ひろば
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心に残る旅---年末に想う
雪谷旅人 投稿日:2019年12月26日 20:42 No.580
「シニア・トラベラーの会(STF)」が発足して5年半。この5年余りの私の海外旅行を振り返る。STFができるまで,私はほとんど一人旅だった。年に数回,一人で計画し,一人で旅立った。最近はほとんどSTFのメンバーと楽しく賑やかな旅を続けている(リスト参照)。いつも豊かな仲間に恵まれ,80代を迎えた私の人生に彩を添えてくれている。

奇妙なことに,STFに私が関わったきっかけは14年2月のパタゴニア一人旅だった。このとき私は,最後の訪問地,南米の最南端ウシュアイアで独り食事をしていた。今でもはっきり覚えている。Moustacchioというイタリアン・レストランだ。近くにアメリカ人シニアの団体20名ほどが席を取り,にぎやかに食事をしていた。それが本当に楽しそうだったので,「私もそういうグループに入りたいな」と思った。それから3カ月,5月13日には「シニア・トラベラーの会」の代表を受けることになった。

一人旅でもSTFのグループ旅行でも,旅は楽しい。私は山が好きなので,とくに山岳の絶景は強く印象に残る。しかし,単なる「絶景」と異なり,その背景に「人間の物語」があれば絶景は一層強く心に残る。これまでの旅でとくに印象に残ったのはそういう「物語」だ。印象の強いものから順に挙げよう。

最も壮大な旅は「人類一万年の旅」だ。アフリカで生まれたホモサピエンスがアジアからアリューシャン,北米から南米へ,そして最南端のウシュアイアに到達するまで1万年かかった。人類はなぜウシュアイアのような極寒の地に来なければならなかったのか。それを確かめるため,2014年2月,一人パタゴニアへ旅立った。関野吉春の「グレートジャーニー」は逆行でそれを証明しょうとする。印象深い本だ。
http://www.currentec.jp/Blog/Patagonia/contents_html/Patagonia_00.html

次に心に残っているのは雲南省の聖なる山「梅里雪山」だ。日中合同登山隊は1991年にこの山の山頂を目指すが麓の明永氷河の上部で雪崩に合い,17名全員が死亡する。残された小林尚礼は遺体・遺品の捜索に半生を捧げ,「梅里雪山--十七人の友を探して」という本を書く。氷河の下の部落民は「聖なる山が汚された」と怒るが,ついには和解して共に捜索に携わる。その物語が美しい。その後中国政府はこの山の登頂を禁止した。チベットの民に崇拝されている聖山の夜明けは何とも言えない感動的な場面だった。
http://www.currentec.jp/Blog/Yunnan/contents_html/Yunnan_00.html

インカの旅もアントワーヌ・ダニエルの「インカ」三部作で一層印象的な旅になった。史実にもとづくインカの歴史にアヤナメという仮想の少女を絡め,読み物としても非常に面白い。スペイン軍は一瞬のうちにインカ帝国を滅ぼし,宝物を搾取し,奪った金で教会を建てる。クスコやサクサイワマンで現地を見るとその戦いがありありと目に浮かぶ。しかし,教会の土台になったのはインカの技術によって作られた精巧な石垣だ。戦いに負けてもよい技術は永遠に残る。
http://www.currentec.jp/Blog/Inka/contents_html/Inka_00.html

ルーマニアの旅もみやこうせい氏の著書で一層輝きを増す。みや氏はマラムレシュの小さな村で半生を過ごし,喜怒哀楽を村人と共にする。「日本の田舎の原風景」が維持されているこのあたりでは,今でも私たちが「日本人?みやこうせい」と声をかけられる。そう言えばマチュピチュ村では村長だったノウチさんのことは誰でも知っていた。
http://www.currentec.jp/Blog/Romania/contents_html/Romania_00.html

単なる「絶景」に終わらず,その背後にある人間の物語。これからも大好きな読書を糧に心に残る旅を追求して行きたい。