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「県庁おもてなし課」
岡山のTOM
投稿日:2011年08月17日 15:16
No.1812
5月に感想をたっぷり書き込んだ映画 「阪急電車」 の原作者・有川浩さんの最新作をようやく読了。 今の日本でこそ、読まれるべき本でした。<br><br>【 高知県庁に突如生まれた新部署 「おもてなし課」。 観光立県を目指すべく、入庁3年目の若手職員・掛水史貴(25歳)は、振興企画の一環として、地元出身の人気作家・吉門喬介に観光特使就任を要請するが・・・・。 「バカか、あんたらは」。 いきなり浴びせかけられる言葉に掛水は思い悩む ―― いったい何がダメなんだ!?<br> 「お役所意識」 が抜けず民間感覚と大きな隔たりのある、グダグダな 「おもてなし課」 のメンバーたちは、就任した吉門に次々と認識の甘さを指摘されたり、かつて 「パンダ誘致論」 という斬新な観光振興策を唱えながら、失意のうちに県庁を去った清遠和政らとの触れ合いを重ねたりする内、少しずつ変化していく。 これは、掛水と 「おもてなし課」 の、地方活性化にかける苦しくも輝かしい日々の物語である。 】<br><br>掛水(かけみず)にとっては、恋が成就するかどうかもかかっています。 ふさわしい相手になれるのか・・・・。 ならなければ!<br><br>「おもてなし課」 は、有川さんの出身地である高知県に実在しています。 そして、有川さんも高知県観光特使のお一人。 そう、導入部の辺りの何割かは実際にこういうグダグダ具合であったという事が書かれてあるのです。<br> 最初は職員たちのだらしなさにあきれ、駄目出しの嵐だった吉門(よしかど)だが、見放さずに鍛えていく。 掛水は、必要なスタッフとして吉門から出された条件をクリアする適任者が県庁内の他部署にアルバイトとして入っているのを発見し、うまく契約の切れるタイミングで 「おもてなし課」 に引っ張ってくる。 その多紀ちゃんと共に掛水は、吉門に食らいついていくのです。<br><br>吉門は旬の小説家らしく、「おもてなし課」 の職員たちを小説の登場人物みたいに動かしていく。 そう仕向けて。 あんな決めゼリフをああいう状況で実際に言い放たれたなら、死にもの狂いにもなろうというものである。 「おもてなし課」 は一枚岩になり、リミッターを外してしまう。<br> やがて、吉門が口を挟む必要はほとんどなくなってくる。 掛水をはじめとする職員たちは遂に、吉門の狙い以上の働きさえやってのけるまでになるのである。 一度命を吹き込まれた小説の登場人物たちが、作者の手を離れ勝手に動き回るかのように。<br><br>もちろん、ラブ方面のお話も充実。 2組の恋愛模様が、物語の展開と関係し合いながら、ある時は頬を緩ませ、ある時は胸を締め付け、最後には、激しく込み上げてくる ” 小説を読む醍醐味である至福の瞬間 ” を読者にもたらしてくれます。<br> 多紀がいなかったなら、ここまで頑張れたかどうか。 掛水は彼女との付き合いを深めていく内、観光客を呼ぶための ” もてなしの心 ” の要の部分に辿り着く。<br> もう1組は、吉門と、清遠(きよとお)の娘・佐和との、糸のもつれた訳ありの愛。 こちらのクライマックスは、いささか唐突にやってくる。 良かった、人の目のあるところで読んでなくて。 号泣させられました。<br><br>終盤、「おもてなし課」 は、旅行雑誌の 『るるぶ』 を敵だと想定して奮闘する。 実際に壁として立ちはだかるのは、県庁内の上層部だ。 予算をぶん取るため、何としてでも攻略しなければ!<br> 結局、本書における 「おもてなし課」 の活動を外部の目で見たなら、それほど派手な驚くべき成果を上げた訳ではありません。 どちらかと言えば、地味な活動に一所懸命取り組んで━━。 けれど、知る人は知っている。 分かっている。 地味な事こそが重要なのだと。 本書は、直木賞に輝いた 「下町ロケット」 にだって負けぬ、一種の企業小説にもなっています!<br><br>ラスト近く、「おもてなし課」 を代表して臨んだある大きなメディアの場で掛水は、高知の観光を盛んにするための諸々を語っていく。 高知のことばかりではない。 あの、物語の序盤ではあんなにグダグダで、吉門に怒られてばかりだった掛水が、各都道府県にも目を向け、「日本中が元気になれたらえいなぁって」 とまで口にするのである。