投稿者:はっちん
新型コロナのエビデンス 元記事URL⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/
岡田正彦 新潟大学名誉教授(医学博士)
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今週の新情報
(2024.1.29)
Q&A 死亡統計にコロナワクチンは影響を与えたか?
「新型コロナウイルスが大流行していたころ、統計上の死亡者数があきらかに増えていた」と、結論している論文が世界的に多くなっています(文献1,2)。このテーマについて、最新情報を交え改めて検証してみました。
次のグラフ(画像①⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/choukasibou.jpg )は、過去18年間の日本人の死亡者総数を厚生労働省のデータからまとめたものです(文献3)。グラフには、75歳以上人口の推移も点線で表示し、単位を右端の目盛りに付記してあります(文献4)。
<グラフ①:1年間の総死亡者数(2005年~2022年)⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/choukasibou.jpg >
棒グラフで示した死亡者数は、右肩上がりに増加してきたことがわかります。新型コロナ感染症が世界中に広がったのが2020年、コロナワクチンをほとんどの人が接種したのが2021年でした。2023年以降のデータはまだ公表されていません。
右端の2022年は、死亡者数が少し増えているように見えます。理由として思いつくのは、「新型コロナ感染症で亡くなった人が多かったから」、あるいは「コロナワクチンの副作用で亡くなった人が多かったから」ということではないでしょうか。
しかし、このような人口動態のグラフを解釈する際には、気をつけるべき点が2つあります。
まず第1に、人口動態の変化には、さまざまな要因が複雑に絡んでいることです。棒グラフで示した死亡者数の変化は、点線で示した75歳以上人口とほぼ比例していますので、高齢者が増えてきたことによる、単なる自然増かもしれません。次のグラフ(画像②⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/nenrenbetusibo.jpg )は、年齢ごとの死亡率を表わしたものですが、確かに死亡者のほとんどが75歳、あるいはそれ以上の世代となっています。
<グラフ②:年齢層別1年間の総死亡者数(2005年~2022年)⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/nenrenbetusibo.jpg >
第2に考えるべきことは、死亡者数の推移には不規則な凹凸があり、理由もはっきりしないことです。例外は、2011年に死亡者数が少し増えていた点です。この年は東日本大震災があり、行方不明者と震災関連死を含めて22,294人の死亡者が確認されたと発表されていました。
2022年も、死亡者数が増えているように見えます。厚生労働省が発表している死亡診断書の分析によれば、病名欄のどこかに「新型コロナ感染症」との記入があった事例が計60,820人でした(文献5)。
この2つの年における「特別な出来事による死亡者数」を、それぞれオレンジ色に変えたのが次のグラフ(画像③⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/choukasibou2.jpg )です。どちらも実測データが残されていたために言えることであり、それ以外の隠れた要因をこのグラフの変化から読み取るのはきわめて困難です。
<グラフ③:1年間の総死亡者数(2005年~2022年)⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/choukasibou2.jpg >
とくにコロナワクチン接種が原因で死亡した人がどれくらいなのか、真実をあきらかにする必要があります。しかし厚生労働省の発表によれば、2023年9月現在で「新型コロナワクチン健康被害補償認定」を受けたのは269件に過ぎません。国民の8割以上がコロナワクチンを打ったいま、新型コロナ感染症が原因なのか、あるいはワクチン接種が原因だったのか、判別の難しさも背景にあります。
さらに、コロナ禍にあって、死亡者数の増減には以下のような要因も影響を与えていたと分析されていて、事態はいっそう複雑なのです(文献1)。
・ 医療機関がコロナ感染者の対応に追われ、一般診療が十分に行われなかった
・ 感染を恐れて、受診を控えた人が多かった
・ 過剰なPCR検査により脳卒中、がん、心臓病など真の病名がコロナ死にされた
・ マスク着用などの対策が徹底され、インフルエンザなどによる死亡が減少した
・ 人々の行動が制限され、結果的に大気汚染などが一時的に改善した
本テーマは、当ホームページのQ0「超過死亡という言葉にご注意!」(※1)でも取り上げました。その折、正しい解釈には高度な統計処理が必要である点について述べた上で、「死亡統計だけから軽々しく結論を出すのは控えるべき」とのまとめを行いました。この記事に対しては、今日にいたるまで、さまざまなご意見が寄せられています。
(※1:記事⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/index_covid.html#PQ0 の(2)を参照)
(※1:記事⇒ https://rara.jp/royal_chateau_nagaizumi/page2041#2673 )
このような死亡統計からワクチンの被害をあきらかにしたいとの願いは、やはり叶えるのが難しいようです。
【参考文献】
1) Paglino E, et al., Monthly excess mortality across countires in the United States during the COVID-19 pandemic, March 2020 to February 2022. Sci Adv, Jun 23, 2023.
2) Lewnard JA, et al., Attributed causes of excess mortality during the COVID-19 pandemic in a south Indian city. Nat Commun, Jun 15, 2023.
3) 『e-Stat 統計で見る日本』, 政府統計の総合窓口, 2024年1月アクセス.
4) 『性・年齢階級別にみた死亡数・死亡率(人口10万人対)の年次推移』, 厚生労働省, 2024年1月アクセス.
5) 『人口動態統計における死因別死亡数との比較』, 厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001196409.pdf, 2024年1月アクセス.