤井俊夫 投稿日: 2023年10月04日 12:29:53 No.912
高知県伊野町の【現代の牧野富太郎】みんなで作る植物誌
https://www.nhk.or.jp/kochi/lreport/article/002/56/
町おこし協力隊で活動している。

●近隣での植物調査報告
佐久間智子・山城沙織・森口弥生・石川愼吾・三宅 尚。2006.高知県いの町成山地区における植物群落の種多様性と植物相。四国自然史科学研究,3.78-85。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sinh/3/0/3_78/_pdf/-char/ja
辻本 穣 投稿日: 2023年10月04日 17:08:01 No.917
伊野町のみんなで作る植物誌
グラウンドファンディングしていたので、微力ながら支援しました。

このような調査ができるだけの知識を得たい、もっとフィールドに出なくては…と、思うばかりです。
伊吹寛子 投稿日: 2023年10月04日 17:20:50 No.918
藤井俊夫先生

伊野町(いの町)についての興味深い情報をありがとうございました。私たちが泊ったのは町の南端でしたが南北に長い町は、ご紹介いただいた資料を拝見しますと、とても植生豊かで、町民を巻き込んだ「現代の牧野富太郎」はじめ、色々の研究がなされているのですね。知りませんでした。ご教示ありがとうございました。ご紹介下さった論文も読ませていただきます。ありがとうございました。


辻本穣様

「みんなで作る植物誌」ご存知で協力されたのですね。町民だけでなく辻本さんはじめ多くの方々を巻き込んで、すばらしい活動ですね。


六甲高山植物園に行きました 相良真佐美 投稿日: 2023年10月03日 18:14:36 No.907 【返信】

9月27日(水)、涼しくなったので親しいメンバーたちと六甲高山植物園に行きました。

●植物園では、阪神タイガースリーグ優勝記念として、「トラキチラン」が展示してありました。
1902年に案内役の神山寅吉が日光の山中で見つけたのを、寅吉にちなんで牧野富太郎が「トラキチラン」と命名しました。

●フジバカマにアサギマダラ数頭が集まっていました。翅に記号が書いてあったので、メンバーに各自のスマホに映っているアザマダラの写真を送ってもらいました。
結局、記号が書いてあったのは、このUTU1499のオスの1個体だけでした。
アサギマダラの記号は一般に通用している慣習で記入していますが、きっちりは決まっていません。
ちなみに、野鳥は記号を刻印された足環をつける鳥類標識(Bird Banding)を環境省が山階鳥類研究所に委託し、公的に管理しています。

"UTU"は長野県の美ヶ原から放たれたことを表します。上昇気流に乗って六甲高山植物園のフジバカマまで、はるばる直線距離で約300kmを飛んできました!
各写真の右下のアルファベットはスマホの写真を送っていただいた方のイニシャルです。ご協力感謝します。

以下ランダムに
●キイジョウロウホトトギスが見頃を迎えました。満開になると休息所の裏の壁面は壮観になります。
●マツムシソウは、松虫が鳴く晩夏から初秋にかけて開花するので名付けられ、咲き誇っていました。
●キレンゲショウマは植物園ではショップアルピコラのデッキの全面に植栽されています。花は終りで少しだけ残っていました。
●キクバヤマボクチ、ツルニンジン、ヤマトリカブト、ホトトギス、アケボノソウ、レイジンソウ、カワミドリなどがありました。


野鳥の足環 相良真佐美 投稿日: 2023年10月04日 13:54:20 No.914
植物の話でなくてすみません。

野鳥の足環について、質問が来ているので「日本野鳥の会」の会員の時の実体験で説明します。

 10年ほど前に伊丹市昆陽池で水鳥の撮影していると、足に金輪と緑のリングを付けたオナガガモが見つかりました。
 詳しい人に尋ねると「画像を山階鳥類研究所に送るように」と教えられ、不鮮明な画像でしたが送りました。
 数日後、回答があり「昨シーズンに、この昆陽池でバンディングされたものが戻ってきた」とのことでした。
 このデータには、放鳥日時、場所、属性がびっしりと記載されていました。
 これでこの個体が今年も同じ場所に戻ってきたと実感しました。
 
山階鳥類研究所は環境省から委託を受けた公的機関で、海外の鳥類研究機関とも連携しています。
日本では、鳥類標識調査員(バンダー)として資格試験を合格者した主にボランティアが活動しています。
 
山階鳥類研究所の「足環など標識のついた鳥を見つけたら」を参照してください ↓
 https://www.yamashina.or.jp/hp/ashiwa/ashiwa_index.html#Anchor-49575
 




マツムシソウの語源について(諸説あり) 藤井俊夫 投稿日: 2023年10月04日 13:06:19 No.913 【返信】

マツムシソウの名前の由来は?、「松虫草」と名付けられた理由について、

①松虫が鳴く頃に咲くことからという説
②花の散った後の姿が松虫鉦(マツムシガネ)という仏具に似ていることが名前の由来とする説
③秋の高原の代表的な草花であることから、秋を告げる「松虫(マツムシ)」になぞらえたことが由来するという説もある
**********************************************************
仏具としての松虫(松虫鉦)
buddhist bell hinduism(ヒンズー教で、似た鐘が使われています)
お坊さんが使う、釣鐘(梵鐘)に似た、手持ちの風鈴のような鐘です。
表面に大仏様の頭の螺髪のような突起が着いていることが多い。
風鈴と同じく、高い澄んだ音が出ることから、昆虫の鈴虫や松虫を連想させたのかも知れません。
●歌舞伎などで使う松虫鉦もあるが、歌舞伎は江戸時代に始まったものなので、演劇用に形や使用方法が変化していると考えます。

マツムシソウの生育するような(近畿地方では高原の)草地で、昆虫のマツムシやズズムシを見たことも、その鳴き声を聞いたこともないような気がします。
近畿地方でマツムシソウが生えている地域は、滋賀、三重、奈良、兵庫のススキ草原です。標高500mから1000mぐらいの地域に限られています。

