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投稿者:はっちん
新型コロナのエビデンス ⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/ から (2021.8.27) NEW!  ややこしい話がお嫌いな方は、このあとの「PCRで困ること」だけご参照ください。さてPCRでは、サンプルの中に、たとえばウイルスが1個あったとすると、それが1→2→4→8, …と倍々に増えていくことになります。もし10個あれば、10→20→40→80,…ですから、超微量な遺伝子でも楽々と測定できるようになるのです。 次の図【左】は、PCRの途中経過を示したグラフです。横軸はコピーの回数、縦軸は光の強さ、つまりコピーで増えた遺伝子の個数です。5つのサンプルを同時に測定したもので、一番右端(緑色)のグラフは、なかなか増えていませんから、元々のサンプル中に遺伝子が少なかったことがわかります。ただしこのグラフは、コロナと関係なく昔、私が行った実験データです。 PCRでもっとも大切なポイントは、【前頁】アニメ( https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/rt-pcr.gif )の中でピンク色とオレンジ色で示した人工のDNA断片です。「プライマー(最初という意味)」と呼ばれるものです。唾液などのサンプル中には、雑菌もうようよいます。ときにはインフルエンザ・ウイルスなどもいるかもしれません。それらを区別するのがプライマーの仕事です。 これは、新型コロナにしか存在しない遺伝子情報をコンピュータで探し出し、その中から必要最小限の長さのDNAを人工合成したものです。地球上のあらゆる生命体の遺伝子情報が、共同利用可能なコンピュータに登録されているため、そのような検索が簡単にできてしまうのです。私自身もいろいろなプライマーを作ってきましたが、と言っても、種を明かせばインターネットで注文するだけで作ってくれる会社が世界中にあるのです。 繰り返しますが、プライマーの定義は「唯一無二」であることです。したがって理論上は、PCRが間違った結果を出すことはありえません。ただし分析条件の調整が非常に難しく、さまざまな民間企業が検査を請け負うようになったいま、若干の不安は残ります。 PCRで困ること  さてPCRは、理論的には完璧と言ってよい方法なのですが、応用する上で重大な問題点が2つあります。ひとつは、唾液などのサンプルがうまく取れず、たまたまコロナウイルスが入っていなければ、感染者であっても誤って陰性と判断されてしまうことです。海外での調査によれば、その割合は4割にも昇るとされています。つまり見落としですね。 もうひとつは、ウイルスが死滅して、ばらばらになったあとでも、プライマーが結合する遺伝子断片が残っていれば、陽性になってしまうことです。昨年の春、感染者の退院を許可する基準が国際的に統一されました。たとえば無症状の人は、「サンプル採取日から10日経てば退院可」となります。PCR陰性が退院の条件ではなくなったのです。 コロナウイルスの断片がいつまでも体内に残ることがあるため、PCR陰性を条件にしてしまうといつまでも退院できず、いつまでも自宅待機が強制されることになってしまいます。いま日本では、保健所がPCRを重視するあまり、自宅待機の期間が不必要に長くなっていて、悲劇が家族をおそっています。     【参考文献】 1) Wang W, et al., Detection of SARS-CoV-2 in different types of clinical specimens. JAMA, Mar 11, 2020. 2) Wyllie AL, et al., Saliva or nasopharyngeal swab specimens for detection of SARS-CoV-2. N Engl J Med, Aug 28, 2020.
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