←安全・安心ガラス設計施工指針 (財団法人日本建築防災協会 平成23年2月) 地震や台風でガラスが破損することは通常は心配ありませんが、想定を越えた地震や台風が発生する可能性はあります。 ◆ガラスの持つべき安全性能 災害に対して、ガラスが持つべき安全性能としては、以下のように大別されます。 1) 破片が飛散しにくいこと 2) 破片が鋭利でなく、小片であること 3) 加撃物が貫通しにくいこと 万が一、地震、台風・突風等によって破損した際の飛散防止には、合わせガラスと網入ガラスが有効であるといえます。 一方、破片が小片であるという点からは、強化ガラスが挙げられますが、ガラス破片の飛散や耐貫通性という面から、安全性能としては十分ではありません。 また、地震時の破損では面内変形の他に人体や什器などの衝突による破損も考えられます。 この場合、網入ガラスは耐貫通性能があまり高くないので、 ◆やはり、 『 合わせガラス 』 が最も適したガラスであるといえます。(上図参照) (防犯ガラスとしても有効) ※なお、合わせガラスへの交換が不可能な場合には、既存のフロートガラス面に 50 μ (ミクロン) 程度の飛散防止フィルムを貼ることで、一定の防災効果は得られます。 ******************************************************************************* 標準管理規約 第22条(窓ガラス等の改良) 1. 共用部分のうち各住戸に附属する窓枠、窓ガラス、玄関扉その他の開口部に係る改良工事であって、防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上等に資するものについては、管理組合がその責任と負担において、計画修繕としてこれを実施するものとする。 2. 管理組合は、前項の工事を速やかに実施できない場合には、当該工事を各区分所有者の責任と負担において実施することについて、細則を定めるものとする。 第2項は、開口部の改良工事については、治安上の問題を踏まえた防犯性能の向上や、結露から発生したカビやダニによるいわゆるシックハウス問題を改善するための断熱性の向上等、一棟全戸ではなく一部の住戸において緊急かつ重大な必要性が生じる場合もあり得ることにかんがみ、計画修繕によりただちに開口部の改良を行うことが困難な場合には、各区分所有者の責任と負担において工事を行うことができるよう、細則をあらかじめ定めるべきことを規定したものである。 |
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Ⅱ番館 南面サッシの板ガラス・・・ ◇ 南面サッシ (引違窓) の透明フロート板ガラス ・ ガラス構成: 単板 ・ 支持条件: 4辺 ・ ガラス品種: フロート ・ 1枚のサイズ: 約 820mm x 1,760mm ※ 風圧荷重算定および4辺支持のガラス強度判定は国交省告示第 1458号による。 1. 建設地: 静岡県駿東郡 ( 基準風速: 34m/s ) * 表示一部省略(上図参照) 6. 地表面粗度区分: Ⅲ (一般地) 7. 再現期間: 100年 (一般的な建物 <板協推奨基準>) ◆ 必要板厚計算結果: 5mm (上図参照) Ⅱ番館 ... 設計風圧力(正圧)/許容風圧力 = 2階: 0.73 4階: 0.85 6階: 0.92 8階: 0.97 |
◇ サッシ枠の変形とガラスの移動 地震時の建物の変形 (層間変位) によってサッシ枠が変形する場合、はめ込み枠とガラスとのエッジクリアランスによって変形を吸収して、ガラスの破損を防ぎます。 サッシ枠の変形量に対して十分なエッジクリアランスを確保しておく必要があります。 サッシ可動部 フロート板ガラス 厚 5mm グレイジングビード構法でのエッジクリアランスが標準施工数値の場合 (余裕はみていないケース) では、 ・ はめ込み枠 (障子枠) の変形量 (= ガラスの移動量) が 2b = 6mm を超えた場合にガラスが破損します。(上図) ・ なお、ガラス下部にはセッティングブロックが配置されるため、実際には上図のようなガラスの回転は起こらず変形対応の更なる効果は見込めません。 ・ ただし、引違窓の場合は、障子枠と周囲枠間の“ 逃げ ”が初期の変形に対抗するため、FIX窓に比べれば耐震性は高くなります。 ・ クレセントが掛かっている場合は、周囲枠が変形するときの力がクレセントに“ せん断力 ”として集中します。 1) クレセントが壊れない場合 ・・・ はめ込み枠 (障子枠) の変形量 (= ガラスの移動量) が 2b を超えた場合にガラスが破損します。 2) クレセントが壊れた場合 ・・・ 周囲枠変形後に残されている障子枠と周囲枠間の“ 逃げ ”が 0 (ゼロ) になったのち、障子枠の変形量が (2b) を超えた場合にガラスが破損します。 |