昆虫のマツムシ、スズムシの名前が出てくるのは、古今和歌集の時代のようです。以下、引用。
※古今(905‐914)秋上・二〇〇「君しのぶ草にやつるるふるさとは松虫のねぞかなしかりける〈よみ人しらず〉」

古都(奈良)周辺で、マツムシソウが見られるのは三重県との県境の曽爾高原ぐらいだと思います。(京都にはマツムシソウは確認されていない)
都の貴族が、当時曽爾高原のススキ草原に行ってマツムシソウの草むらで夜中にマツムシの鳴き声を聞くとは考えにくいと思います。
(近所のススキ原の茂みで十分鑑賞できます)

●以上の理由から、「マツムシソウ」の語源は、お坊さんが使っていた手持ちの鐘「松虫」が由来とする説が有力だと考えます。
インターネットでは、Wikipediaでさえ、複数の説のうち、一部しか採用していないことがあります。
安易な引用には、注意が必要です。
**********************************************************
●そういえば、大阪の四天王寺から住吉大社に行く旧街道の途中に松虫通りというのがあります。名前の由来は定かではない。
もしかしたら、お坊さんがこの近辺で托鉢をしていたなどが、通りの名前に関係があるかもしれません。
(高校時代は、通学に路面電車を利用していた)

●マツムシ、スズムシの鳴き声は40年ぐらい前、和泉市の信太山丘陵に聞きに行った覚えがあります。
近くの聖神社には大阪では珍しいシリブカガシが生えている。
信太の森葛葉神社は、安倍晴明の生誕伝説「葛の葉伝説」があります。

●先月、美ヶ原へミヤマラッキョウを探しに行ったが見つからず。(2023年9月23日から25日)
ニッコウキスゲなどの草原性植物の開花も終わっていた。
連休で朝(9時)から駐車場が満車だった。
①看板
②牛伏山(草原:風衝草地)
③王ケ頭(頂上にホテルと電波塔)この辺りでミヤマラッキョウを探したが、見つからず。
④タカネマツムシソウ
⑤ホソバノヤマハハコ(電波塔の下で)
⑥ついでに松本城(国宝)




スエコザサの線画 相良真佐美 投稿日: 2023年09月30日 16:04:27 No.890 【返信】

(植村さんより)
>最終回では、スエコザサの線画と彩色図がドラマに登場します。しかし、牧野図鑑にスエコザサは載ってなかったように思います。間違っておれば、お許しください。

北隆館の牧野図鑑は、以下の経緯で改訂されています。
(1) 牧野日本植物圖鑑(1940)
(2) 増補版 牧野日本植物圖鑑(1956)
(3) 牧野新日本植物圖鑑(1961)
(4) 改訂増補 牧野新日本植物圖鑑(1989)
(5) 新牧野日本植物圖鑑(2008)

今回は(5)の新牧野日本植物圖鑑(2008)が手持ちであるので調べてみました。
調べると、日本名索引には5056種あるのに、スエコザサは抜けています。アズマサザ属はアズマザサだけです。

平凡社の「日本の野生植物」でも調べました。改訂新版 日本の野生植物の総索引でも抜けています。
本編でもアズマザサ属は「約15種が記録されているが、分類が確定していないので、ここでは代表的な1種のみ記述する」とアズマザサしか載っていません。
旧版の「日本の野生植物 木本Ⅱ」でも、「まだ実態はよくわかっていない」と同じような内容でした。

線画であれば、鈴木貞雄著「日本タケ科植物総目録」(学習研究社 1978)があります。今は販売されていないかも分かりません。
当時はアマチュアでは手も出ない価格だったのですが、横浜国立大学の除籍図書が出て古本屋から、なんとか2万円ぐらいで買えました。
今は科名もタケ科からイネ科タケ亜科になりタケ科は古い呼び方ですが、線画では手持ちの本の中では一番のお薦めです。
スエコザサの線画は、乾燥した押し葉を模写したようで、生葉の形態とはちょっと違います。

手持ちの中で一番お薦めは、小林幹夫著「原色植物分類図鑑 日本のタケ亜科植物」(北隆館 2017)です。アマゾンで買えます。
写真が豊富でスエコザサはこの本で学びました。写真なので生葉が分かります。似たケスエコザサも取り上げられ、違いも説明されています。

手持ちの図鑑ではこんな結論ですが、まだまだ他にいい書物があると思います。アマチュアの道楽なので全部私費というのが辛いです。

神戸の望月さんの「兵庫のタケ亜科植物」は、タイムリーな話題も交え、詳しく勉強になります。
https://u7iktzjaokfd.blog.fc2.com/


神戸の望月 投稿日: 2023年09月30日 22:31:05 No.894
相良真佐美様

初めまして、神戸の望月と申します。
知人に教えて頂き、拝読しました。
拙いブログを引用して下さり、ありがとうございます。

平凡社の図鑑のササの頁はちょっとひどいですね。
新しい分類に従わないことは別に問題ないと思いますが、それが有効な記載なら、ただ単に分からないでは通用しません。
従わない理由を明示する必要があります。

ササの同定では、個々の種名を追及するよりも、属の違いを意識して観察すると楽しみが出来ます。
メダケ属、ヤダケ属、ササ属、スズダケ属、スズザサ属、アズマザサ属の相違点を知って、そのササがどの属のメンバーか考えて観察すると目が肥えてきます。
分類体系が飲み込めてくるようになります。
スエコザサとアズマザサの関係を考えるよりも、スエコザサもアズマザサ属の一員であることを理解することの方がはるかに重要です。

アズマザサは東日本では普通種ですが、西日本では稀です。
関西で手軽に観察できる場所は、神戸市立森林植物園の駐車場の側です。(添付画像あり)
私が作文した名札が立ててあります。
2枚目の画像は、基部付近がざらつき(ササ属の特徴)、それより先が平滑な(メダケ属の特徴)「折衷型」と言われるアズマザサの肩毛です。
3枚目の画像は、葉の付く間隔が広いアズマザサの特徴を写しています。
メダケ属のネザサでも、これくらい広い間隔で葉がついていることがよくあります。
こうした特徴からアズマザサ属はササ属やメダケ属などとの雑種分類群と考えられています。


