ひろば
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ユヴァル・ノア・ハラリの著書
雪谷旅人 投稿日:2020年01月24日 21:19 No.601
ユヴァル・ノア・ハラリ著,柴田裕之訳(河出書房新社)
A. サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福
B. 21 Lessons 21世紀の人類のための21の思考
C. ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来

これらの本はいずれもイスラエルの歴史学者・哲学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏の著作だ。Aは人類の歴史,Bは現代,Cは未来を描いたものだ。私は正月休みにBを読み,その後Aを読んだ。Cはこれから読もうと思う。

Bは現代社会で「いま何が起きているか,そしてあなたはどう生きるか」が書かれているが正直あまり印象に残ったものはない。ITとバイオテクノロジーが今後の世界を一変する。必要な技能は時代によって激しく動いており,一生同じ会社で同じ仕事をすることは不可能だ。これからの教育は知識ではなく情報の探索と処理,活用することを教えなければならないという。ただ,これらのことは
リンダ・クラットン,他著「LIFE SHIFT--100年時代の人生戦略」(東洋経済新報社)
などですでに書かれていることで特段に新しいことではない。「どう生きるか」を最後まで期待したが,最終章で「瞑想せよ」と言われて多少ズッコケた。(著者は1日に2時間瞑想するという。テレビでも語っていた。)

それとは対照的に,Aはホモサピエンスの歴史を全地球的な観点から俯瞰的に画いている。
・ホモサピエンスはなぜ他の人類種に凌駕して世界を征服できたのか。(認知革命)
・狩猟社会から農業社会への変革はどのような影響があったか。それは進歩だったのか。(農業革命)
・宗教や法制度,人権,政府,国家などはすべて虚構だ。最強の虚構は貨幣。
・近代になって世界は爆発的な進歩と遂げた。それはなぜか。(科学革命)
・なぜ欧州が世界の覇権を握ることになったのか。
・ここ70年は平和の時代。大きな戦争がなかった。それはなぜか。
・ITとバイオテクノロジーで今後の世界は一変する。それは人類にとって幸せか。

単なる歴史事実の羅列ではなく,「なぜか」が書かれていて興味深い。さらに随所に紹介されたエピソードが彩りを添えている。例えばクック船長は長い航海で船員が壊血病になるのはビタミン不足が原因だと見抜き,ザワークラウト(酢キャベツ)を大量に積載したという。このような挿話がこの本をさらに興味深いものにしている。

歴史を振り返り,今ある自分の立ち位置を確認するにはよい本だ。歴史の必然と偶然が折り重なって今日の世界があり,日本があり,自分がある。「私」が古代人類のDNAを引き継いでいると思うと,何か神秘的なものさえ感じる。素晴らしい本だ。ご一読をお勧めします。