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黒の伝説re:write外伝 消えぬ炎 ( No.134 )
日時: 2022年08月06日 10:03
名前: テヌグイ [ 返信 ]
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中国とある戦線

森林地帯の中にぽっかりと開いた更地に甲冑を纏った巨大な操兵が佇む
更地に見えたソコには放射状に木々が倒れている
全てこの操兵の持つ巨大な怪刀によって薙ぎ倒されたものだ

「さぁさ我こそはと思わん強者はワレの前へ出よ!」

森林にて潜伏していた中国軍の操兵4機が前に出る

「まるで三国志だな」
「図体並みには肝も据わってるが」
「一騎打ちなんて馬鹿な真似するヤツァ現代にはイネェーよ」
「4対1でも卑怯とは言うまい」

巨体の操兵が答える
「無論!」

答えと同時に4機が連動して動く
一機はマシンガンの掃射で援護
一機はバズーカ砲を足元に見舞い
一機は背後へ周り
一機はスラスターによる跳躍で頭上を取った

「「ブォォォォオオオオッンッッッッッ!!!!」」

それは剣術と言うにはあまりにも大雑把で

子供が棒きれを振るうが如き稚拙さであった

だが圧倒的その巨体が

だが巨大な怪刀を軽々と扱うその膂力が

荒れ狂う台風にもにた暴力の奔流となり襲い掛かった!

そして頭上を取った一機は一瞬にして3体の僚機が鉄塊に変わるのを目撃した

そしてそれが近い未来の己の姿であることを悟った

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

半刻程立ったであろうか倒れた木々と散らばる鉄塊の真ん中にその巨体は仁王立ちしている

綺麗な円状であった更地は虫食いのようになっている

ソコにはまた鉄塊が横たわる―あるいは散らばっている―

森林を遮蔽に射撃を試み

その遮蔽ごと横なぎに両断された者たちの末路である

鉄塊の数は増えたが巨体にはダメージは一切見えない

「さぁさ地球のツワモノどもよ――――――」

口上を垂れるがもはや前に出る者は皆無である

「…つまらん!」
「この地球(ほし)には剣の王が居ると聞いたぞ!」
「何処(いずこ)おるのだっ!」

地球より遥か広大な惑星出身であるこの男には中国と日本の違いは分からない


ザッザッザッザッザ


落胆とも激怒ともとれる態度を取る巨体に向かい一機の操兵が歩みを進める

「ムゥ?」
「貴様!丸腰ではないか!獲物はどうした!?」

その操兵は
付きすぎていない肉体を模(かたど)った―しかし決して瘦身ではない―ボディ
白い面を被ったような「のっぺらぼう」
滑らかでいて無機質
そして巨体―しかし今はより巨体な敵機を前に小柄にも見える―

そののっぺらぼうが右拳を握りこみ体の前に出す

この拳こそが己の獲物(武器)であるというジェスチャーである

「ガッハハハハハハハハッ!」
「無刀が流儀かッ!」
「その意気や良しッ!」
「この星に来て初めて勇者に会ったわッ!」
「そうだ!その拳にて我が愛機「巨刀象牙」に一撃打ち込んで見せよ!」
「ただし…!」

巨刀象牙は巨大な刀を上段に構えた

「一撃で倒せなければ我もこの一刀で返そう!」
「さぁさ!死地に踏み出す勇ありや!?」

だが「のっぺらぼう」は歩みを止めることは無い。

「…見事」
「この巨刀を前に微塵の恐怖も覗かせず歩みに欠片の迷いも見せぬとは」
「余程の勇者かはたまた大馬鹿か」
「ともあれ無名のまま屠るには惜しい!貴殿と乗機の名を聞こう!」

のっぺらぼうが答える

「千功者」
「孫秀炎(スン シウヤン)」

「千功者の孫秀炎!覚えたぞ!」
「ワレはセンゴク七本槍が七!巨刀象牙のギンゴ」
「いざッ!まいられよ!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

孫は歩を進めながら逡考する

目の前の強大な敵機に無意識の部分で警戒しつつも

思考はかの「ORGOGLIO最大トーナメント」を

大蛇勝美と己の戦いを

あの戦いで最後に放った一撃を

今思うと笑ってしまいそうになる

一撃必殺だの

地球の核を踏むだの


何と…



何と……




何と………






「「「謙虚だったのだ!!!!!!」」」






地球の核とは詰まるところ

この星の半分!!!

そのような半端な心構えであの大天才の前に立とうだなどとッ!

あまつさえ一撃で打倒しようだなどとッ!!


真の震脚とは!


真の一撃必殺とは!


地球の


核さえも越え


その


遥か先へッッ!!!!!!!


ズッッッッギャアアアアアアアアアアァァァァァアアアンンンンンッッッ!!!!!!