神戸のアズマザサ 相良真佐美 投稿日: 2023年09月30日 23:27:37 No.895
神戸の望月 様

始めまして、ブログではお世話になっていますが、ご本人からのご返事で感激です。
関西では珍しいアズマザサの場所を教えていただきありがとうございます。

本日アップされた「神戸市兵庫区の牧野植物研究所跡地のスエコザサ」
https://u7iktzjaokfd.blog.fc2.com/blog-entry-608.html

は、興味深いですね。会下山公園にも高知県立牧野植物園から贈られたスエコザサがあったのですね。
一緒に生育しているヤダケに青丸、スエコザサに赤丸をつけていただき、参考になります。

近いうちに、会下山公園と森林植物園のアズマザサも「萩の小径」はよく行くので観察に行きたいと思います。
ありがとうございました。
クロチクの開花 植村 修二 投稿日: 2023年10月01日 18:30:52 No.898
相楽真佐美さま、藤井俊夫さま、神戸の望月さま

 相良さん、藤井さん、私の投稿でいろいろ調べていただき、ありがとうございました。

 神戸の望月さんのHP見せていただきました。

 タケ。ササ類の開花がたくさん公開されてました。今後、ゆっくり勉強させていただきます。

 以下の画像は、私が農芸高校に勤務していた頃、通勤途上、撮影した鉢植えのクロチクの開花(大阪府堺市中区、2020年11月6日撮影)です。


神戸の望月 投稿日: 2023年10月01日 22:13:13 No.899
植村修二様

初めまして望月と申します。
ご丁寧な挨拶を賜りありがとうございます。
クロチクの花の写真もありがとうございます。

相良様

森林植物園のアズマザサ、ヤダケ以外のササ・マップを添付いたします。
ご参照頂ければ幸いです。
多目的広場への階段を上がるときの左側にはササがたくさんあります。
チシマザサとオオシダザサだけ図示しましたが、他にもイブキザサ、スズダケ、カリワシノも生えています。
それら3種は混生していて区別が難しいです。
チシマザサとオオシダザサは名札が立っています。
この場所は去年の冬に草刈りされ、それ以降私は行っていないので、現在どれくらい回復しているか分かっていません。
オオシダザサはスズザサ属の大型のササです。
枝葉の毛の状態がどうこうよりも(この時期たいてい落ちています)スズザサ属の特徴を確認すると少しササに近づけます。
属の特徴は枝葉の毛の有無とは無関係な形質で決定できるからです。
小林先生の図鑑を持っておられるようなので、「移譲的分枝様式」を確かめるのがスズザサ属を知る第一歩です。
移譲的分枝様式が見られるのは、スズザサ属とアズマザサ属だけなので、アズマザサでも確認できます。
事務所の建物の前の花壇にはケオロシマチク(名札あり)があります。
メダケ属の小型のササで、ネザサと同じ形態の肩毛を持っています。
さくら園のトイレの側にはミヤマクマザサがあります。
ササ属アマギザサ節のササです。
稈の下の方の稈鞘の長さが節間の2分の1以下で、節上部が目立ってぼこっと膨れていることがアマギザサ節の最大の特徴です。
メタセコイア並木の側にあるミアケザサ(見明笹)(名札あり)もアマギザサ節のササなので同じ特徴があります。
学習の森にはミアケザサがたくさんあります。
こちらはおそらく自生です。
学習の森のタキザワザサは、おそらく室井綽さんが六甲山で採ってきて植えたものではないかと考えています。
短い階段を上がった所にこじんまりとした群落があります。
名札はあったと思います。
タキザワザサはスズザサ属なので、オオシダザサと同じく移譲的に分枝しています。
学習の森の南側の出入口の前の道を西にしばらく行ったところに、コウベコスズの基準産地があり、今もたくさん生えています。
記載した小泉源一博士が1944年8月3日にその場所に来てタイプ標本を採りました。
そのことについては私のブログの2021年8月22日の記事をご参照下さい。




牧野関連の図書、植物原記載文献の検索、標本検索siteなど 藤井俊夫 投稿日: 2023年10月01日 11:07:31 No.896 【返信】

牧野関連で以下の3冊の書籍が発行されています。

●オリジナル普及版 牧野日本植物圖説集
著者:牧野富太郎
出版社:三四郎書館装丁:単行本(512ページ)
定価:3520円
発売日:2023-08-07
ISBN-10:4991299322
ISBN-13:978-4991299322
本書は、26歳から49歳にかけて牧野富太郎が石版印刷、銅版印刷によって描出した植物画の最高傑作群「194図版」を完全収録します。
本書に収録された「原本」は、『日本植物志圖篇』(78図版)、『新撰日本植物圖説』(100図版)、『大日本植物志』(16図版)から構成されます。
https://allreviews.jp/review/6228
★:藤井注:BMT,JJBに掲載の植物画も、上記図鑑に載せられたものが多数あります。

姉妹書
●新訂 牧野富太郎自叙伝
著者:牧野富太郎
発行:三四郎書館
4-6 縦128mm 横188mm 厚さ14mm 重さ 250g 224ページ 並製
定価 1,350円+税
初版年月日:2023年4月28日
ISBN 978-4-9912993-0-8
ISBN 139784991299308
ISBN 10h4-9912993-0-6
ISBN 104991299306

●オリジナル普及版 牧野日本植物圖鑑(1255p)
牧野富太郎【著】
判型(実寸):210mm × 148mm
発行元:三四郎書館
2023/04/28発売
¥ 4,600(税別)
ISBN 978-4-9912993-1-5
昭和18年に北隆館から刊行された牧野富太郎の『牧野日本植物圖鑑』初版(3刷)の復刻版です。
**********************************************************
植物の原記載、文献情報の検索について

