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投稿者:はっちん
元記事⇒ 久留米大学医学部免疫学講座 https://www.med.kurume-u.ac.jp/med/immun/corona.html 【抜粋】 [(2) 新型コロナが感染するには?] ● 鍵と鍵穴:免疫は「鍵(リガンド)」と「鍵穴(受容体)」の関係でコントロールされています。鍵が違うと家に入れないのと同じく、ウイルスが持つ鍵(スパイク)に会った鍵穴を見つけないと我々の体には侵入できません。新型コロナウイルスの鍵穴となるのは、血圧の調整に関与しているアンジオテンシン変換酵素 2 と呼ばれる分子です。この分子を足掛かりに新型コロナウイルスは我々の細胞に空き巣のように入って来ます。ウイルスは自分自身では増える事ができません。例えるとすれば、裸(DNA または RNA)の状態です。裸で出歩くと、直ぐに太陽光に焼き殺されてしまいます。細胞内に空き巣に入り、自分に合った洋服や靴を盗み、身支度が整ったら隣の細胞に再び空き巣に入ります。つまり、空き巣をしつづける事により生き延びています。厄介な事に、ウイルスは空き巣の間に自身の複製も多数作ります。これにより、空き巣に遭う被害細胞が増え、同時にウイルスの数もネズミ算式に増えてきます。このネズミ算式に増えたウイルスが咳や大声で吐き出されると、他人に感染させてしまいます。 ウイルス達は、それぞれ異なった「鍵穴」を使います。よって、使われた「鍵穴」に依存して違った合併症が起こってきます。例えば、我々を感染症から守てくれる免疫軍の主力部隊(T 細胞)は、「CD4」と呼ばれる分子を持っています。この CD4 を「鍵穴」として使うのがエイズです。よって、免疫の主力部隊が機能しなくなり、エイズでは免疫の低下が起こってしまいます。新型コロナウイルスは、血圧の調整に関与するアンジオテンシン変換酵素 2 と呼ばれる分子を「鍵穴」として使います。アンジオテンシン変換酵素 2 は、「血を固まりにくくする作用」も持つ事が報告されています(Fraga-Silva RA Mol Med 2010 p210; FangC Blood 2013 p3023)。よって、この抑制機構がおかしくなり、合併症として血栓を起こしているのかもしれません。アンジオテンシン変換酵素 2 は腸管にも多く発現するので、下痢を起こす患者さんもいます。 また、アンジオテンシン変換酵素 2 は、舌や嗅覚神経にも多く発現しています(Xu H,Int J Oral Sci 2020)。これにより、新型コロナウイルスに感染すると、味覚異常や嗅覚異常が起こると思われます。季節性インフルエンザでも、鼻が詰まると嗅覚異常はでますし、高熱が出ると味覚異常も感じます。一方、新型コロナウイルス感染では、他に症状が何もないのに味覚異常や嗅覚異常が起こるのが特徴かもしれません。「鼻は詰まってないのに、臭いがわからない」や「元気いっぱいなのに、味を感じない」などの症状があれば、新型コロナウイルス感染が疑われるのかもしれません。 米国 662 万人、英国 27 万人、イスラエル 10 万人のスマートフォン入力情報をもとにした大規模解析結果が 2021 年 7 月 22 日に報告されました(Sudre GH、Lancet Digital Health 2021, 7/22)。PCR で陽性が確認された方のうち「43%になんらかの嗅覚異常」が認められたようです。想像以上に多い印象です。少しでも臭いの感じ方に違和感があれば、外出を控えられた方が無難です。その他の初期症状は多い順に「発熱」、「息切れ」、「咳」と報告されています。        
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