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カラクリオー外伝 黒豹と桃鶴 ( No.218 )
日時: 2023年05月27日 05:05
名前: テヌグイ [ 返信 ]
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一機の斥候操兵が地を駆ける

獣を模した四ツ足の安定感

搭乗者である豹獣人の夜目の効き

この2つは夜間での斥候をも容易にさせている

オーデット隊所属のゾラは更に

猫科獣人特有の高い聴力により

動くソナーと言っても過言では無い索敵能力を発揮する

粗方の索敵を終え

ふと天を仰ぎ目を遠くにやり一息つく

いくら索敵に長けるとはいえ

敵地での斥候は神経を削る作業だ

視線を元に戻すと

少し離れた距離に白い枯れ木が目に入った

いや、枯れ木では無い

つい今しがた前までそこには何も無かった

音も無く現れたのだ

細身の操兵が…

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

臨戦体制に入り前傾姿勢を取ると

枯れ木の操兵も構えを取った

腰の刀に手を起き居合の構え

しかしゾラの聴力を持ってしても

動作音が聞き取れない

聞こえるのは己が操兵の駆動音と

風に揺らされる草木のさざなりだけだ

全く音を発しない操兵

そんなモノは2つしか知らない

1つはアムステラに帰順したセンゴク人

ジングウの『静刀 梟翼(せいとう きょうよく)』

いや今はアムステラの技術で改修した

『梟玉(きょうぎょく)』だったか

しかしコレは漆黒と紫の隠密強襲機だ

そしてもう1つの心当たり

極限まで装甲を減らし
脆弱さと引き換えに得た速度

極限まで摩擦と振動を消し
繊細さと引き換えに得た精密さ

死装束が如き純白の操兵

『寂刀 鶴首(じゃくとう つるくび)』

その乗者こそ…

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「‥‥姉御…?!」

ゾラが声を漏らすと枯れ木の操兵が答える

「ふふ、そう呼ばれるのはいつぶりでしょうね」

「い、いえ、昔の癖でつい…センゴク七本槍ヒレン殿」

センゴク七本槍とは

元々はセンゴク星の遥か古に存在した
七人の英雄英傑達の総称であったが
それを近年カメジロウ・タケダリンクの
「在野のモノノフにも秀で抜きん出る者あれば
将兵として迎え入れる」との言により
特例的な親衛隊の名称兼役職として
復活させたモノである
客将扱いで昇進は無いが
少佐相当の待遇が約束されている

したがって大尉であるゾラより階級が上なのである

「相変わらず律儀ですね、姉御で構いませんよ」
「同じ釜の飯を食った仲では無いですか」

そして彼女はセンゴク時代の姉弟子とも言える存在なのだ
というのもゾラの拳の師とヒレンの剣の師は昵懇(じっこん)の仲であり度々両流派交えた試合と修練を行っていたのである

「ハハハ…」

ゾラは少し困ったように笑う
姉御の呼び名の通り自分より年長でもある彼女には年少の頃よりどうにも頭が上がらない

「壮健何よりです」
「ですがこの辺境で同窓が偶然の再会…」
「と言うには余りに出来過ぎでしょう」

何より七本槍程の実力者が地球に降り
オーデット隊と合流などという報告は受けていない

「察しも良い」
「ですが、大それた用事では無いのですよ」
「少し聞きたい事があるだけです」

あくまで穏やかな態度のヒレンだが
ゾラは万に一の事態に備え身構える
すなわちセンゴク勢力によるオーデット暗殺である
同盟関係にあるセンゴク、アムステラではあるが
不穏な動きをする派閥勢力が無いわけでは無い
加えて夜陰に乗じて接触する理由…
最悪を想定しても致し方ない

もし戦闘になった場合
分が悪いのは己であるとゾラは推察する
機先を制するゾラの豹拳と
後の先を旨とするヒレンの居合剣
正面で立ち合ってしまっている現在の相性は
最悪である

「弟御に聞かれはいかがです…?」

真意を測りかねるゾラは話を長引かせ探りを入れる
ちなみに弟とはジングウの事である

「………」

しばしの沈黙の後…

「…あの愚弟(おとこ)は虫が好きませんっ」

少し拗ねたような物言いにゾラは思わず昔を思い出しクスッと笑い息をこぼしてしまった
姉弟でありながら犬猿の仲
正々堂々を好む情熱家姉
効率厨で冷血漢の弟
二人の姉弟喧嘩が合同練習の風物詩であった
共に切磋琢磨した情景がフッとよぎり
同時に緊張の糸もゆるんでしまった