★Y-listで、日本産植物の原記載および関連図鑑の情報が得られます
http://ylist.info/ylist_simple_search.html

スエコザサの場合
学名: Sasaella ramosa (Makino) Makino var. suwekoana (Makino) Sad.Suzuki
和名:  スエコザサ
学名ステイタス: 標準
掲載図鑑とページ番号: (至文堂・日本植物誌)120;
文献情報(原記載文献など): 
 J. J. B. 51: 157 (1976), =植物研究雑誌。51:157p(1976)に記載が載っている
 Index Jap. Bambusac.: 242 & 361, t. 87 (1978), =鈴木(1978)の日本竹科総目録の242,361pと図版87に載っていることを示している
Ill. Jap. Bambusac. rev. ed.: 237 (1996). =鈴木(1996)増補。日本竹科植物総目録の237pに図(Ill.)が載っている。
 basion.: Sasa suwekoana Makino in J. J. B. 5: 7 (1928).=植物研究雑誌。5:7p.(1928) に記載が載っていることを示す。

Type: Miyagi (Rikuzen), Sendai, hills (T.Makino, Nov. 1927 [actually in 1 Dec. 1927], MAK).
科名: APG: Poaceae(イネ科); クロンキスト: Poaceae(イネ科); エングラー: Gramineae(イネ科)
データ編集日: 2018.04.01
**********************************************************
●以上の情報から、各学会誌のバックナンバーおよび国立国会図書館などのsiteから検索する。

植物分類学会(バックナンバー)旧:植物分類地理、APG
https://e-jsps.com/publications/
植物学雑誌(バッナンバー)BMT
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jplantres1887/-char/ja
植物研究雑誌(バックナンバー)JJB
https://www.jjbotany.com/
国会図書館蔵書検索
https://iss.ndl.go.jp/
Cinii Books(国立情報学研究所:大学図書館の書籍検索)
https://ci.nii.ac.jp/books/?l=ja
植物地理分類研究(旧:北陸の植物)
https://kanazawa-u.repo.nii.ac.jp/search?page=1&size=20&sort=-pyear&search_type=0&q=北陸の植物
分類地理との統合後(植物分類学会)植物地理・分類研究
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/chiribunrui/-char/ja/
**********************************************************
●外国など、世界の植物の原記載の情報はIPNI(International Plant Name Index)で検索する
いわずと知れた、Kew Indexの online edit.=POWO(Plant sof the world online)に連動(Kew Garden)
https://www.ipni.org/
または、The Plant List
http://www.theplantlist.org/

外国の古い文献の閲覧site
Biodiversity Heritage Library
https://www.biodiversitylibrary.org/
Internet Archive
https://archive.org/
**********************************************************
都立大、牧野標本館 タイプ標本データベース(画像あり)
http://ameba.i.hosei.ac.jp/BIDP/MakinoCD/makino/html_j/index0.html

日本の自然史情報検索(植物以外も検索できる)
サイエンス・ミュージアム・ネット
https://science-net.kahaku.go.jp/

東大収蔵タイプ標本データベース
http://umdb.um.u-tokyo.ac.jp/DShokubu/herbarium/en_ver2/index.php
科博収蔵タイプ標本データベース
https://type.kahaku.go.jp/TypeDB/
相良真佐美 投稿日: 2023年10月01日 11:31:57 No.897
●オリジナル普及版 牧野日本植物圖説集 (三四郎書館 2023)

 ムジナモの引用で8月3日に投稿しています↓ ご参考までに
  https://rara.jp/kinki55/page773


ヒガンバナがやっと満開です H-matsumoto 投稿日: 2023年09月30日 18:07:40 No.891 【返信】

 今日で9月が終わるというのに、ツクツクボウシはまだ鳴いているしヒガンバナはやっと満開です。
 堺市の区役所の常緑のツツジの植え込みに咲いていたのを発見しました、ちゃんと光合成できるのかな?
 以前和歌山の田舎で、石垣の隙間からヒガンバナが咲いていたのをみたけれどすごい生命力ですね。種ができないのにどこから運ばれてきたのやら。
 うちの近所にはヒガンバナゲリラがいて、新しい街路樹の足元に去年1本ずつ咲いていたのが今年は2本になりました。
 ***10月から”らんまんロス”ですね。***


彼岸花について(史前帰化植物、救荒食料、民間薬、方言など) 藤井俊夫 投稿日: 2023年09月30日 20:49:56 No.892
●前川文夫。1943.史前帰化植物について。植物分類,地理。13:274-279.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunruichiri/13/0/13_KJ00002992577/_pdf/-char/ja

p277の(5)日本では農耕地域にのみ見られる植物
●ヒガンバナが挙げられている。
以下、原文からの抜粋。
「中支での私の見た處では主として楊子江流域の岩壁上に自生して秋の紅葉は美しい。」
日本では、「本種は種子を生じない 。」
「又私の父の談によると明治の中葉に三重縣地方では蜜柑の荷造材料即ち詰草としてヒガンバナの緑葉を用ぴてあつた由である。」
*************************************
●Flora of Chinaにおける、生育地の記載
Shady and moist places on slopes, rocky places along stream banks; near sea level to 1000(--2500) m.
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=200028063

●染色体数:2 n = 22, 32, 33.
中国では、「石蒜」:岩場に生えるラッキョウの意味。
*************************************
●救荒食物として利用されることもある
高知県土佐町のブログ「土佐町物語」から
山峡のおぼろ:彼岸花団子(2018年11月21日)
https://tosacho.com/higanbanadango/
(70年以上も前の出来事を、聞き語りとして記事にしている)
山間部では江戸時代以降の新田開発の恩恵を受けてこなかったことを物語っているのではなかろうか。

土佐町:吉野川の最上流部(早明浦ダムの周囲に位置する)
棚田を作ったとしても、雨が降らなければすぐに飢饉に直面する地域だと考えられます。
************************************
●彼岸花あれこれ 
http://seihotei.la.coocan.jp/photo/higanbana.htm

●ヒガンバナが日本に渡来した時期を論考している。
河島一仁。1999.書評:「ヒガンバナが日本に来た道」有薗正一郎著。海青社(1998)103項。。立命館地理学。11:110-112.
https://www.ritsumei.ac.jp/lt/area/assets/file/research/geo/letter/11/11-1999-kawashima.pdf
有薗正一郎。1998.ヒガンバナが日本に来た道。海青社.1887円。