<br> この箇所があるからというだけでなく、今の日本でこそ読まれるべき1冊でしょう。 有川さんは、東日本大震災発生から3日後の3月14日、ご自身のブログで、3月下旬の発売が決まっていた本書の印税を全て被災地に寄付すると表明されました。 「 『県庁おもてなし課』 は地方を応援したいという気持ちで書いた作品です。 地方応援を謳った物語がここで身銭を切らなきゃ嘘だろう。 それぞれ自分ができることを。 私にできることはこれでした、というだけのお話です」 と。 また、「こういう状況になると、普通に生活していることに罪悪感を感じてしまうようになりますが、よその地域は元気でいないと、被災地を助けることもできません」 とも書かれています。 阪神大震災に遭われたご自身の体験からの言葉として。<br><br>本書の締めくくりは、有川さんらしく、ラブ。 中盤で分かり易く張られていた伏線を、王道の展開で回収しての。 いつもの有川さんのタッチより控え目な・・・、でも、この物語にはぴったりの見事に決まったラストでした。 やるじゃないか、掛水。 しゃんとしてきたな、「おもてなし課」。<br><br>東国原知事が在任中は宮崎県庁が観光名所の一つになっていたものです。 私も 『宮崎映画祭』 参加の際、足を運びました。 本書がこのペースで売れ続け映像化されたなら、高知県庁もそんな感じになっていくかもしれません。 実際の 「おもてなし課」 を、見てみたいですから。<br><br>巻末には、本当の 「おもてなし課」 の職員も出席しての特別座談会の模様が採録されており、そこで出席者の一人から 「 『おもてなし課』 は観光の特殊部隊だ」 という発言が出てきます。 そうなってほしいし、まだこういう役割のセクションを設けていない都道府県には、是非ともその方向で改善していってほしいもの。<br><br>最後に━━。 第1回から第4回までずっとテンにランクインし続けた伊坂幸太郎は、満を持したように 「ゴールデンスランバー」 で第5回の本屋大賞に選ばれました。 文庫化されて100万部を突破し映画も今年公開された 「阪急電車」 が一昨年惜しくも11位だった有川浩は、昨年 「植物図鑑」 が8位に、そして今年は 「キケン」(9位)、「ストーリー・セラー」(10位)の2冊を送り込み、完全に本屋大賞の常連作家になりました。 第4回には 「図書館戦争」 が5位に食い込んでいますし。<br> 機は熟しました。 「県庁おもてなし課」、来年の本屋大賞の拙予想で迷うことなく本命に挙げられます。<br><br> ***************************<br><br>『瀬戸内国際こども映画祭』が間もなく開幕ですね。 会期が『湯布院映画祭』と重なるため、残念ながらちょっと行くのは無理ですが。 いまいさんは、ご出席されるのでしょうか?<br><br>そして、湯布院行きの時期が来ると思い出すのは、たまちゃんのお誕生日。 22日で満5歳になるのですね。 「おめでとうございます!」。 湯布院へは、25日(木)に出発です。<br>
Re: 「県庁おもてなし課」
いまいまさこ
投稿日:2011年08月17日 16:14
No.1814
TOMさんこんにちは。<br><br>あああ、これすごく読みたいです。<br>有川浩さん、ほんとに大好き。<br>どれも人物が生き生きしていますよね。<br>さらに、この本はあちこちから絶賛の声が聞こえてきて。<br><br>ブックレイジングという仕組みを使って本を寄付しようとしていて<br>(売り上げがNPO法人ブリッジフォースマイルの活動に使われます)<br><a href="
http://t.co/Kc0dvyv"
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http://t.co/Kc0dvyv</a><br>
今、家に眠っている本をどんどん読んでいます。<br>新刊がますます後回しですが、しばらく読書そのものから遠ざかっていたので、ひさしぶりに本を読む時間を楽しんでいます。<br><br>瀬戸内国際こども映画祭、いよいよです。<br>連ドラが脱稿するのを待ち受けている仕事がいくつかあり、参加は難しそうです。<br>湯布院楽しんでくださいね。
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