投稿者:イングリッド・シーグフリード
我々は敗走を重ねた残党集団だ。
故に、所属している武闘派。武装組織もある程度の色分けがなされている。
まずは青旗行動隊。
元汎バルト統一戦線の運動員にして武装団体。
軍人上がりが多く、1936年蜂起における主要構成団体の一つだった。
今のところ、武闘派における最大派閥。
第二にユーリア・ラームとその親衛隊。
一度壊滅した新ヴァーサ運動のうち、ユーリアを匿ってきた人々。
SNFPにおいてはスワード・クラブに所属していた連中だ。
決して数は多くないが、彼らはユーリアに心酔している。
第三。
私が守ってきたNRNS及びNRSNSのエッセンス。根源となる集団。
ムンク中将による運動時代からの生き残りも何人か存在する。
恐らく、極右残党の中でも一番練度が高かったであろう「最終戦争」に備えてきた集団。
しかしその大半は例の国王拉致事件で自決している。
練度は高いが、数はもっとも少ない……私が全員の名前を読み上げられるぐらいには、少ない。
「極右、バルト=ヴァーサ戦線の誕生」を耳にして駆けつけた連中が居る。
元戦う自由民主党武装団体『国旗団』の中でも反共意識の強い連中だ。
自民党が与党入りして穏健化したのに際し、幹部に不満を持っていた連中だ。
反共の闘士……と言えば聞こえはいいが、ようは
「軍に入る程の根気や感情はなく」
「けれども大人しくするには血気盛んに過ぎ」
「街頭での殴り合いが楽しくてやめられない」
「くそったれの愚連隊ども」
だ。
しかし、街頭での戦闘はその間合い、やり方、法の境界線を知っていなければならない。
そういう意味で彼らは一種のエキスパートである。
私がこの党内部で発言力を持つには、演説の技術だけでは物足りない。
正統性で言えば娘であるユーリア・ラームに。
勢力で言えば青旗行動隊とそのリーダー、フレードリク・ノルデンに。
それぞれ私は劣っている……私はシクヴァルと籍を入れたわけでもないのだから。
国旗団を引き連れてきた連中のリーダーは、髭を生やした不衛生な見てくれの男だ。
煙草を常に咥えて、鼻から煙を吹く、嫌な男だ。
「よォ姉ちゃん。アンタ、シクヴァルの女だったんだって? 期待しちまうなァ。俺にもチャンスあるか?」
「私は彼以外にはそういう感情を抱かないの。これからずっと、よ」
「気の強そうなフリしてっけどなあ。ウチらこれでも殴り合いのプロだぜ? アンタなんかすぐに身包み剥いでやることも出来るんだ。分かる?」
「愚連隊め。貴様らなど我々一人で十人はやれる」
「双方、黙りなさい」
「いい? ここに来たからには二つに一つよ。民族と国家のために死ぬか。脚や腕の一本でも持ってかれて引っ込むか。それだけよ」
そう言って私は、男の足を思い切り踏みつけた。
「テメェ!」
「黙れチンピラ。これから銃弾食らってでも生きなきゃいけないんだから、この程度我慢しろ。そして……」
「私をナメるなよ?」