●ヒガンバナの別名など(熊本国府高等学校のヒガンバナ特集)1000以上の方言があるという。
http://www.kumamotokokufu-h.ed.jp/kumamoto/sizen/higanban.html

●民間薬としての利用(日野製薬)
https://hino-seiyaku.com/blog_crude_drug/flower/10_6.php
鱗茎をすりおろして足の裏に貼って浮腫をとったり、乳腺炎、各種腫れものやいんきん、たむしなどに患部にあてて湿布される。
皮膚病などに効果があるらしい。
H-matsumoto 投稿日: 2023年09月30日 22:08:45 No.893
藤井先生
 情報ありがとうございます。
岸壁上で育つなら石垣の隙間で育って当然ですよね!
すごい生命力。
80代の知人からテグサレバナと昔は呼んでいたと先日聞いたところで、聞いたことがないなあ
と思っていたら、本当に一覧にあってビックリ!1000も方言があるとはすごいです。
 それにしてもヒガンバナの糊で例の気球をつくったとは、、、


TUSのスエコザサの標本画像です。 藤井俊夫 投稿日: 2023年09月30日 15:43:11 No.889 【返信】

以下のsiteにスエコザサの標本画像が載っています
等価基準標本の可能性があるかも?
Syntype(等価基準標本):命名者がholotypeを指定せずに複数の標本を引用した場合、そのすべての標本。

●東北大学:植物標本庫(TUS)のクラウドファンディング●
100年間受け継がれてきた植物標本を次世代へ|東北大学植物標本庫
https://readyfor.jp/projects/Tohoku_Botanical_Gardens

寄付総額(現在)12,469,000円
次の目標額 8,000,000円(第一目標金額 4,000,000円)
達成度:311%
寄付者:598人
残り:40日

科博でもクラウドファンディングをやっていた。
どこも、火の車か?


スエコザサ 相良真佐美 投稿日: 2023年09月29日 11:56:16 No.885 【返信】

NHKの朝ドラ「らんまん」も最終回になりました。
9月18日、練馬区東大泉の牧野記念庭園に行きました。1926年から終の棲家としていた旧自宅跡地を、練馬区が改修し記念庭園として公開されています。

記念庭園は、ドラマのおかげで大盛況でした。展示室や、当時の本物をそのまま使った書斎の再現などは人だかりがしていました。
本物の顕微鏡、胴らん、筆などは特に注目が集まっていました。

入口を入った左手に、牧野富太郎の銅像を取り囲むように妻・寿衛子に感謝して献名したスエコザサが植えられています。

スエコザサは、アズマザサの変種で、葉は洗濯板のように波打ち、葉表に白い長い毛があり、葉の片側のフチが裏側に折れ曲がり、葉の先端部が軽くへこみます。

主に東北地方のもので、近畿地方では、自生していませんが、大阪公立大附属植物園や、京都府立植物園では常設展示しています。

ドラマでは『槙野日本植物図鑑』が完成し寿恵子も間に合って見ることができました。
しかし、史実では、大泉に引越ししたのが1926年、スエコザサ発見が1927年、寿恵子が亡くなったのが1928年でその後スエコザサが発表されました。
残念ながら『牧野日本植物図鑑』は1940年発刊なので、モデルの寿衛子は図鑑を見ていなかったことになります。


スエコザサの原記載文です。 藤井俊夫 投稿日: 2023年09月29日 12:59:44 No.886
Makino,T. 1928. A Contribution to the knowledge of the flora of Japan. J.J.B. 5(2).7p.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/5/2/5_5_2_555/_pdf/-char/ja

●献命したことの理由まで、記載文に書いている(以下、原文から)
I have named this new bamboo in dedication to the late my wife Suwe-ko Makino
(died at theHospiatl of the Imperial UJniversity of Tokyo, February 23,1928),
Who let me always allow to the stud yof Plants by her private aid.

牧野寿衛子が死亡したのは、1928年2月23日
植物研究雑誌の発行は、1928年4月18日

基準標本は、都立大の牧野標本館(MAK)にあるようです。
Type: Miyagi (Rikuzen), Sendai, hills (T.Makino, Nov. 1927 [actually in 1 Dec. 1927], MAK).
1991年に八王子に都立大が移転してすぐ、学芸員試験受験のついでに、視察に行った。
(どっちが、ついでだろう?)
スエコザサの線画と彩色画 植村 修二 投稿日: 2023年09月30日 10:03:38 No.887
相楽真佐美さま、藤井俊夫さま

 このところ、録画で『らんまん』をみてたのですが、今日は久しぶりに放送時間にみました。

 最終回では、スエコザサの線画と彩色図がドラマに登場します。しかし、牧野図鑑にスエコザサは載ってなかったように思います。間違っておれば、お許しください。

 スエコザサのことは、かなり前から名前は知っておりましたが、どんな植物か知ったのは、室井 綽1969『竹・笹の話 よみもの植物記』(北隆館)に載っていた線画を見てからでした(実物はまだみておりません)。

 藤井さんが紹介された原記載にも図がないようなので、この番組のために新たに用意されたものかもしれませんね。

 ササ類の分類は、日本で発表された和名が多すぎ、私には和名を聞いただけで、種なのかそれ以下のランク(変種とか)、あるいは雑種なのか検討がつきません。

 今年の夏、近畿植物同好会の長野観察会でお世話になりました藤田淳一さんに誘われて、富山県立中央植物園で行われた植物勉強会に参加してきました。この会は、司会もいなく、やりたい人が発表するというもの。

 その中で、ササの和名について、とってもユニークな発表がありました。

 ササ類の分類の決め手となる毛の有無を4つの部位で示す命名法でした。「こんなのとても学会では発表できないな!」と私は正直思いました。この命名法でいきますと、コンゴウザサは4つすべての部位(葉の裏、節、葉鞘、稈鞘)にケがあるネザサの仲間なんで、ケケケケネザサとなるらしい。

