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投稿者:はっちん
新型コロナのエビデンス 元記事URL⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/ 岡田正彦 新潟大学名誉教授(医学博士)  テレビでは語られない世界の最新情報を独自に分析  正しい情報を偏りなく 今週の新情報 (2023.12.18) Q 流行の後遺症治療法にご注意? A 「ワクチンの副作用」や「コロナの後遺症」で辛い思いをしている人たちにとって、最後の頼みが漢方、あるいは民間療法となっています。しかし、問題もいろいろありそうです。 幹細胞治療 未認可の医療として行われているもののひとつに、幹細胞治療とエクソソーム治療があります。幹細胞は、自分自身の脂肪組織や骨髄から、あるいは赤ちゃんの臍帯血から抽出したもので、さまざまな細胞に成長していく能力を有したものです。病気で傷んだ組織を修復してくれる作用が期待されているのですが、いまのところワクチンの副作用に対しても、またコロナの後遺症に対しても正式な研究発表はありません。 エクソソームについては、当ホームページのQ18(第一回)※1で、アニメで説明したとおりです。簡単に言えば、どの細胞からも放出される「破片のような微粒子」で、サイトカイン(ホルモン様物質)や遺伝子断片を含んでいるものもあります。新型コロナ感染症など、さまざまな病気の治療に実験的に使われていますが、やはり確かなデータはありません(文献1)。 (※1:記事⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/index_part2.html#PQ18 の第一回を参照) (※1:記事⇒ https://rara.jp/royal_chateau_nagaizumi/page3801#3836 ) 米国やメキシコを中心に、この2種類の治療法をビジネスとして展開する企業が一時期、1,500社を超えていたとのこと。最初のころはコロナの感染を予防できることをうたい、そのうちに同じ製品でありながら、眼病や原因不明の痛みに有効など、宣伝文句が変わっていき、一旦倒産した会社が社名を替えて再登場するなど、無軌道なビジネスが横行している、と訴えている研究者もいます(文献2)。 最大の問題は、製造方法がずさんで細菌などが混入している製品があることです。そのため感染症を起こしたり、副作用で失明した人がいるとも報じられています(文献3)。未承認の製品であることから、医師側に副作用の報告義務もなく、実際の健康被害は甚大な数に昇っているのではないかとの意見もあります。 このような発想に基づいた製品は、ほかにもいろいろあります。たとえばプラセンタ(胎盤)から抽出した成分を筋肉に注射するという方法が日本でも行われています。当然、自分の体から出たものではありませんから、リスクも高い可能性があります。 漢方薬 次に漢方についてです。中国の伝統医療(中医)を参考に、日本で独自に発展してきた医療が漢方です。西洋医学とは異なり、症状や病気の一つ一つに処方されるわけではなく、体の状態を「陰証・陽証」や「虚・実」、「気・血・水」、「六経分類」などの物差しで判定し、漢方処方が選ばれます。したがって、漢方に対する深い知識と技量が求められるのですが、病院で安易に処方されてしまう風潮もあるようです。 イラスト⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/kanpou.jpg          漢方薬を処方した患者さんからは、「お陰様でなんとなく良くなってきました」という言葉が返ってくることがあります。しかし個人の感想ではなく、やはり重視すべきは統計学的根拠(エビデンス)があるかどうかです。以下、ワクチンの副作用とコロナの後遺症に限定し、漢方の効果について検証します。 問題は、漢方薬に関して大規模なランダム化比較試験がほとんど行われてこなかったことです。何故なら、漢方薬には以下のような宿命的な難しさがあるからです。 1 複雑な色と味を有する漢方薬では、味も見た目もそっくりなプラセボが作れない 2 体の調子をはかる物差しが複雑で客観性に乏しいため、厳密な統計処理が難しい 3 種類が多く、組合せが膨大となるため、個々の処方に対する大規模調査ができない 4 理論的根拠が乏しいため、臨床試験の結果を解釈するのが難しい 4番目の問題点については、こんなデータもあります。鍼治療のいわゆるツボは150箇所以上あるとされていますが、米国のある調査団が本場中国の代表的な鍼専門院2ヵ所で聞き取りを行ったところ、同じ目的でもツボの選び方が施術者によって大きく異なることがわかったそうです(文献6)。つまり鍼治療や漢方薬のように経験則に基づく医療は、客観性に乏しいということなのです。 そんな困難にもめげず、漢方薬を「普通の風邪薬」と比べたランダム化比較試験がいくつか行われています。しかし結果は、症状を改善する効果において、両者に差がなかったというものでした(文献4,5)。 漢方は、人々の不安を解消する医療として広く認められている存在ですが、効果と副作用が正しく評価されているかという観点では、まだ課題がたくさん残されていることになります。 今後、自然の回復力を妨げない確かな治療法の研究発表があれば、当ホームページで順次、取り上げていくつもりです。一方、「コロイダルシルバー(銀の極微粒子を含んだスプレー)」、「オゾン療法(血液クレンジング)」、「エッセンシャルオイル(精油)」、「ハーブ茶」など不確かな民間療法が続々登場してきていますので(文献2)、くれぐれもご注意を。 【参考文献】 1) Rezabakhsh A, et al., Application of exosomes for the alleviation of COVID-19-related pathologies. Cell Biochem Funct, May 19, 2022. 2) Turner L, et al., Businesses marketing purported stem cell treatments and exoxome therapies for COVID-19: an analysis of direct-to-consumer online advertising clams. Stem Cell Rep, Nov 14, 2023. 3) Eastman Q, Study shows business selling unapproved stem cell treatments have turned to long COVID. JAMA, Nov 29, 2023. 4) Okabayashi S, et al., Non-superiority of Kakkonto, a Japanaese herbal midicine, to a representative multiple cold medicine with respect to anti-aggravation effects on the common cold: a radomized contrlled trial. Intern Med, 53: 949-956, 2014. 5) Takayama S, et al., Multicenter, randomiozed controlled trial of traditional Japanese medicine, kakkonto with shosaikotokakikyosekko, for mild and moderate coronavirus disease patients. Front Pharmacol, Nov 9, 2022. 6) Napadow V, et al., A systematic study of a acupucutre practice: acupoint usage in an outpatient setting in Beijing, China. Complement Ther Med, Dec 2004.        
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