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投稿者:はっちん
新型コロナのエビデンス 元記事URL⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/ 岡田正彦 新潟大学名誉教授(医学博士)  テレビでは語られない世界の最新情報を独自に分析  正しい情報を偏りなく 今週の新情報 (2023.8.28) Q 感染しても無症状の人の体質とは? A 「風邪を一度もひいたことがない!」、「熱が出るってどんな感じかわからない?」、「食中毒になったことがない!」と言い張る人に出会うことがまれにあり、どのような遺伝子を持っているのかと、以前から興味津々でした。 新型コロナに感染した人の調査から、5人に1人は無症状であったことと、その理由が遺伝子の違いにあることが判明しました(文献1)。研究成果を発表したのは、米国、オーストラリアなどの研究者チームで、骨髄バンクに登録した約30,000人を対象に、ある遺伝子の配列を調べた上で、コロナ感染の有無と症状を、スマホを使って確認したというものです。 最終的に新型コロナの検査が陽性で、かつコロナワクチンを接種していない約1,500人が分析対象となりました。分析した遺伝子は、「細胞内に侵入したウイルスなどの断片を捕捉して細胞表面に提示する役割の物質」で、当ホームページでも繰り返し紹介してきたものです。 この物質はヒト白血球抗原と名づけられていますが、その略号であるHLAを用いて、説明を続けます。HLAの形状を決める遺伝子は個人差が大きく、無数ともいえるバリエーションが存在します。さまざまな細胞に存在していますが、とくに免疫細胞や内皮細胞での働きが重要です(文献2)。 細胞表面に提示した異物の情報を知らせる相手は、以下の図(画像⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/HLAallele.jpg )のとおり、あの「殺し屋細胞」です。 分析の結果は、米国と英国の2つの異なる骨髄バンクの登録者でも確認され、信頼性は高いと研究者たちは述べています。内容はいささか複雑なものでしたが、わかりやすくまとめると以下のようになります(文献3)。  ・無症状だった人たちの20%がHLA-B*15:01という特定のタイプのHLA遺伝子を   持っていたが、症状があった人では9%に留まっていた  ・この遺伝子を両親から受け継いだ人は、無症状であった割合が(まったく持って   いない人に比べて)8倍も高かった  ・この遺伝子を持っている人は、殺し屋細胞の機能が強力だった 特定のタイプのHLA遺伝子を持っている人では、殺し屋細胞がより強力に機能しているという結論なのですが、そのメカニズムはまだ解明されていません。 新型コロナウイルスに感染しても、2割の人はまったく無症状であり、その理由が遺伝子の違いにある、という新発見がなされたことになります。 【余 談】   HLAには、ほかにもさまざまな働きがあります。たとえば匂いの信号を伝えていることから、男女がパートナーを選ぶ際、互いを魅了し引き寄せる因子になっているかもしれない、とする研究報告もあります(文献4)。 【参考文献】 1) Augusto DG, et al., A common allele of HLA is associated with asymptomatic SARS-CoV-2 infection. Nature, Aug 3, 2023. 2) Yarzabek B, et al., Variations in HLA-B cell surface expression, half-life and extracellular antigen receptivity. eLIFE, Jul 10, 2018. 3) Abbasi J, A genetic explanation for why some people had asymptomatic COVID-19. JAMA, Aug 2, 2023. 4) Brennan PA, et al., Mammalian social odours: attraction and individual recognition. Phil Trans R Soc B, Nov 8, 2006.        
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