風圧力W(N/m2)は、W = 0.56×C×V^2 で計算されます。 [W:風圧力、C:風圧係数、V:瞬間風速 (係数0.56は台風時を想定しています。台風時以外は0.61を用います)。] 当マンションバルコニー側窓(以下当該窓)には単板フロートガラス(FL)[幅818mm×高さ1760mm(ガラス面積≒1.44m2)]が4辺固定で嵌っています。 単板フロートガラス(FL)4辺固定の許容荷重は、 ・FL4(厚4mm)で2400N ・FL5(厚5mm)で3375N です。 当該窓に嵌っているガラスの許容風圧力(N/m2)は、 ・FL4の場合:2400N/1.44m2≒1666N/m2 ・FL5の場合:3375N/1.44m2≒2343N/m2 となります。 次に各々ガラスが破壊しない瞬間風速を求めます。(ここではC=1.0 とします) ・FL4の場合:V=√(1666/0.56×C)≒54m ・FL5の場合:V=√(2343/0.56×C)≒64m となります。 従って、当該窓のガラスはFL4で風速54.0 m/秒まで、FL5で風速64.0 m/秒までの各々正圧に耐えられるということになります。 注1) 風圧力と瞬間風速には一定の関係があることは確かですが、その対応関係を正確に求めることは困難です。耐風圧検討では、建設省告示第1454号、第1458号で規定される風圧力を使用する必要がありますが、ここでは設計風圧力と瞬間風速の対応関係を、あくまでも参考として示しています。 注2) 大気圧により空気密度などが変化するため、ここでは台風時の式を示しています。 注3) 平成12年建設省告示第1454号、第1458号では、設計風圧力を求める際の風速として平均風速を用いていますが、ここでは旧告示の風圧係数Cを用いることで瞬間風速を算出しています。風圧係数は、建物の形状や部位により異なりますが、正圧では0.5~1.0程度になります。(参照文献:斎藤平蔵,「建築気候」p207,共立出版) 注4) 風圧係数は風力係数と称する場合もあります。 ■当マンション設計風圧力(別表計算)から、当該窓には ・Ⅰ番館1階、2階:フロートガラス厚さ4mm(FL4)以上 ・Ⅰ番館3階~6階:フロートガラス厚さ5mm(FL5) ・Ⅱ番館2階~8階:フロートガラス厚さ5mm(FL5) が使われている“筈”です。 しかし、 ■風圧による曲げ破壊よりも恐ろしい衝撃による破壊! 【窓ガラスが割れる原因】 上記の瞬間風速計算の結果からも分かるように、風だけ(正確には風圧だけ)で割れることはほとんどありません。窓ガラスが割れるのは「強い風によって飛ばされてきたもの(飛来物)」が当たることによるものです。具体的な飛来物としては小石などですが、雨に濡れた洗濯物(タオルなど)でも窓ガラスが割れてしまうことがあります。 飛ばされるものが周りに何もなければかなり安心ですが、現実はそうではありません。自分の家の周りに風で飛ぶようなものを置いていなくても、隣近所や道路などから平気で飛んできます。つまり「飛来物をなくす」と言うことはほぼ不可能なわけです。 【どのくらいの風速から危険なのか=風速と安全性との関係】 風速10m~15m未満 ・風に向かって歩きにくくなる。傘がさせない。 ・樹木全体が揺れる。 ・電線が鳴る。 ・取り付けの不完全な看板やトタン板が飛び始める。 風速15m~20m未満 ・風に向かって歩けない。 ・転倒する人もでる。 ・小枝が折れる。 ・ビニールハウスが壊れ始める。 風速20m~25m未満 ・しっかりと身体を確保しないと転倒する。 ・鋼製シャッターが壊れ始める。 ・風で飛ばされたもので窓ガラスが割れる。 風速25m~30m未満 ・立っていられない。 ・屋外での行動は危険。 ・ブロック塀が壊れ、取り付けの不完全な屋外外装材がはがれ、飛び始める。 風速30m~ ・樹木が根こそぎ倒れ始める。 ・屋根が飛ばされたり、木造住宅の全壊が始まる。 このように、たった風速20m以上で窓ガラスが割れる危険性の高いことが分かります。しかも、上に書かれている風速は「最大風速」と呼ばれているもので、それよりももっと恐ろしいのが「最大瞬間風速」です。なんと最大風速の1.5倍以上の風が瞬間的に吹くことがあるのです。 と言うわけで、台風の時の窓ガラスの安全性の特徴をまとめると、 〇何も当たらなければ大抵安心 しかし、 ✖飛来物が当たると簡単に割れてしまい非常に危険! と言うことです。 ●窓ガラスに雨戸やシャッターが付いていないマンションのバルコニー側窓ガラスが最も危険と言うことです。 ●部屋内側面に飛散防止フィルムなどを貼っておけば先ずは安心です。(台風のさなかに大きな窓ガラスが割れた時のことを想像してみてください。準備不足なら間違いなくパニックになり、その後の被害は想像を絶するものに拡大していきます。) |
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最大風速と最大瞬間風速、瞬間風速と平均風速 ~お天気まめ知識~ 『最大風速と最大瞬間風速、瞬間風速と平均風速』 風は、一定の速さで吹いているものではなく、ある時は強く、ある時は弱く、刻々とその速さが変化しています。 そういう風速の絶え間ない小刻みな変化を「風の息」と呼んでいます。 ひとことで風速と言っても、平均風速や瞬間風速というように風速を求める時間によって様々な風速があります。また、最大風速などのように最大値を表す風速もあります。 上の図は、ある日の午前2時から4時の風速をグラフにしたものです。赤の線は、1分間に吹いた風の変動幅を表しています。 例えば、2時50分から3時00分までの10分間の風速の変化を見ると、一番風速が小さいときで2.4m/s、一番大きいときで25.7m/sの風が吹いています。この瞬間毎の風を「瞬間風速」と言います。また、この10分間の風速を平均すると13.8m/sになり、これを「平均風速」といいます。 また、平均風速や瞬間風速の最大値を「最大風速」、「最大瞬間風速」といい、上の図で青い○印の部分の風速になります。 「最大風速」は10分間の平均風速の最大値、「最大瞬間風速」は瞬間風速の最大値です。 天気予報や気象情報などで「風速○メートル」という場合、10分間の平均風速を指します。 ●一般的に、瞬間風速は平均風速の1.5から2倍近い値になります。 暴風警報が発表され、「25メートルの暴風の恐れがある」といった場合、瞬間風速では50メートル近い風が吹く可能性がありますので、注意が必要です。 |