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投稿者:はっちん
元記事⇒ 久留米大学医学部免疫学講座 https://www.med.kurume-u.ac.jp/med/immun/corona.html 【抜粋】 ● 細胞性免疫と液性免疫は?:弓矢(抗体)が主に働いている状態が「液性免疫」です。一方、「細胞性免液」と呼ばれる状態では、接近戦の得意な兵隊達(細胞)が主体に働いています。つまり、「液性免疫」作戦では、飛び道具である弓矢(抗体)を用い、「細胞性免疫」作戦では急襲部隊が働きます。通常は、より強力な戦略とるため両方が混在します。「鍵」を持たない病原体は、細胞の中に空き巣に入れません。よって、細胞の外、つまり屋外で常に生活しています。この様な敵に対しては、遠くから放った矢(抗体)でも殺すことができるので、液性免疫が主戦法になります。一方、新型コロナウイルスのように「鍵」を持った病原体は、空き巣に入り室内に潜んでいます。室内にいるため、遠くから放った矢は当たりません。この様な場合は、室内(細胞内)への急襲攻撃が必要となり、接近戦の得意な部隊が導入されます。この急襲部隊が、Th1 細胞が指揮をとる「細胞性免疫」となります。 Th2 細胞部隊は「液性免疫」に関与するため、「Th2 細胞が減れば抗体はできない」と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、完全な誤解です。感染症の時の抗体産生は、Th1 細胞が主に援助しています。Th2 細胞が「液性免疫」と呼ばれる所以は、Th2 細胞が特異的に産生するインターロイキン-4(IL-4)と呼ばれるサイトカインにあります。IL-4 の役割は特殊で、感染症で増加する IgG や IgA と呼ばれる抗体とは異なり、IgE と呼ばれる抗体を作りだします。この IgE が花粉症などの I 型アレルギーを直接起こします。よって、「I 型アレルギーの機序では、Th2 細胞が液性免疫の主役」となります。一方、感染症で増加する IgG の産生はより複雑で、多くの種類の細胞が関与します。 ● 免疫がウイルスを殺すには?:ウイルスは我々の細胞に空き巣のように侵入して、初めて増える事ができます。よって、空き巣をしている最中、すなわち、まさに増えようとしているところを狙えば、ウイルスを一網打尽にすることができます。この一網打尽に貢献しているのが、IgG 型の弓矢(抗体)です。B 細胞が、空き巣被害にあっている最中の細胞に矢を放ちます。これを目印に、強者揃いの自然免疫細胞と T 細胞達が細胞を取り囲みウイルスを一網打尽にしてくれます。一網打尽の方法は、ウイルスが潜んでいる細胞を丸ごと食べてしまうか(貪食)、細胞の中に接着剤のような毒を流し込んで、細胞ごとウイルスを固めてしまうかです(抗体依存性細胞障害)。また、B 細胞は「中和抗体」と呼ばれる特殊な矢も放ちます。中和抗体は、新型コロナウイルスが細胞に空き巣に入るために必要な鍵(スパイク)に引っ付き、鍵穴に差し込めないようにします。これにより、ウイルスは空き巣に入れなくなり、増える事ができずに死んでしまいます。よって、例外はありますが、ウイルスに特異的な IgG 型の抗体を持つ人はウイルスから守られ、そして他人にうつさない事になります。 命中した矢(IgG)を目印に自然免疫部隊と T 細胞部隊が新型コロナウイルスに総攻撃を加えて一網打尽にしてくれる事が 11 月 3 日に 2 つのグループから報告されました(Zohar T,Cell 2020, 11/3; Chen Y,Cell 2020, 11/3)。新型コロナウイルス感染で亡くなられた方では、IgG(特に IgG1)の量が増えず、IgG によって導かれる自然免疫部隊と T 細胞部隊の攻撃も起こらないようです。一方、亡くなられた方にも、自然免疫部隊と T 細胞部隊の攻撃を誘導できない IgM や IgA の増加は認めているようです。また、「敵の鍵をねらう IgG」の濃度が早く上昇する患者さんほど、新型コロナウイルス感染からの回復も早いようです。        
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