 この命名法では、スエコザサはケナナナアズマザサ(ナ:毛が無いという意味)となります。これでは、槇野万太郎さん、寿衛子さん、がっかりですよね。

 『らんまん』について、なかなかタイムリーに投稿できなかったです。藤井さんが書いておられましたが、関連する画像が未整理なんで、捜すのが大変なんです。

 これからも、『らんまん』のシーンを思い出しながら、画像を探し投稿したいと思います。
スエコザサの線画などについて:鈴木貞夫。1996.日本タケ科植物総目録。 聚海書林。に載っています 藤井俊夫 投稿日: 2023年09月30日 15:18:03 No.888
スエコザサの線画などについて

NHKのらんまんは、ドラマです。現実とは違うことをわきまえた上で鑑賞すべきです。
図鑑に載っているかどうかを知りたければ、NHKに問い合わせればよいと思います。
または、図鑑の版元である北隆館か?
牧野が描いた図を使用したとは限りません。

以下のsiteに不鮮明だが、鈴木(1996)のスエコザサの線画が掲載されています。
鈴木貞雄。1996.日本タケ科植物総目録。 聚海書林。
http://syokubutsunote.web.fc2.com/HP14/takeakakensakuhyou.html
****************●タケ・ササ類の分類・記載●******************************************
●種の記載については、国際藻類・菌類・植物命名規約(Wikipediaを参照)に詳しく定義されています。
植物画が必要とはどこにも書かれていません。
ラテン語による記載、正式な出版物(印刷物)などの条件が記載されています。基準標本の指定なども。
最近は英語などの言語で、online出版も認めるようになりました。
牧野が記載した当時は、このような厳密な規定はなかったので、無効名や裸名などの学名が多数発表されていました。

●竹、笹の分類について
イネ科(Poaceae)には700属8000種があるとされます。(Wikipediaより)
①Pooideae(イチゴツナギ亜科)、
②Ehrhartoideae(エールハルタ亜科)、
③Bambusoideae(タケ亜科)の3亜科に分類されます。
タケ亜科には90属1400種が所属するという。(Flora of Chinaより)
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=20753
**************●日本のタケ・ササ類の属●********************************************
●タケ亜科の日本の主な属
① Arundinaria Michx.(アズマザサ属: First published in Fl. Bor.-Amer. 1: 73 (1803))
② Bambusa(Schreb.ホウライチク属:First published in Gen. Pl., ed. 8[a]. 1: 236 (1789))
③ Chimonobambusa Makino(カンチク属: First published in Bot. Mag. (Tokyo) 28: 153 (1914))
④ Phyllostachys Torr.(マダケ属: First published in Ann. Lyceum Nat. Hist. New York 3: 404 (1836),)
⑤ Pleioblastus Nakai(メダケ属: First published in J. Arnold Arbor. 6: 145 (1925))
⑥ Pseudosasa Makino ex Nakai(ヤダケ属: First published in J. Arnold Arbor. 6: 150 (1925))
⑦ Sasa Makino ex Nakai(ササ属: First published in Bot. Mag. (Tokyo) 15: 18 (1901))
★Flora of Chinaでは、東アジアに50-70種としている(分布は、中国東南部、朝鮮半島、日本)★
⑧ Sasaella Makino(アズマザサ属: First published in J. Jap. Bot. 6: 15 (1929))
⑨ Sasamorpha Nakai(スズタケ属:First published in J. Fac. Agric. Hokkaido Imp. Univ. 26: 180 (1931))
⑩ Semiarundinaria Makino ex Nakai(ナリヒラダケ属:First published in J. Arnold Arbor. 6: 150 (1925))
⑪ Shibataea Makino ex Nakai(オカメザサ属: First published in J. Jap. Bot. 9: 83 (1933))
⑫ Sinobambusa Makino ex Nakai(トウチク属:First published in J. Arnold Arbor. 6: 152 (1925) )
⑬ Tetragonocalamus Nakai(シホウチク属: First published in J. Jap. Bot. 9: 88 (1933))=synonym of Bambusa
*********●日本のSasa属の分類●*************************************************
●Sasa(ササ属)について
日本固有の植物と考えられた時期もあった。
冬季の多雪環境に適用した(雪に埋もれて冬を越す常緑性を獲得したと考えられている)、遺存固有(endemic)であり、そのような環境で新たに種が生じたとする新固有(neo-endemic)と考えられた。

●日本産の竹・笹類の分類は、牧野富太郎に始まり東大の中井猛之進、京大の小泉源一などが多数の新種を記載しています。
以下のsiteを参照。
ひとはくのタイプ標本 その⑥:2021年3月11日
バンシュウゴキダケのアイソタイプ(副基準標本):ゴキダケ(御器竹:語源はよくわかっていない。竹簾に使われたからか?)
https://www.hitohaku.jp/blog/2021/03/post_2784/
上記siteから引用。
●日本のタケササ類の分類は、日本における植物分類学の父と称される牧野富太郎によってまず属が整備され、中井猛之進東京大学教授(当時)と小泉源一教授(当時)により体系が整いましたが、1930年代から40年代にかけて両者が競うように新種を発表し、膨大な数の分類群が生まれてしまいました。
中井先生の発表された新分類群は約180、小泉先生はなんと380もあるそうです(鈴木1978)。
室井先生の発表された分類群も併せると、1960年代にはササ属Sasaが420種、アズマザサ属Sasaellaが140種、バンシュウゴキダケも含まれるメダケ属Pleioblastus は110種といった具合で、これらを見分けることは至難の業でした。
その700近くあった日本産タケササ類の種を整理したのが、鈴木貞雄氏でした。
鈴木貞雄氏(1996)の著した「日本タケ科植物総目録」は、日本のタケササ類研究の金字塔ともいうべき一冊です。
********●タケ・ササ類の標本●**************************************************
岩手大学農学部教授であった内田も多数の笹類標本を牧野に送り、新種記載をしています。
岩手大学の内田繁太郎教授のもとで学んだ室井綽は、日本竹笹の会・会長を務め、兵庫生物学会の会長も務めていました。