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「美事!美事也!孫秀炎ッ!」
ギンゴが大声で賞賛する
「地中深くに張る大樹の根を地上へ押し出す程の踏み込み!」
「わが巨刀象牙の甲冑を揺るがす程の一撃!」
「しかし」
「惜しむらくはその機体」
「貴殿の業前に耐えうるものでは無かった」

千功者を見ると
崩拳を放った腕は無残に砕け
もはや拳どころか手の形すら成していない
肩の関節部はバチバチと火花を散らし
震脚を踏み込んだ脚は脛(すね)の中程まで地中に刺さったまま膝から先が体と繋がっていない

「そうみたいネ」
素っ気なく答える孫

「貴殿ほどのツワモノを屠るのは惜しいが」
「これも戦場の習い」
「許せよ」

「早くした方が良イ」

「潔しッ!」

千功者を唐竹割りにするべく巨刀を振り下ろす……が
巨刀象牙の機体はピクリとも動かない!

「こ…これは!?」

「胴体がコクピットじゃなくて運が良かったネ」

「!!!!!!??」

先ほど打ち込まれた胴を覗き見ると
ポッカリと空洞になっている

「甲冑ごと穿ったというのか!それも拳のみで!」

「脱出装置は付いているんだろウ、早くした方が良イ」

「ガッハッハッハ!!」

豪快な笑いと共に巨刀象牙の首筋から火花が散り炎が勢いよく噴射する

「勝負に負けたからと敵に背を向けるとでも…」
「とカッコつけたい所だが拾える命はいくらでも拾わせて貰おう!」

「痛み訳ヨ」
「私も動けないシ、打たせてもらった一撃ネ」

「謙遜するな」
「ワレの仕掛けた賭けに敗れたのだ負けは素直に認めようさ」

噴射の勢いが強まり巨頭象牙の頭部のみが上空へ消えた

「さらばだ千功者の孫秀炎、次は尋常に勝負いたそう!」

動かない千功者の中で孫がつぶやく


「再見」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

南米

滝壺の前の岩場に腰掛けた男が

四角い紙とにらめっこしている

男は角の付いた覆面をしているがその覆面越しでもわかる程

眉間に強く皺をよせている

一つため息をつくと

目を休ませようと視線をそらす

ふと傍らの小石が視界に入った

「…?」

その石は微かにカタカタと震えると岩場から転げ落ちていった

「地震・・・・??」

―――終―――


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Re: 黒の伝説re:write外伝 消えぬ炎 ( No.135 )
日時: 2022年08月06日 13:38
名前: REO=カジワラ [ 返信 ]
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“鉄面皮”孫秀炎ッ!『崩核拳』をも超える拳を繰り出す域まで達しているとは…ッ!!
機体の限界を超えた一撃が故に、千功者の要改造が必要なモノも、この拳が、
実戦で研ぎ澄まされていくとか、末恐ろしいモノを感じるなあ~!

敵役の巨刀象牙のギンゴも良かったですねー!!
磨き抜かれた武と言うよりも荒れ狂う竜巻が如くの槍術…ッ!!
対火器、対複数機相手でも、諸共しない辺り、爽快感ありましたッ!!

そして、ラスト…ッ!!
核さえも越えッ!そのッ!遥か先へッッ!!!!!!!
届いていたッ!!少林が目にした転がり落ちる小石ッ!!
それは明らかに届いた証ッ!!

いやぁ、骨太で熱いSSでしたッ!!面白かったですッ!!


Re: 黒の伝説re:write外伝 消えぬ炎 ( No.136 )
日時: 2022年08月07日 23:25
名前: フィール [ 返信 ]
「この地球(ほし)には剣の王が居ると聞いたぞ!」
「何処(いずこ)おるのだっ!」
とか
「ムゥ?」
「貴様!丸腰ではないか!獲物はどうした!?」
とか完全に予習無しで来てるじゃないですかー!その姿、完全に都会に来たばかりの田舎者!ただし、彼の出身地自体は恐らく地球より発展してるからもう訳がわかんないよー!
そして、孫。地球の裏まで踏み抜くなんて大言、それを決して誇張とは思わせない決意と鍛錬が込められた最高の一撃でしたね。タイプは違えど、両者ども後悔の無い今を生きている感じがしました。


Re: 黒の伝説re:write外伝 消えぬ炎 ( No.137 )
日時: 2022年08月08日 08:34
名前: 春休戦 [ 返信 ]
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熱い!熱いぜ!熱くて死ぬぜっ!!
しかし何が怖いって、これでセンゴク七本槍の「七」ってトコ!
こんな豪傑がまだ六人(しかもギンゴの序列は一番下っぽい?)も居るというのだから恐るべし。(;^ω^)
そして七本槍。何処かの領主所属なのか、それとも何らかの番付みたいな呼称か。
その辺も含めて先が楽しみですね。(^^)


Re: 黒の伝説re:write外伝 消えぬ炎 ( No.138 )
日時: 2022年08月11日 20:08
名前: 理海王 [ 返信 ]
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熱いッッ!! 久しぶりに熱いものを読ませてもらった!!!!!!
千功者ッ! 孫秀炎ッッッ!!
巨刀象牙ッ! ギンゴッッッ!!

両雄とも実にもののふッ! あっぱれな勝負であったッッッ!!!!!!


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