いつか彼は言っていた。「心を読む妖怪『サトリ』になりたい」と。 その時は、彼は相手の動きを読み最適解を取り続けるのを理想としているという事だと思っていた。 だが、私の予想は甘かったと言わざるを得ない。 彼はサトリになった。いや、サトリを超えたのだ。 「待たせたの『叔父上』。さあ、始めようぞ」 そう言い、ユリウス様に向かうトワイス快王を私は止める事が出来なかった。私だけではない。オスカー将軍も、チカーロ中佐も、鋼鉄の赤ん坊も、セイザン先生も、あのアクート少佐ですら二人の戦いに割って入ろうとしない。 ユリウス派に属する人間は皆一度は考えた事がある。 もし、ヒルデ様が十年早く生まれていたらアムステラの運命も自身の選択も違うものになっていただろうと。 そう、ユリウス派は想像してきた。十年後のヒルデ様とユリウス様が戦ったらどちらが強いのか?だが、それは実現しない正真正銘のドリームマッチだ。決して見る事は叶わぬ夢。故に憧れる。私達は口には出さねど十年後のヒルデ様を常日頃イメージしていた。 その夢が今現実となってしまった。 トワイス快王が最後の命を燃やし演ずるのは、間違いなくユリウス派の怖れ憧れた十年後のヒルデ様だった。これは最早単なる快王同士の戦いではない。ユリウス様がアムステラの未来を担うに相応しいかを見届ける場となってしまった。 まずいな。ユリウス様が負ける可能性が生じたのもそうだが、私が平静でいられなくなっている。目の前の戦いを気にしながらカメジロウを止めなければならない。 そう、ユリウス様から指揮を引き継いだオスカー将軍が「影長君、そこのカメジロウ完全フリーになっちゃってるんで、ユリウス様がアレ倒すまでの間よろしく。ソ理ア将軍が居たなら彼らに任せたのですが、今ここに居ないのですからねえ」と押し付けてきたのだ。 私がセンゴクの頂点カメジロウ王を止める? ハッハッハ、仮にコンディション万全でもできる訳ないわ! カメジロウだぞ?ユリウス様と同格とか言われるんだぞ!まあ、ユリウス様が切り札使えばユリウス様が勝つと思うけど! ユリウス様は最低一つは切り札を隠しているだろうからな。その切り札が何かは知らんが。 などと余計な事を考えている場合ではない!ユリウス様とヒルデ様の戦いが気になっている状況でカメジロウから生き延びるとか、いや、あれはヒルデ様じゃなくヒルデトワイスとでも呼ぶべき存在で…、 「侵略すること火の如く」 ゴォォォォォ! あ、何か巨大な火球的な必殺技がこっち来た。オイオイオイ死ぬわ私。 「どけよオッサン!」 ズガァァァン! 突如何者かが死を覚悟した私を突き飛ばし、火球を相殺した。 「なに棒立ちしてんだオッサン!お前だけじゃねえ。指揮がヒゲに代わってからイオもアシェルもおかしくなりやがった!いつも俺様に真面目に戦えって言っていた癖にアイツらこの大一番で何してんだコノヤロウ!」 私を助けたのはオスカー将軍の部下ウドランだった。 だか、様子がおかしい。いや、彼はいつも通りなのだが、この状況でいつも通りなのがおかしい。 「ウドラン君だったか?君は、この状況で何ともないのか?」 「俺様の頭は特別製なんだよ。地球のハッカーなんかにはやられねえ」 ウドランは勘違いしていた。彼は味方の不調がドリス・ミラーのせいだと考えていた。目の前で繰り広げられているユリウス様とヒルデトワイスとの戦いには全く関心を持っていなかった。 そうか、彼は今まで十年後のヒルデ様をイメージした事がないのか。その無知無学無関心鈍感はユリウス派としてどうかと思うが、今は何と頼りになる事か。 「ありがとうウドラン君。私はもう大丈夫だから、他の仲間にも助けに行ってやって欲しい」 「テメエに言われなくても、俺様が情けねえ奴らの目を覚ましてやるよ。じゃあな、後は自力で何とかしろよオッサン」 彼は裸の王様に出てくる「王様は裸だ」という子供そのものだ。私がそうであった様に、彼が語りかければ皆もある程度は立ち直れるだろう。 さて、目の前の相手に出来る限り粘ってみるか。 【同時刻、ユリウス派別働隊】 「…」 「どしたっすか将軍?やっぱユリウス様と共に戦いたかった?」 出撃前、考え事をしているソ理アに少女が声を掛ける。口は悪いか、これでもこの作戦でソ理アの指揮下に配属されたロイヤルナイツの一人である。 「心配はいらん。この任務は俺自身が望んだ事。一切の油断も遠慮もなく仕事を遂行するんだワン。お前らこそ大丈夫なのか?」 「んー、まー、本星で肩身狭い思いしてる主人の為、点数稼いでアピールしますよ」 現在ソ理アは選び抜かれた近衛兵らと共に敵の追跡をしていた。 ユリウスが地球に降り、ユリウス派が本格的に動き出したその時に出撃命令に反し逃走した部隊。 その裏切り者を討つのがソ理アに与えられた任務である。 「逃亡者の数はこちらと同じぐらいでしたっけ?」 「ウム。こちら側が俺を入れて11人。