投稿画像
投稿者:はっちん
元記事⇒ 久留米大学医学部免疫学講座 https://www.med.kurume-u.ac.jp/med/immun/corona.html 【抜粋】 ● 新型コロナの感染方法:新型コロナウイルスは、鍵を鍵穴である「アンジオテンシン変換酵素 2」に差し込んで細胞内に入ってきます。しかし、鍵を差し込んでも、扉は開きません。鍵を回さないといけないわけです。この回す役を担うのが、我々の細胞がもつ酵素で、「TMPRSS2」と呼ばれるセリンプロテアーゼや「FURIN」と呼ばれるプロタンパク質転換酵素です。実際には、回すわけでなく、鍵が鍵穴に差し込まれると、差し込まれた鍵を足掛かりに、TMPRSS2 が新型コロナウイルスを細胞に融合させます。すなわち、二人が一人になるという事です。これにより、新型コロナウイルスが細胞内に入り込んできます。侵入したウイルスは、細胞の部品を奪いネズミ算式に増え始めます。また、新型コロナウイルスは、細胞の持つ酵素を利用しなくても自ら鍵を回せる可能性も 7 月 21 日に報告されています(Cai Y,Science 2020 7/21)。 10 月 20 日に 2 つのグループにより同時に発表された報告によると、新型コロナウイルスが「FURIN」を利用して鍵を回すときには、血管内皮細胞に多く発現する「ニューロピリン 1」呼ばれる分子による橋渡しが必要なようです(Daly JL,Science 2020, 10/20; Cantuti-Castelvetri L,Science, 2020, 10/20)。 ノーベル賞を今年受賞されたゲノム編集技術 CRISP を用いて、細胞に数千種類の遺伝子を各々欠失させ新型コロナウイルスが持つ鍵(スパイク)を発現させた水疱性口内炎ウイルスを感染させた生体外の実験結果が 10 月 15 日に報告されました(Wei J,Cell 2020, 10/15)。これまで報告されたように、アンジオテンシン変換酵素 2 を無くすと、ウイルスは感染できないようです。一方、これまでの報告とは異なり、鍵を回す役目を担うと考えられていた、「TMPRESS2」や「FURIN」と呼ばれる酵素を無くしても、ウイルスは感染できるようです。しかし、鍵を回せる可能性のあるもう一つの分子である「カテプシン L」を無くすと、ウイルスは感染できなくなると報告されています。 また、我々の身体の中で機能しているのは遺伝子ではなくタンパク質です。複雑なステップにより、遺伝子がタンパク質に変えられて始めて機能します。第 1 ステップでは、「転写因子」と呼ばれる分子が DNA に結合する必要があります。しかし、DNA はヒストンと呼ばれる土台にきつく巻き付いているため、転写因子が引っ付ける空間がありません。よって、きつく巻き付いた DNA を緩めてやる必要があり、「エピジェネティクス」と呼ばれる機序が、この仕事を担います。例えば、糸巻には糸がぎゅうぎゅうに巻き付いているため、巻き付いている糸を針穴に通す事はできません。針穴に通すためには糸巻に巻き付いた糸を緩めて手繰る必要があります。針穴に糸が通せれば、裁縫が始められるように、転写因子が DNA に引っ付くことができれば、その後は RNA、そして蛋白へと順調に変換されていきます。新型コロナウイルスは「HMGB1」と呼ばれる酵素を介して、DNA をほぐしてアンジオテンシン変換酵素 2 の発現に必要な転写因子を DNA に引っ付けている可能性が報告されました(Wei J,Cell 2020, 10/15)。すなわち、新型コロナウイルスは空き巣に入るために必要な鍵穴を我々に作らせる潜在能力を持つのかもしれません。 ウイルスが細胞に空き巣に入り、細胞の部品を盗んで増えた後は、細胞から出て行き次の標的を襲います。 すなわち、ウイルスが感染を拡大させるには細胞から出て行く必要があります。免疫軍はウイルスが潜んでいる細胞を、まずセメントでウイルスごと固めた後に爆破(アポトーシス)します。しかし、セメント漬けを忘れて爆破(壊死)してしまうと、ウイルスは撒き散らかされてしまいます。また、ウイルス自体は細胞の分泌機能を利用して外に出ることもできます。流し台の排水口を利用して外に出ていく状態です。新型コロナウイルスは、他のウイルスとは異なった方法で外に出て行く可能性も報告されました(Ghosh S,Cell, 2020, 10/27)。細胞は、老廃物や病原体を処理できる、掃除機のような機能を持つ「リソソーム」と呼ばれる小器官を持っています。新型コロナウイルスはリソソームを利用して外に出て行けるのかもしれません。例えば、掃除機に入りこみ排気口から外に吹き出されるような状態かもしれません。        
投稿記事
画像を拡大