スピカ喫茶室
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【国東が呼ぶ】真木大堂
投稿日:2024年12月27日 05:25 No.825

馬城山(まきさん)伝乗寺は、かつて広大な大伽藍を誇っていた。

現在は、真木大堂(まき-おおどう)と呼ばれる収蔵庫に九体の仏像を残すのみである。
国宝級の仏像。巨大な仏像。

鏡子さんは大威徳明王像の前に正座した。

じっと凝視したあと、僕にこう言った。
「ご感想は?」
「そうですね。厳かな気持ちになります」
「ふーん。私は、怖い。ただただ怖い」
「怖い?」
「ええ、怖いわよ。こんなのが闇バイトに応募したら、どうなると思う?」

・・・・・・応募しませんから。
あと、「こんなの」呼ばわりはマズイのでは?

力が全てだった時代──
弱肉強食とまでは言わないが、
正義とか理不尽とかの概念は薄く、
自分を護るのは自分しかなかった時代──

仏を味方につけられるなら。
仏こそが絶対の正義なら。

「仏ツエー、と言わせたいなら、でかくて怖くないとね」

力は、正邪に関係なく、恐れられるものであろう。
そして、そうか、大きさも重要なんだ。

仏像の標準サイズは「丈六」だという。
1丈6尺──264センチ?。釈迦の身長だという。(信じられん)

とにかく、常人とは違うと強調したいなら、異様なサイズの体躯にするのが一番だろう。

9体の仏像に見据えられて、自分の矮小さをあらためて実感せずにはいられなかった。

そして、怖いものを素直に怖いという、鏡子さんがここにいる。

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