投稿者:浮浪雲
■ 上階・斜め上階の生活音がそのまま聞こえる
ある住戸では、
・リビング床でビー玉が勢いよく一方向に転がる。
・和室入口敷居下に隙間が出来ている。(フローリング側から畳の下に物が容易に入ってしまう。)
この現象の原因は、コンクリートスラブに(許容値を超えた)クリープたわみが起きているからです。
●各住戸のスラブは小梁2本により3枚となり、37 戸は南側のスラブ面積(内法面積)が約25m2、36 戸は中央部が約25m2となります。各住戸とも残りの部分は20m2未満です。
●下の表1(日本建築学会 建物の遮音設計資料)から、遮音等級 L-50 を担保できるスラブ厚の目安は、
*スラブ面積25m2で、スラブ厚200ミリ以上
*スラブ面積20m2で、スラブ厚180ミリ以上
必要となっています。
下の表2から、売主表示の遮音等級 L-50 なら走り回る足音が「 殆ど気にならない 」筈ですが、現実は「 良く聞こえ気になる 」~「非常に良く聞こえ煩い 」のレベルです。これは最早 “L-65”~“L-70” であり、学会基準で等級外の性能です。
この生活実感(遮音性能)の違いを、どう説明できるのでしょうか。
*走り回る足音,*物の落下音・椅子の移動音,*スリッパ歩行音,*建具の開閉音、が良く聞こえ煩いなど、これらの原因は、構造体(スラブ厚不足のみならず、床架構全体)の不具合に因るものではないかと考えざるを得ません。
●非破壊検査(弾性波レーダーシステム(※1))でスラブの厚さを実際に確認してみたくなります。
(※1)弾性波レーダシステムiTECS(アイテックス): http://www.itecs.jp/about/
■ 重量床衝撃音の遮音性能が不足する原因
マンションの界壁の遮音性能は建築基準法第 30条及び告示第 1827号に定められていますが、床の遮音性能は法令で定められていません。
軽量床衝撃音はコツコツという比較的高音域の音であり、その遮音性能は床表面の仕上げ材の衝撃に対する緩衝効果に依存します。
したがって、軽量床衝撃音の遮音性能不足は遮音性能の高い仕上げ材に取替えることで解決します。
一方、重量床衝撃音はドスンという低音域の音であり、その遮音性能は床の振動を小さく抑える床構造の剛性や質量に依存します。
したがって、重量床衝撃音の遮音性能不足は“建物の構造に関する問題”であり、建物が出来上がってからの解決は不可能です。
《重量床衝撃音の遮音性能が不足する原因》
1) 梁区画のスラブ面積に対してスラブ厚が薄い場合。(構造設計上の瑕疵)
日本建築学会発行の 「建物の遮音設計資料」 の表 「スラブ厚、スラブ面積と重量衝撃源に対する遮音等級の目安」 によると、
L-50の遮音等級では、床スラブ面積 25m2でスラブ厚 20cm以上、床スラブ面積 20m2でスラブ厚 18cm以上必要となります。・・・ (実際のスラブ厚は 何cmなのか??)
2) カタログ数値による不当表示。
裏面にクッション材を張ったフローリングの試験結果 (数値) をそのまま販売パンフレットに表示して、重量床衝撃音の遮音性能が高いマンションだとして販売していた場合。
各メーカーとも、フローリングのカタログには 「本推定値は、標準的な施工が行われた梁区画面積 10-15m2の RC床版 (厚さ 15cm) に対するものです」 と記載されています。
当マンション実際の梁区画面積は 25m2~20m2と大きいため、この商品を使用しても L-50の遮音性能はありません。(尚、2008年からは推定 L等級表示ではなく、フローリングそのものの性能を表わすΔL等級表示となりました。)
●(重量床衝撃音の遮音性能は床のコンクリート構造に関する問題です。)
3) 天井材による遮音性能の低下。
天井材は重量床衝撃音の遮音性能に影響を与えます。天井は石こうボード下地にビニルクロス仕上げですが、スラブと天井材の間の空気層が 30cm以下の場合、遮音性能が低下します。
これは天井材と天井懐の空気層のバネによる共振周波数が、重量床衝撃音を決定している 63Hzとなり、共振して大きな床衝撃音となるためです。
天井裏の空気層が 25cm (階高-天井高から仮定) の場合 7dB増幅し、適用等級が 2ランク低下します。
■ 界床の遮音性能と企業レベルは比例する
下記記事の如く、建築基準法で定められている界壁 (戸境壁) の遮音性能に瑕疵があるようでは、法規定のない界床の遮音性能 (日本建築学会の指針順守) など期待できる筈がないということでしょうか!
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大和ハウス工業に営業停止命令、基礎を施工せず
( 2012/4/10 21:00 日本経済新聞:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1002I_Q2A410C1000000/)
国土交通省近畿地方整備局は 4月 5日、大和ハウス工業が徳島市内で手掛けた工事で建築基準法違反があったとして、同社に 7日間の営業停止処分を科した。
期間は 2012年 4月 20日から同月 26日まで。徳島県内の民間の建築工事が対象となる。
問題となったのは、同社が 1993年から 1994年にかけて施工した鉄骨造 3階建ての賃貸集合住宅。特定行政庁である徳島市が 2007年、建て主などから「欠陥がある」との通報を受けて調査したところ、以下のような問題が見つかった。
まず、外部階段を支える柱の一部について、鉄筋コンクリート製の基礎が施工されていなかった。市によると、完了検査を受けた際に建物の位置に問題があることが判明。同社が柱の一部を移設するなどの手直し工事を施していた。
さらに、鉄骨の耐火被覆の厚さが不足していたり、戸境壁の遮音性能が基準を満たしていなかったりする箇所も見つかった。市は 2008年 6月、建物が建築基準法に違反するとして、建て主に是正勧告していた。
*裁判所は 6900万円の賠償命じる
その後、建て主は建物を解体、撤去して更地に戻すよう求めて、大和ハウス工業を提訴した。一方、同社は「補修で対応できる」などとして争った。
最高裁が 2012年 1月、上告を棄却したことで判決が確定。同社は建て主に対して、賠償金など計 6900万円を支払った。内訳は賠償金が約 5100万円、遅延損害金が約 1800万円。賠償金の中には約 3200万円の補修費用が含まれる。
同社広報企画室では「今回の瑕疵(かし)が判明して以降、品質確保のための専門部署の拡充や社内教育の徹底など、再発防止策を講じてきた。処分を厳粛に受け止めて、信頼の回復に努める」と話している。
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◆しかし、行政処分が下ることをしておきながら、裁判までもつれるとは .....、これがこの企業の本質のようです。