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投稿者:小心者
■ 現行の耐震基準 (1981年6月施行) 現行の耐震基準は、300 ~ 400 ガル程度 (目安で旧震度6程度) の地表の揺れに対して終局強度設計 (ある程度の構造的損傷を許容し人命を守る設計 = 即座には崩壊しない設計) するという最低基準になっています。 なお、一つの地震には様々な周期 (秒) の揺れが混在しています。過去の地震から 1 秒以下の短い周期の方が揺れの強さが大きく、建物への影響も大きいことがわかっています。 建物が一回揺れる時間のことを、その建物の固有周期といいます。固有周期は高い建物ほど長くなり、 RC造では、建物高さh(m)×0.02=固有周期(秒)で概算できます。 10 階建て程度の建物では、固有周期は 0.6 ~ 0.8 秒程度で、一般的な地震では大きな加速度成分をもつ1秒以下の周期に対して共振することになります。 (当マンションの固有周期の概算は上記の式から 0.4 ~ 0.5 秒程度と推測されます。) * 現行の耐震基準では、こうした強い影響を持つ周期で共振しても即座に崩壊しないよう設計の強度が定められていますが、耐震強度 1.0 (建築基準法の最低基準(※1))の建物の壊れ方、また被害の大きさの差は、地震動の周期と建物の周期が近いか否かで被害の程度が変わるということです。 ■ (※1)建築基準法の最低基準とは 現行の耐震基準の二次設計で建築物の安全性を示す場合、「耐震強度 1.0 を基準」 に安全であるかどうか判断されます。 単純に耐震強度 1.0 とは、( Qu / Qun ) = (保有水平耐力 / 必要保有水平耐力) が 1 を超えることであり、 1.0 を超える場合、たとえば 1.5 というものはどういうようなものか、参考となるものの一つに官庁施設の総合耐震計画基準があります。 ここでは耐震強度 ( Qu / Qun ) が 1.0 (Ⅲ類)、1.25 (Ⅱ類)、1.5 (Ⅰ類) の3種類の耐震強度に対して、耐震安全性の目標値が示されています。(耐震強度 ( Qu / Qun ) = 1.0 が建築基準法の最低基準となります。) ここで、Ⅲ類に分類される耐震強度 ( Qu / Qun ) = 1.0 が一般的に設計されている建築物であり(当マンションも然り)、建物の性能の目標として、大地震動により構造体の部分的な損傷は生ずるが、建築物全体の耐力低下は著しくないことを目標としています。 これは、主に梁の端部が壊れて大部分の柱は健全なままで部屋の空間が確保され、地震動が終わったら建物内の人が安全に外へ避難できるような状態を目標としています。 このような建物で最悪の場合は、本震に近い大規模な余震が来れば倒壊に至る場合もあるというのが、耐震強度 1.0 (建築基準法の最低基準) の建物の性能と認識しなくてはなりません。 つまり、耐震強度 1.0 というレベルは、大地震がきたとき、人命を守ることが最大の目的で、建物は、壊れて使用できないこともありえる ということです。 * Ⅰ類 ・・・ 防災拠点 (通常どおり使えること。) * Ⅱ類 ・・・ 避難拠点 (補修が不要、余震でも倒壊せず使えること。) ■ 東日本大震災から分かった新事実 【東日本大震災=K-NET築館】 加速度応答スペクトル ・周期 0.2~0.3秒 3000ガル以上 ・周期 1~1.5秒  300~500ガル 【阪神大震災=JR鷹取駅】 加速度応答スペクトル ・周期 0.2~0.3秒 2000~2500ガル ・周期 1~1.5秒  最高値 2700ガル K-NET築館(宮城県栗原市)の加速度応答スペクトルが、周期 0.2~0.3秒で 3000ガル以上を記録し、阪神大震災JR鷹取駅の 2000~2500ガルを上回ることから 、築館周辺では、新耐震建物でさえ、少なくとも「中破から大破」かと予想されましたが、実際には被害は軽微でした。 その理由は、建物が弾性・塑性両方の性質を併せ持つ「弾塑性体」だからです。(弾性体なら固有周期で地震動と単純共振します。) 弾塑性体の建物は、強い地震動を受けると、建物の構造がゆるんで(=塑性化)、周期が伸びていきます。この、伸びた周期を「等価周期」と呼びます。 よって、「固有周期 0.1~0.5秒の普通の建物(=弾塑性体)」は、周期 0.1~0.5秒の地震動とは共振しないということです。実際には、周期 1~2秒の地震動に対応して等価周期で共振することになります。 ■ (同上) キラーパルスの新事実 1) 固有周期 0.1~0.5秒の「普通の建物」に、全壊や大破など大きな被害をもたらす地震動は、周期が 1~1.5秒、少し範囲を広げると 1~2秒の地震動です。・・・ (単純共振説の否定) 2) 「普通の建物」が被害を受けると、構造がゆるんで(=塑性化して)、固有周期が伸びていきます(=等価周期)。 3) よって、「普通の建物」の固有周期が伸びるためには、まず、ある程度の被害を受ける必要があります。 4) ところが、実際に大地震で確認された、「普通の建物」の被害と地震動の関係は、それを否定しています。・・・ ( 2段階破壊説の否定) 5) 要するに、固有周期 0.1~0.5秒の「普通の建物」が地震動で破壊するプロセスにおいて、地震動の周期 1秒以下の成分は、必要がないことになります。 実際には、被害を受けると周期が伸びるのではなく、いきなり 1~2秒の地震動 (キラーパルス) が登場し、いきなり「普通の建物(=「弾塑性体」)」の等価周期と共振し、破壊に至らせるのです。 にわかには信じ難い、不思議な事実です。(筑波大学資料より) 東日本大震災では、周期 1~2秒の「キラーパルス」は、阪神大震災の 2~5割だった為、「M 9、震度 7」の巨大地震であった割には、「普通の新耐震建物」で全壊した建物が少なかったということです。 ここに、周期 1~2秒の地震動が来たらどうなるのか・・・、とても心配です!
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