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投稿者:はっちん
新型コロナのエビデンス 元記事URL⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/ 岡田正彦 新潟大学名誉教授(医学博士)  テレビでは語られない世界の最新情報を独自に分析  正しい情報を偏りなく 今週の新情報 (2024.2.12) Q&A コロナワクチンは脳に影響を与えるのか? コロナワクチンの副作用、あるいはコロナ後遺症のせいで、「頭がもやもや」するなど脳の症状で悩まされている人が少なくありません。そのような人たちに脳の画像検査を行ったところ、あきらかな変化を認めたとする論文が発表されましたので、概要をまとめてみました(文献1)。 何らかの理由で脳の画像検査(MRI)をたまたま受けていて、その後の4ヵ月以内にオミクロン株に感染し2回目の検査を受けた、という人たちが対象でした。26~60歳の男性ばかり(理由は不明)です。気になるのは、ほとんどの人がコロナワクチン接種も受けていたことです。 MRI検査のあと、認知機能や睡眠状況など調べる4種類のテストが行われました。そのひとつは「ベック不安尺度」というテストで、不安に関連する気持ちや身体症状を21項目の質問で調べるものです。たとえば「何か最悪なことが起きるような気がする」、「死ぬかもしれないという不安がある」、「体がほてる」、「呼吸が苦しくなったりする」などの項目に対して、「まったくない」から「ひどく悩まされている」までの4つの選択肢から答えるようになっています。 分析の結果、多くの人で、オミクロン株に感染したあとベック不安尺度の悪化が認められたということです。タバコを吸っている人も含まれていましたが、ベック不安尺度の変化とは無関係でした。身体的症状で多かったのは、微熱、疲労感、咳、筋肉痛などです。 2回目の検査の3ヵ月後、17人に対してアンケート調査を行ったところ、症状は大幅に改善していました。 では、脳の変化はどうだったのでしょうか。 前後2回の検査結果を比べたところ、脳の何ヵ所かに委縮が認められ、そのひとつは「楔前部(けつぜんぶ)」と呼ばれる部位でした。ベック不安尺度が悪化した人ほど委縮が進んでいることもわかりました。 <大脳の楔前部(けつぜんぶ)イラスト⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/postomicron.jpg >    この部位は、自分の体の位置関係を記憶していて、手足などを動かそうとする意識や感情との調整を行っていると考えられています(文献2)。大脳は左右にわかれていますが、その2つが接する内側の隠れた場所にあって、脳卒中やケガなどで損傷を受けることも少ないため、詳しい働きはまだわかっていません。 さて、この研究結果から何が言えるのかは、難しいところです。まず、対象となった人の大部分がコロナワクチンを受けていたことから、オミクロン株に感染したためなのか、それともワクチンの副作用なのかが判然としません。 また、研究で用いられた検査装置は比較的高性能(3テスラ、32チャンネル)であり、画像の変化も2回分を比べてかろうじてわかる程度のものでした。したがって症状が出てから慌てて病院に駆け込んで検査を受けても、あまり役に立つことはないかもしれません。 一方、時間の経過とともに、症状も回復に向かうことがわかりました。ワクチンの副作用やコロナ後遺症は、たとえ時間がかかっても徐々に回復していくものであることは多くの論文が示しているところです。この研究結果も、そのことを暗示しており、つらい症状で悩んでいる人たちにとっては救いです。 脳の機能は、部分的に衰えたとしても、周辺の神経回路の再学習によって補われていくと考えられるのです(文献3)。 【参考文献】 1) Du Y, et al., Gray matter thickness and subcortical nuclear volume in men after SARS-CoV-2 omicron infection. JAMA Netw Open, Nov 30, 2023. 2) Cavanna AE, et al., The precuneus: a review of its functional anatomy and behavioural correlates. Brain, Jan 6, 2006. 3) 岡田正彦, 医療AIの夜明け, AIドクターが医者を超える日, オーム社, 2019.        
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