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そこに着いたとき、急に日が暮れたような気がした。
西専寺跡──かろうじて台座に乗る地蔵尊だけがあった。
もはや寺の境内がどこまでだったのかもわからない。
民家や畑が入り組んでいるから。
語弊を恐れずに言えば、雑多な一帯になっているから。
地蔵尊は石。
国東も石。
法華経の如来寿量品(第十六)等には、仏に寿命はないことが説かれているというが、
(ついでに、仏は死んだふりをすることもバラしてる)
現世において寿命が無いように見えるものは、
仏の言葉が正しいことを証明してくれそうなものは、
──石しかない。
そして、国東は石の文化圏になった。
「でも、『時』は石さえも削っていく・・・・・・」
鏡子さんはいつになく、寡黙だ。
だが、そこは鏡子さんだ。
これで終わらない。
唐突に歌いだした。
★★★★★★★★★
石に刻んだみ仏は
いつもかすかに笑ってる
時は無慈悲な鑢(やすり)です
知らず知らずに削ります
誰のせいでもないし
誰を恨むでもないけれど
人よ覚えていてほしい
こんな小さな祈りだけれど
★★★★★★★★★
悲しみだけで出来ているような旋律だった。
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