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投稿者:小心者
壁が1枚も無いピロティの宿命とは・・・・・ 剛性率(ごうせいりつ)とは、建築物の構造設計を行う際に、建物の剛性の上下方向のバラつきを評価するための指標で、各階の剛性(層間変形角の逆数=階高/地震荷重時の層間変形量)を全階の剛性の平均値で除した値のこと。 【概要】 建築物では、他の階に比べて極端に剛性の小さい階があると、地震荷重を受けた際にその階に変形が集中し、破壊に至る可能性があるため、可能な限り各階での剛性のバラつきをなくし、やむを得ず剛性の低い階ができる場合には破壊に至らないようにその階の耐力を高めに設定する等の配慮が必要です。 そのため、1981年の建築基準法および同施行令の改定(新耐震)において、建物の上下方向の剛性のバラつきを評価するための指標である剛性率が、同じく平面内での剛性の偏りを評価するための指標である偏心率と共に規定されました。 現在の耐震基準では、建物の規模や構造、設計の方法などに応じて、各階の剛性率が一定値以上であることを確認したり、剛性率の低い階では必要とされる耐力を割り増したりすることなどが求められています。 【ピロティのあるマンションの剛性率】 剛性率は [層間変形角の逆数÷層間変形角の逆数の相加平均] で求め各階すべて0.6以上としなければなりません。 壁の多い住居部分の各階の層間変形角は小さいのに対して、ピロティは壁が無いので層間変形角は大きくなります。 ちょうど、蒟蒻の上に石が載っているイメージです。蒟蒻の層間変形角を小さくして石に近づくように設計する訳ですが、ピロティの剛性率は [蒟蒻の層間変形角÷層間変形角の逆数の相加平均] なので、0.6以上にはできますが1.0にはなりません。 例えば、ピロティの層間変形角は1/200以下にしなければならないので柱と梁を太くして1/200としても、住居階は壁で拘束されているために層間変形角は1/250程度になります。 上記を踏まえて、下記に計算例を示します。 【計算例:8階建てマンションの剛性率を求めてみます】 ・ピロティの剛性率=200÷[(200+250×7)/8]=0.8205>0.6 ・住居階の剛性率=250÷[(200+250×7)/8]=1.0256>0.6 となります。 上記の剛性率は0.6以上なので違法ではありませんが、前述のように建築物では、他の階に比べて極端に剛性の小さい階(ピロティ)があると、地震荷重を受けた際にその階(ピロティ)に変形が集中し、破壊に至ることになります。 計算式から解るように、住居階の柱と壁との間に隙間を作り各階すべてピロティのような構造(純ラーメン)にすれば剛性率は均一になりますが、仮にそうしたとしても実際には雑壁などが悪さをして住居階の層間変形角の方が小さくなり、ピロティ部分が『せん断破壊』します。 日本建築学会HP:http://www.aij.or.jp/jpn/seismj/rc/rc2.htm の『「(1)ピロティがある建物の被害」で、「現在の耐震基準で設計された鉄筋コンクリート造建物のうち、兵庫県南部地震によって大破以上の被害を受けたものが十数棟ありましたが、そのほとんどが写真5のようなピロティの柱の被害です。」』 の資料が裏付けているように、 ● RC造・SRC造の建物でピロティのある方が弱くなります。 要は、各階の剛性率が一定値(0.6)以上であることを確認する以外に、剛性率が低い階(ピロティ)の耐力割り増しなどの配慮を本当に (どれだけ真剣に,どれだけ真面目に) してあるのかどうか、と言うことです。 しかし、ある程度耐力の割増をしていたとしても、(壁がまったく無い柱だけの)ピロティの剛性率は1.0にはなり得ませんので必然的に「ピロティに変形が集中する」ことになります。(合掌)
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