投稿者:ウプサラタイムズ記者
その初老の男性は、身長170cmほどと巨躯とは言えない。
しかしながら、相対した記者はまるで巨大な岩山の前に立ち尽くしているかのような錯覚を覚えた。
ウラディミル・ウリヤノフ候補。
15歳より労働運動に飛び込み、ウプサラ市議4期当選、予算委員長や副議長を歴任した、61歳である。
家族は20歳年下の妻と、娘一人、
かつて「怪力ウリヤノフ」「左派の輝ける鉄の腕」とも呼ばれ、
若き頃には、成木のレッドパインを根元から引き抜いて振り回し、
たった一人で武装右翼1,000人を死者を出すことなく無力化したという(左翼の中では広く知られた)伝説でも知られている。
今回は、そんな氏との一対一でのインタビューに成功した。
------「一騎当千の伝説の政治家とお会いできて光栄です」
「まず訂正させてもらうと、あの時は一人ではなく二人だった。テールマンという名の強力な友人がいてね。それに相手は1,000人ではなく、700人だよ」
------「失礼ながら、伝説の武闘派と知られる貴方が何故ヴァーサの暴力主義に反対するように?」
「かつて確かに私は暴力をもって世界を変えようとした。だがある時酒屋で意気投合して友人になった男が居てね。
彼は右翼団体の統領だった。彼とは、暴力ではなく言論を持って戦い、思想は違えど国家のために尽くそうと約束したんだ」
------「その彼は今?」
「左派の過激主義者の手によって、夜道で暗殺された。
それ以来、私はこの腕を、故郷を、人民を救うためだけに振るうと決めたんだ」
------「辛い思い出を聞いてしまい、申し訳ありません。貴方が政治を志したきっかけは?」
「餓えから民衆を救いたい、だね。
私はロシア系移民3世としてウプサラに生まれ、父も母も極貧と餓えの中で世を去った。
一人でも多くの人間を飢えと寒さから救うのが私の使命だと思っている」
------「有力な対立候補であるユーリア氏の政策については?」
「彼女はボランティアを用いて、増税なき治安維持を唱えているが、賃金のないところに責任は生まれない。
集まるのは政治的意図を持った暴徒がせいぜいだろう。
政治家として、あらゆる手段で予算を確保し、十分に賃金の支払われる雇用を確保して、責任ある行政を完遂するのが、
経験ある政治家としての私の仕事だと考えている」
(画像は氏が武器としたものと同じサイズのレッドパイン)