スピカ喫茶室
| トップに戻る | 検索 | アルバム | 管理用 | ▼掲示板作るならRara掲示板 |

【国東が呼ぶ】田染1
投稿日:2024年11月27日 22:32 No.792

富貴寺からの連続カーブを行くこと、わずか数分。
景色は一転して田園地帯になる。
田染(たしぶ)の平野だ。

鏡子さんの目が輝いている。

「ここに生まれたかったわ」
「どんな善行をすれば、ここに生まれることができるんだろうね」

最大の賛辞だが、彼女をしてそれを言わしめる要件はよくわからない。

おそらく半島内唯一の平地は、いかんせん山に囲まれて限られた田園風景だ。スケールとしては小さい。

それでも、奇岩をいただく山また山の半島にあっては、ここが桃源郷といえなくもない。

鏡子さんの言わんとすることは、これでいいのだろうか。  

すぐ近くの「小崎」と呼ばれる地区は、中世の荘園の風景がそのまま残されているという。
もちろん、そこにも人は住んでいる。

ここは「真中 まなか」と呼ばれる。
郵便局があるから中心部であり、だからこそ神社がある。
そして、その神社にも仏はいる──当然だとも言うように。
           (つづく)
─────
─────