ガラス品種と破壊特性 地震時の破損では面内変形の他に人体や什器などの衝突による破損も考えられます。 ◇ 割れたガラスの飛び散り防止フィルム 地震の時は、家具が倒れてくることも危険ですが、ガラスが割れて怪我をするケースも多々あります。 ガラスはもろいので、完全に割れないようにする事は難しいですが、割れてしまったガラスが細かく飛び散らないようにする事は出来ます。 ガラス飛散防止シートは飛び散りを防ぐ側 (人がいる側)、窓ガラスなら室内側、食器棚は外側から張る必要があります。 「食器棚の開き扉防止ストッパーをつけていたものの、ガラスが割れて中の食器が飛び出してきた」 という笑えない話もよく聞きますので、決して安心はできません。 ガラス飛散防止フィルムやシートは、ガラスの飛散を防ぐためにガラスに直接張り付ける事になりますが、フィルムを張っても窓から入る明りが遮断されたり、曇ってしまう事はほとんどありません。 地震で倒れたりしてガラスが割れる以外に、台風などの強風や日常生活で異物がガラスにあたって割れてしまった場合にも、飛び散るのを防ぐ事ができます。 さらには、紫外線遮断効果のあるものや、窓の結露を防ぐことが出来るものもあります。 個人で簡単に張る事が可能ですので、窓ガラスや食器棚の地震対策に不安のある方におすすめします。 |
Ⅰ番館 南面サッシの板ガラス・・・ ◇ 南面サッシ (引違窓) のフロート板ガラス ・ ガラス構成: 単板 ・ 支持条件: 4辺 ・ ガラス品種: フロート ・ 1枚のサイズ: 818mm x 1,760mm * 風圧荷重算定および4辺支持のガラス強度判定は国交省告示第 1458号による。 1. 建設地: 静岡県駿東郡 ( 基準風速: 34m/s ) * 表示一部省略(上図参照) 6. 地表面粗度区分: Ⅲ (一般地) 7. 再現期間: 100年 (一般的な建物 <板硝子協会推奨基準>) ◆ 必要板厚計算結果: 5mm (上図参照) 【 Ⅰ番館 】 ... 設計風圧力(正圧)/許容風圧力(※1) = 1階: 0.64 2階: 0.68 3階: 0.75 4階: 0.81 5階: 0.85 6階: 0.89 (※1) 下記式から当該サッシの板ガラスの許容風圧力は 2,344N/m2 となる。 ( 従来単位換算 ≒ 239kgf/m2 ) ----------------------------------------------------------------------- P = ( 300・k1・k2 /A )・( t + t^2/4 ) P: ガラスの許容耐力もしくは許容風圧力 [ N/m2、または Pa ] A: ガラス見付面積 [ m2 ] t: ガラスの厚さ(※2) (※3) [ mm ] k1: ガラスの種類に応じた係数 k2: ガラスの構成に応じた係数 (※2) 合わせガラスは中間膜を除いた各ガラスの呼び厚さの合計。 (※3) 複層ガラスは構成する各ガラス厚さ。 k1: ・ 普通板ガラス ( 1.0 ) ・ 磨き板ガラス ( 0.8 ) ・ フロート板ガラス * 厚さ 8 mm以下 ( 1.0 ) * 厚さ 8 mmを超え 12 mm以下 ( 0.9 ) * 厚さ 12 mmを超え 20 mm以下 ( 0.8 ) * 厚さ 20 mm以上 ( 0.75 ) ・ 倍強度ガラス ( 2.0 ) ・ 強化ガラス ( 3.5 ) ・ 網入,線入磨き板ガラス ( 0.8 ) ・ 網入,線入型板ガラス ( 0.6 ) ・ 型板ガラス ( 0.6 ) ・ 色焼付ガラス ( 2.0 ) k2: ・ 単板ガラス ( 1 ) ・ 合わせガラス ( 0.75 ) ・ 複層ガラス ( 0.75 x ( 1 + r^3 )) r: P を計算しようとする複層ガラスのそれぞれのガラス厚さに対する対向ガラス (複層ガラスとして対をなすガラス) の厚さの割合。 ( 2 を超える場合は 2 ) |