「い、いや失礼」
謝りながらもコクピットの中では笑い口を手で押さえている
「話を聞く前に私からも質問させて貰います」

「無論、ここ(地球)では貴方が先達です構いませんよ」

「何故地球に?」
「センゴクの命ですか?それともアムステラ関係ですか?」

「う、うーーーーーん、なんと言いますか」
濁すヒレンだが言葉を選んでいる様子はない
むしろ本気で悩んでいる
その証拠に彼女の操兵―おそらく乗者の動きを
トレースするタイプなのであろう―も
刀から手を離し腕を組み首を傾げている
「そのどちらでもなく」
「しかし強いて言えばセンゴク側とも取れる…」
「まあ何と言えば良いのか」
「端的に言えば成り行きで地球に来て」
「今は武者修行の行脚中といった塩梅なのですが…」

「…」

「い、いや分かりますよ!」
「納得しかねるのは!」

確かに納得しかねる内容である
成り行きで戦争真っ只中の辺境惑星まで
遠路はるばる誰の命令でもなく来て
ついでに武者修行でもしようなどと
そんな話があるだろうか
あまりにも荒唐無稽だ
ただし1つだけゾラに解かる事がある

この姉御(ヒト)は嘘をつかない

「姉御がそう言うのであればそうなのでしょう」

ゾラがヒレンを信用したという事もあるが
曖昧な状況であるならば詳しく聞いてしまえば
場合によっては敵対あるいは
捕縛しなければならない可能性もある
それはアムステラ軍人ゾラにとっては義務でも
センゴク星人ゾラにとっては苦渋の選択だ
オーデット隊に用が無いというのであれば
詳しく聞くのはよそうという判断である

「…た、多分納得はしてないでしょうが」
「話が早くて助かります」
「では私も質問しても?」
今度はヒレンが問う

「勿論です」

「この星の剣の王」
「願わくば立合いたいと思っています」

「ッッッ!」

「居場所を知りませんか?」

剣の王とは剣王機の事でまず間違いない
ある程度の情報もある
だがそれはアムステラの軍事情報である
それを所在の分からない者に
おいそれと話すことは出来ない
出来ないが幼友達の義理もある
出来ることなら話したい
だが…

「フフッ、やはり律儀ですね」
ゾラの逡巡をヒレンは察した
ただ教えられないと言えば済むのに
こうも苦悩してしまう難儀な性格
非情そうな強面に似合わない人情家
合い変わらぬ弟弟子の姿にほだされ
思い出話でもして立ち去るのも悪くないか
そういう思いもよぎったが

「今、風はどちらに吹いていますか」

「!」

彼女もまた引き下がれなかった
風向きを聞く、幼少時代に使った暗号である
修練場を抜け出し街に出る時
森の秘密基地に集合する時等々
修練場を中心にそれぞれの方角を言うだけの単純なものだ
同時にただ風向きを言うだけなら
一応の言い訳も立つだろうという算段である

「東…です」

「感謝します」

短いが想いの籠もった言葉だった

宵闇に向かい純白の操兵が東へ歩みだす

四つ脚の操兵は星を見上げ見送った

ただ一言

「御武運を…」





補足

ヒレン
フラミンゴの獣人
居合剣術を得意とする
歳はゾラの3つ上

ジングウ
ヒレンの弟
鳥獣人
暗器術が得意
元七本鎗
彼が抜けたお陰で七本槍・四の槍は欠番である
現在はアムステラ所属ユリウス派

ゾラの喋り方が違うかもしれませんが多目にみてください!


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Re: カラクリオー外伝 黒豹と桃鶴 ( No.221 )
日時: 2023年05月27日 11:48
名前: REO=カジワラ [ 返信 ]
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センゴク七本槍キタァー!!
前回の巨刀象牙のギンゴから一気に2人ですねぃ~♪
ヒレンと欠番の4のジングウか…ッ!!
ジングウはアムステラのキャラと機体の紹介にも、
載っている人ですね。その関係者が出るとは意外だったし、
ジングウの背景が明かされたと言うのも面白かったです!!

まぁ今回のメインはヒレンですね。
フラミンゴの獣人と言う他に見ない個性だけでも、
インパクトが強いのに、正々堂々を好む情熱家と言うのが
ディ・モールト熱くて良いですね~!!
七本槍の名に恥じぬ傑物だ…ッ!!

