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投稿者:はっちん
元記事⇒ 久留米大学医学部免疫学講座 https://www.med.kurume-u.ac.jp/med/immun/corona.html [97版に追記分] BA.5オミクロン株を受け入れるための私見 #3 (2022年8月19日) 政府が2022年8月17日に「第7波収束前に新型コロナウイルス感染者の全数把握を見直す」方針を示されました。全数把握が廃止されれば、感染症法上2類相当との整合性もなくなり、新型コロナウイルスも季節性インフルエンザと同様に扱われ、昔の生活が取り戻せる日も近いと期待をよせています。また、全数把握を廃止しても、新型コロナウイルス感染による入院者数の把握、特に「軽症者(重症化リスクが高い方に対する予防入院)」、「中等症(入院でしか受けれない治療を受けられている方)」、「重症者」に分類した人数把握は、新型コロナウイルス流行時の社会的影響を判断するために今後も重要となると思います。よって、これに関し幾つか気になる点があるので私見を述べさせて頂きます。 曖昧なコロナ死者規準が恐怖を煽る 中日新聞の2022年8月16日の報道によると、愛知県の大村秀章知事が「第7派(BA.5株)で、新型コロナウイルスの直接原因で死亡した人は県内にはいない」と言われたようです。そして、「新型コロナウイルス感染症の重症者数、死者数、公表方法などの見直し」を要請されています。科学的判断にもとづいた適切な要請と個人的には信じています。事実、2022年2月1日の読売新聞においても、前田遼太郎記者が「山梨県では新型コロナウイルス感染による重症者がゼロにも関わらず、死亡者が6人もいた」事に疑問を抱かれ調査されています。結果、厚生労働省の担当者から「現在の死者数の増加は、コロナが原因で亡くなった人が増えていることを必ずしも意味しない」との見解を得られています。2020年6月18日からは、死因が老衰や他の病気だったとしても、事前の検査や亡くなった後の検査で陽性が判明すれば「コロナ死者」として扱われているようです。https://www.yomiuri.co.jp/national/20220131-OYT1T50245/ 2022年8月18日時点の新型コロナウイルスによる累積死者数は36,001人です。これまで7回の波(流行)を経験しているため、「1回の流行あたりの平均死者数は5,143人」の計算になります。季節性インフルエンザ感染が直接原因として亡くなられる方は、2019年度は3,325人です。しかし、新型コロナウイルスで現在用いられている死者の基準(感染により持病が悪化して亡くなられた方も含む)を使うと、季節性インフルエンザでも死者数は10,000人以上になります。「1回の流行あたりの季節性インフルエンザの死者数は10,000人以上」で、新型コロナウイルスよりも多い計算になります。しかし、約2か月という短期間で、このように多くの死者を出す季節性インフルエンザでさえ日本の医療体制はビクともしていないのが紛れもない事実です。 最も怖かったアルファ株に比べてBA.5株は? 日本における「アルファ株」、「デルタ株」、「オミクロン株(BA.2株)」、「現在流行中のBA.5株」の日本の感染状況を整理してみました。(画像⇒ https://www.med.kurume-u.ac.jp/med/immun/20220820.fld/image004.png ) パンデミック早期は感染予防対策が評価され、報道に頻回に取り上げられていた「韓国」、「台湾」、「ニュージーランド」、「オーストリア」でさえ、感染者数は既に日本を遥かに超えています。「感染拡大を一時的に抑制できても、感染力の増した変異株により、いつかは感染爆発を起こす」という避けられない現実を世界が教えてくれています。(委細は「BA.5オミクロン株を受け入れるための私見 #2(2022年8月8日)」の「避けられない現実」を参照下さい⇒記事 https://www.med.kurume-u.ac.jp/med/immun/ )。事実、感染力の増したBA.5株により、日本でも2022年8月18日に、過去最多となる255,534人の新規感染者を認めています。しかし、重症化の予防効果が高いワクチンの3回目接種、さらにBA.5株の弱毒化により重症者は少なく抑えられています。感染して入院された人数から計算した、厚生労働省基準の重症者数(人工呼吸器が装着されていなくても集中治療室で治療を受けた方は重症に含まれる)でさえ「アルファ株で1.92%」、「デルタ株で1.04%」、「オミクロン株BA.2株では0.2%」、「BA.5株では0.03%」です。「アルファ株」では、入院された50人に1人が重症化されており、ニューヨークやロンドンでは野戦病院を設置しなくてはならない事態に陥っています。一方、デルタ株では重症化率は1.04%とアルファ株に比べて半減しており、このころから欧米諸国では医療逼迫は認められなくなっています。さらに、重症化率はオミクロンBA.2株では0.2%とアルファ株より10倍近くも低くなり、BA.5株では0.03%と「64倍」も低くなっています。つまり、BA.5株では、入院された1万人のうち僅か3人しか重症化されていない計算になります。つまり、1万人中9,997人もの感染者が「万が一の用心のために入院」されているのかもしれません。この状況が続けば人為的医療崩壊を起こす危険性が高くなるため、適正かつ厳格な入院基準が早急に必要と思います。        
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