●岩手大学ミュージアム本館:植物標本室
http://www.museum.iwate-u.ac.jp/muzeum_honkan/honkan_herb.html
内田繁太郎(1885~1964 測樹学・森林保護学)とその教え子:室井綽によるタケ、ササの標本が多くあります。
ササ類の基準標本がある。紀要に目録が発表されていたはずです。
以下のsiteにスエコザサの標本写真が載っています。
https://readyfor.jp/projects/Tohoku_Botanical_Gardens

●東北大学のタケ・ササ類標本
広島大の鈴木貞夫が採集研究したタケ・ササ類の標本は、東北大学に収蔵されているようです。
画像からは、岡田要之助:陸前八幡見滝温泉:1927年12月3日採集とあるので、牧野がスエコザサを命名記載した基準標本とほぼ同時に採集された可能性があります。
広大の鈴木貞夫が同定しているが、type指定は行われていない。(1982年8月6日)
この後に、鈴木貞雄。1996.日本タケ科植物総目録。 聚海書林。が出版されています。
★そういえば、2020年3月に東北大で植物分類学会が行われるので、標本を見に行くつもりだったが、新型コロナの流行で大会が中止になったような....

***********●鈴木の「日本タケ科植物総目録」以降●***********************************************
1990年代になって、ようやく竹・笹類の分類が整理されることになりました。

鈴木貞雄。1996.日本タケ科植物総目録。 聚海書林。12800円。絶版。
小林幹夫。2017。原色植物分類図鑑 日本のタケ亜科植物.北隆館。23000円。
 絵解き検索や、分類形質の一覧表が着いているので、わかりやすいが、これで難解なタケ亜科が同定できるわけではない。

加藤雅啓, 海老原淳編。2011.日本の固有植物(国立科学博物館叢書, 11)。東海大学出版会, 3800円。
小林幹夫(宇都宮大名誉教授)が、タケ・ササを分担している。巻末に固有種の分布図が載っている。
開花個体の標本が少ないため、形態的な識別点が得られにくく、茎や葉の毛の状態などで識別せざるを得ません。
地域的なまとまりを根拠に固有種としているようです。

最近はDNAを使った識別も行われているようですが、形態的特徴が少ない、識別形質が限定されるなど。いかんせん、元サンプルの同定が容易ではないこと、種内変異が不明、集団間変異、集団内変異、個体変異などの基本的な検討さえできない状態です。
基準標本産地で、サンプルを採集するとしても、本当にその種なのかという疑問が常に付きまといます。
標本の採集時期によって、同一個体で形態形質(毛)の状態がどのように変わるのかの検討から始めないと以下ません。
季節や、栄養状態、環境条件(生育地の土壌、日照など)、で、形態形質が変わるのか、移植実験なども必要かもしれません。

昼から2-3時間かかったか?


ホンゴウソウ、またはウエマツソウか? 藤井俊夫 投稿日: 2023年09月28日 12:54:25 No.882 【返信】

ホンゴウソウ、またはウエマツソウか?

ホンゴウソウと思います。
●ホンゴウソウとウエマツソウの区別点
雄蕊に葯隔附属突起があるのが、ホンゴウソウ属。
雄蕊に葯核附属突起がないのが、ウエマツソウ属です。

●阿波の野草散歩より
ホンゴウソウ・ウエマツソウ
https://yasousanpo.sakuraweb.com/menu/ha/hongou.html
雄花の雄蕊基部の白く丸い部分が葯隔附属突起です。
雄花、雌花の花被片の幅も違います。
★掲示板の写真では、雄花が着いていないか蕾の状態なので判断できませんが、各県版のRDBなどの分布情報から、ホンゴウソウと考えます。
**********************************************************
①ホンゴウソウ:三重県の本郷村で採集されたことによる。四日市市楠町本郷の樹林で120年前に発見された。Makino(1902: B.M.T. 16:211)
現在は、Sciaphila nana Blume(1851)ののsynonymとされる。
②ウエマツソウ:採集者の名前にちなんでいる。植松栄次郎、時久芳馬、両氏によって高知県で発見された。 Makino(1905: B.M.T. 19:140)
 現在は、Sciaphila secundiflora Thwaites ex Benth.(1855)のsynonymとされる。

●Ohashi,H., Kato,H. Kobayashi,S., and Murata,J. 2008. A revision of Triuridaceae. of Japan. J.Jpn.Bot. 83:20-35.
  in English and Japanese summary.(各種の標本情報がある)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/83/1/83_83_1_10022/_pdf/-char/ja

●ホンゴウソウ(日本のレッドデータ検索システム:絶滅危惧II類)
http://jpnrdb.com/search.php?mode=map&q=06050085184
●ウエマツソウ(日本のレッドデータ検索システム:奈良で記録がない?)
http://jpnrdb.com/search.php?mode=map&q=06050085189
●YAMAP:金剛山688~91回digest・7月下旬は+α満載(2022.07.29(金):金剛山系でのホンゴウソウの写真。
https://yamap.com/activities/18688879
********************●以下、参考資料●**************************************
●春日山原始林の「平成 25 年度(2013)冬季 植物目録」にも、ホンゴウソウが載っています。(p46)
https://www.pref.nara.jp/secure/119376/06siryou01-3.pdf
●第Ⅲ章.春日山原始林の保全に、ホンゴウソウの写真がある。(p73)
https://www.pref.nara.jp/secure/192657/31.pdf
●大切にしたい奈良県の野生動植物2016 改訂版(p48:ホンゴウソウ:絶滅寸前種)
https://www.pref.nara.jp/secure/178458/redlist3.pdf
●レッドデータブック近畿研究会(編)2001.改訂・近畿地方の保護上重要な植物。(財)枚岡環境科学研究所発行(神奈川)。2500円。絶版。
古本屋で探してください。
巻末の各府県における分布表では、ホンゴウソウは奈良県北部に分布。ウエマツソウは奈良県に分布しないとしている。
(三田盆地の水生植物や、春日山原始林の記事を分担していたっけ。)

上記、近畿RDB(2001)の、前身(1995年版)の抜粋が以下のsiteに掲載されています。
「近畿地方における保護上重要な植物-レッドデータブック近畿-」(1995)関西自然保護機構発行:(2000円?、これも、絶版です。)
https://www.omnh.jp/fujii/RDB.html