逃亡部隊が全員生存しているなら数の上では五分だろう」 「機体性能と補給面はこちらが、チームワークでは向こうが上ってとこっスね」 「そうだ。だからこの戦いでは敵を分断し、できる限り一対一の状況を作っていく事になる」 ソ理アが作戦について再確認していると、探索を担当していた男から通信が入った。 「ソ理ア将軍、敵を射程距離に捉えました。これより俺達の特殊武装で分断します」 「よし、許可する」 暫くすると、敵部隊が四方八方に散っていく。 分断作戦は見事成功した。 「青ハゲの魔剣と中二の電磁波と変態の溶解液、一度に喰らったらそりゃこうなるっすねー。えっぐいわ」 「よし、それでは出撃せよ!奴ら裏切り者がカラクリオーチームと合流する前に倒すのだ!」 ソ理アは危機感を抱いていた。カラクリオーチームとの戦いの際、トワイスは二刀の片方を失っていた。もし、その剣がカラクリオーチームの手にあり、なおかつトワイスがもう片方の剣を手にユリウスと戦ったならどうなる? スターシルバーの特性、トワイスに勝利したという地球の少年、ユリウスが切り札を出さざるを得ない状況、逃亡者の助言。全てが重なってしまった時、ユリウス派の勝利は確実なものでは無くなる。 それを防ぐ為、そして逃亡者の真意を聞くためにソ理アはこの任務に志願したのだ。 「何故裏切った…オーデッド!」 目の前に迫った逃亡者に向かってソ理アは叫んだ。 |
|
フェミリア「はい、という訳でぼくのかんがえた超高難度ステージ『逃亡者と追跡者』の内容はこちら!」 【味方】オーデッド隊 【敵】カスタムロイヤルナイツ✕11(ソ理ア+4姉妹+6魔人) 【味方増援】??? 【勝利条件】敵の全滅、あるいはオーデッドが一定ターン生存 【敗北条件】オーデッドの撃墜。 【特記事項】出撃後味方移動不可。出撃位置の選択は可能。 フェミリア「大体こんな感じね!ユリウス派を裏切ったオーデッドがユリウス攻略のヒントをシン君に伝えに行こうとして追手が来たから倒すのよ!」 アナンド「ホント、何でオーデッド裏切ったし!」 【作者より】 終盤ユリウス派を離脱しそうな可能性があるキャラとそれを追うキャラの戦いを考え、この話ではオーデッドがその役割になりました。主な理由は以下。 ・まず候補に挙がったのがユリウス派の闇を拒絶しそうなオーデッド、強化人間の扱いで反発した事のあるリノア、ユリウスを危険視している影長、セイザンとルルミーの間で微妙な立ち位置になりそうなスヴァ、家族や仲間の為に自分の生き方を決めているエド。 ・ウサ娘ルートの続きで行く事にしたので、トワイスの友人かつ騎士道精神のあるキャラが適任だった。 ・追跡者ロイヤルナイツいっぱいという高難度ステージを思いついたのでリノアは敵側で使う。 ・かげちょー、すまない。ヒルデトワイスの解説役にお前必要なんや…。 ・で、最終的にソ理アがネームドロイヤルナイツ率いたらオーデッド隊と人数差が丁度よくなったのでこれでいく。 アナンド「なるほどなー。それで、この特記事項ってなんすか?」 フェミリア「ステージ開始前のストーリーにもあったでしょ。オーデッド隊は分断されて一対一を余儀なくされているの。そして、そのマッチングはプレイヤーの皆さんが出撃位置を調整して決めるのよ」 ポチポチ(アナンド、プレイ中) アナンド「話の流れではソ理アとオーデッドが戦う流れだったけど、出撃位置を入れ替えたら他の組み合わせにも出来るのか」 フェミリア「その通り!そして、組み合わせ次第で有利になったり不利になったり、特定の組み合わせでは味方の増援が来てくれたり、問答無用で仲間が死んだりするのよ!」 アナンド「うぎゃあ!試しに○○と○○を戦わせたら、会話イベントだけして死んだ!」 フェミリア「全員生存パターン目指してがんばれ♡がんばれ♡」 アナンド「ところで、増援て誰が来るんすか?フェミリアさんも増援で来たりするの?」 フェミリア「ウサ娘でも言ったけど、私はこの時パイロットじゃなく、パイロットが出撃できる様に活動中だからナイナイ(しゅしゅしゅ)。増援で来るのはオーデッド隊かソ理ア隊に関するキャラよ」 アナンド「よーし、やったるぜー!!」 フェミリア「今回の話はここまで。まったねー」 |
スゲェ…!ウサ娘ルートに続きがあったのにも驚いたけれど、 オーデッド及びオーデッド隊がこんな重要な役目を!! 更には追跡者がソ理ア!?因縁的にすっごく大きな関係じゃないですかー!!? しかも続く雰囲気だし!!遅々として進まず、ようやっと半分位書けた、 黒の伝説re:writeエピローグ2をもたもたしている間に、 ディ・モールト大きなストーリーが爆誕してしまったようだぜ!! それにしても、ビッグネームが居並ぶユリウス様vsトワイス快王凄いなあ…!! そんな中、ウドランだけが横槍を入れると言うのも凄い!! フィールさんのキャラ観察力には脱帽するばかりですわ~ッ!! |