ゾラのヒレンの事を知りつつも、
警戒して話さねばならないとするトコロも良かったです!
軍人としてそうせねばならないだろうし、例え旧知で
あっても、自分の役割を果たしつつ、ヒレンに便宜を
はかるトコロが、ゾラらしいなと思いました♪


Re: カラクリオー外伝 黒豹と桃鶴 ( No.222 )
日時: 2023年05月27日 22:46
名前: 春休戦 [ 返信 ]
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七本槍の3本が判明!でも一本は欠番扱いなのかー。(汗)
基本「〇刀 ●●」て呼び名なんですね。(「刀語」に近い雰囲気がGOOD。(^^)
仮に暴牙堂でやるなら「飛刀 鬼猿」って感じになるかしらん?(w

しかしギンゴ共々、ヒレン姐さんにも方向音痴疑惑が?(マテ)


追記:そういやジングゥさんといえば、萌えトー第一試合最終戦の審判にお借りした事もあったなぁ。(笑)


Re: カラクリオー外伝 黒豹と桃鶴 ( No.223 )
日時: 2023年05月28日 01:54
名前: テヌグイ [ 返信 ]
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カジワラさん感想ありがとうございます!
BBS保守の話を聞いて
半年近くも誰も書いてない何て馬鹿なっこの前書いてたじゃないかっと思って調べたら、いやーギンゴ出してから一年近くたっててビビりましたよ

センゴク七本槍自体は5年くらい前に薄ぼんやり考えてて4は欠番でジングゥという設定と
トップは過去にセンゴク四天王というまた違う称号を持っていた人物群の最後の1人(他の人達が全員死んだわけじゃないよ)
という事だけプロットがあってアイディアが浮かぶまでほったらかしにしてたんですが
最近のカジワラさんと理さんの創作活動に触発されて
暇な時に脳内設定埋めていたのです

熱くて良い、ゾラらしい、ありがとうございます!
プロット段階では合いの手役に
ステイシーさん入れようと思ったり
チョット戦う流れだったり
もうちょい心理描写入れたりしてたんですが
この二人存外爽やか!獣の癖に!(失礼)
文字数減らして描写出来るのか不安でしたが良かった!


Re: カラクリオー外伝 黒豹と桃鶴 ( No.224 )
日時: 2023年05月28日 02:25
名前: テヌグイ [ 返信 ]
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春休戦さん感想ありがとうございます!
そう欠番です!そして1番最初に思いついた設定でもあります!
7人も居たら俺には扱いきれない4は縁起悪いしってね!
正に刀語からパク……インスピレーションを受けて来てます、があれ程気の利いたネーミングは出来ないのでシンプルに行ってます
刀や操兵の特徴と乗者の特徴というか動物の部位をくっつけてるだけ!
ココだけの話トップは蛮刀虎ノ尾です
そして又々正に!次は飛刀なんちゃらで行くかぁ!?とか考えてました!
そして猿のキャラも名前だけ出そうかと思ってたので
すげぇな春休戦さん…預言者か…?!

彼らがまるっきり剣王の位置を掴んで無いのは話入れようと思ってるんですが今回はゾラが真面目過ぎて入れる余地が無かった!

その節はボヤっと設定の定まっていないキャラを使っていただき感謝!


Re: カラクリオー外伝 黒豹と桃鶴 ( No.225 )
日時: 2023年06月03日 22:52
名前: フィール [ 返信 ]
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ヒャア新作だ!
ゾラ「なんだか嫌な予感がするのう」
シン「なんだか嫌な予感がするのう」

隊長本人がソ理アと、部下がそれぞれ裏社会、過去の危険な戦場、アクート隊等に関係があり、物語が進めば否応なく何らかの騒動に関わるだろうオーデッド隊ですが、センゴク関係でも巻き込まれそう、いや、既に巻き込まれつつあるのか?

これまではダードルに次いで裏表の無い純粋な戦闘メンバーのイメージがあったゾラですが、センゴク方面の厄ネタを察知できるかは彼のこれからの活躍にかかってきそつですね。


Re: カラクリオー外伝 黒豹と桃鶴 ( No.226 )
日時: 2023年06月07日 23:16
名前: テヌグイ [ 返信 ]
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フィールさん感想ありがとうございます!
オーデット隊がアムステラ側の主人公チームか!?

ゾラはマジメ過ぎるのでオデ隊の誰かが手遅れ気味のピンチにならないと駄目でしょうね!
理性的過ぎる!きっとドタマの傷が付いた時に野生を忘れてしまったんだ悟空みたいに…


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