追伸
 大和葛城山は、2015年以来、もう8年も経っていた。
去年(2022年10月9日)カツラギグミ、ノコギリソウを見に行ったが、見当たらず。ススキ草原が草刈りされていた。
今年(2013年9月9日)に行くと、大阪側にノコギリソウが数株点在していた。カツラギグミはロープウェー駅から山頂までの遊歩道沿いにあったと思うが、見つからず。
●セイヨウノコギリソウとの違い(葉の分裂が違う:セイヨウは2回羽状深裂。在来ノコギリは1回羽状深裂)
武田薬品工業:京都薬用植物園のsite
https://www.takeda.co.jp/kyoto/area/plantno251.html
添付写真は、葛城山頂上から南のススキ原で、ノコギリソウ。(以前にも、登山道通行止めのお知らせで載せたような。。。)


辻本 穣 投稿日: 2023年09月28日 19:20:37 No.884
藤井様

大変詳しく説明していただき、また資料を添付していただきありがとうございます。
「レッドデータブック近畿研究会(編)2001.改訂・近畿地方の保護上重要な植物」
↑が、なかなか見つからず、在庫切れなどが多いです。引き続き探してみます。

ホンゴウソウにウエマツソウ、今後、這いつくばって探す自分の姿が想像できます。


イチョウの受粉機構(精子が現れる時期は、いつ頃か?)、平瀬の論文 藤井俊夫 投稿日: 2023年09月28日 16:17:49 No.883 【返信】

イチョウの受粉機構(精子が現れる時期は、いつ頃か?)

●日本植物生理学会
HOMEみんなのひろば:Q&A: イチョウの受精について
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=5257&key=&target=
質問者: 一般 sonoko
登録番号5257 登録日:2021-10-22

花粉は受粉後、すぐ受精に与るのではなくそこ(花粉室)で1週間ほど待機してから花粉管が伸び始めます。
最終的に精子が放出されて受精が起きるのは受粉後数ヶ月経ってからです。
(●藤井注:受粉後、受精までのブランクがある。受精する時期に初めて精子が現れることになります)
 花粉の代わりに精子が空中を飛んでくるわけではない。
(シダの前葉体と同じで、精子の移動には水が必須です)

①花粉が雌しべに着くと、雌蕊先端に分泌される受粉滴によって、内部に吸い込まれる
 (裸子植物なので、雌蕊というには問題があるが。。。:珠孔と呼ぶべきか?)
②雌しべ内部の部屋で花粉が1週間ほど待機している
③1週間後から花粉管が伸び始める
④受粉後数カ月たってから、精子が花粉管を移動していく
⑤花粉管から外部に精子が出たときに初めて「精子」が観察できる
(受粉後、数週間から数か月経って初めて観察できます)

●イチョウの受粉機構についての論文(英文)。
受粉時の模式図(Fig.12)と顕微鏡写真(花粉管の成長から受粉時まで)が載っています。
Nakao,Y., Kawase,K., Shinozaki,S., Ogata,T., and Horiuchi,S. 2001.
The Growth of Pollen and Female Reproductive Organs of Ginkgo between Pollination and Fertilization. 
J.Jpn.Soc. Hort.Sci.70(1):21-27.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjshs1925/70/1/70_1_21/_pdf/-char/ja

***************************●イチョウの精子発見に関する文献です●***************************
●ホーム > Journal of Plant Research > イチョウ精子発見者平瀬作五郎:その業績と周辺
https://bsj.or.jp/jpn/JPR/digital/icho2.php

●ホーム > Journal of Plant Research > イチョウの精子の発見
https://bsj.or.jp/jpn/JPR/digital/icho1.php

●精子発見とその意義(東大総合研究博物館)
http://umdb.um.u-tokyo.ac.jp/DPastExh/Publish_db/1996Koishikawa300/03/0300.html

●書籍
長田敏行。2014.イチョウの自然史と文化史。裳華房、2400円

上記書籍の記述から
「花粉管は胚珠組織の中に根のような足を延ばし、養分の供給を受けて著しい形態的変化を遂げる。
花粉の飛散からおよそ3カ月後、精子を放出し、精子は泳いで卵細胞に到達し、受精が起こる」
9月の初めごろに、受精が起こる。(p16の図1-6.の説明より)。

藤井注:9月頃に未熟種子が落ちていることがある(受粉できなかったからか?)
9月以前には、種子の成長は見られないが、このころから急激に成長を始めるように感じます。
受粉後に急激に成長が始まるのか?

*********●平瀬の論文●**************************************
●平瀬作五郎。1896.いてふノ精虫ニ就テ。植物学雑誌。10(116):325-328.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jplantres1887/10/116/10_116_325/_pdf/-char/ja
現代語訳
https://www.fukui-educate.jp/museum/files/uploads/1896年「いてふノ精虫ニ就テ」%20(現代文).pdf

●平瀬のイチョウ精子発見の論文
Hirase,S. 1895. Etudes sur la Fecondation et l'Embryogenie du Ginkgo Biloba (1).
The journal of the College of Science, Imperial University, Japan = 帝國大學紀要. 理科, 8, p. 307-322, 1895
https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/search?page=1&size=20&sort=-createdate&search_type=0&q= Ginkgo
顕微鏡で観察した、精緻な図が描かれている。

●平瀬のイチョウ胚生長の論文
Hirase,S. 1898. Etudes sur la Fecondation et l'Embryogenie du Ginkgo biloba. Second memoire.
The journal of the College of Science, Imperial University of Tokyo, Japan = 東京帝國大學紀要. 理科, 12, 2, p. 103-149, 1898-07-20.
https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/search?page=1&size=20&sort=-createdate&search_type=0&q= Ginkgo

★東京大学:学術機関リポジトリ(site)
https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/


ダウンロード172イチョウ精子:jcs803001 ( .pdf / 1.7MB )
ダウンロード172イチョウ胚発生:jcs012002 ( .pdf / 2.5MB )


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