投稿画像
投稿者:はっちん
元記事=「これからのワクチンは分子生物学mRNAワクチン」https://www.rnaj.org/newsletters/item/883-furuichi-29 【第28話】 mRNAワクチンはこれまでの貴重なRNA科学の集積である mRNAワクチンの主成分は端的に示せば以下のような構造のmRNAである。 Cap----5'UTR----スパイク蛋白コーディング 配列-----3'UTR ----PolyA 以上のような構造のmRNAを大量につくる技術は、 ① スパイク蛋白の配列と転写プロモーターやポリAを含むプラスミドDNAを調製し、直鎖状にする。 ② T7ポリメラーゼでこのDNAを転写しRNAをつくる。 ③ その際、5'末端にキャップがなければならないので付加する。 (工業的には、合成したキャップm7GpppAmpGを転写反応中にプライマ―として加え、酵素的にキャップを加える煩瑣を避けているとおもわれる。) ④ m7GpppAmpGは合成するのが難しい化合物であるが、TriLinkという米国の新興ベンチャーがこのオリゴの合成を可能にした。この結果、ほとんどのmRNAはキャップで始めることができるようになった 。ファイザー・ワクチンには、m7Gのリボースの3'-OHへmethyl 基を加えたキャップm27,3'GpppAmpG (TriLink) が付いている記載があるが、その作り方は? 通常のキャップ、m7GpppAmpGとの違いはどうなのであろうか? ⑤ RNAの合成中、UTPに替えてN1-methyl-pseudo-uridine (N1mΨ) (図1) あるいはpseudo-uridineのトリリン酸体を使い、RNAの全てのUをN1mΨ (あるいはΨ) に変えた。このことにより、ワクチンRNAが自然免疫を回避し、in vivoタンパク合成を増進することを容易にしている。 ⑥ スパイク蛋白は3個がつながってできるようにtrimerとして組み込んだ。ただ、このことは、相同リピート配列をmRNA分子内へ作ることになるので、予期せぬタンパクを作る危険性がある。 ⑦ 蛋白合成の際に、抗原性の高いスパイク蛋白が合成され易いように、ウイルス固有のコドンをヒト細胞がよく使うコドンに変更した。多分、蛋白合成の開始点も、Kozakルールに従った最適配列を選んでいると思われる。 ⑧ 5'UTR や3'UTR (蛋白合成の際の非コーディング領域) には、mRNAを安定化する配列を選んでいる。 ⑨ 要するに、RNAの合成や、タンパク質合成のために重要な発見や、免疫学的な考察など、過去数十年の生物科学の成果をRNA分子の上に大胆に盛り込んでいるのである。 【第29話】 先の第28話の⑥で一つ間違いがあったので訂正しておきたい。それはスパイク蛋白をコードするRNAが3個連なっているように (間違って) 書いたが、そうではなく、できたスパイク蛋白3個が集まって細胞表面へ並ぶというのが正解であり、陳謝して訂正したい。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------- 素人的には下線部分の違いが解らないので・・・、ダム隔壁に出来た小さな水漏れ穴のような不安が残ります。       
投稿記事
画像を拡大