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災害に係る住家の被害認定基準運用指針 平 成 2 5 年 6 月 内閣府(防災担当) 【 総 則 】 1.目的 災害に係る住家の被害認定基準運用指針(以下「運用指針」という)は、市町村が、災害により被害を受けた住家の被害認定を迅速かつ的確に実施できるよう、「災害の被害認定基準について(平成 13 年6月 28 日付府政防第 518 号内閣府政策統括官(防災担当)通知)」(以下「被害認定基準」という)に規定される住家の損害割合による場合の具体的な調査方法や判定方法を定め、的確かつ円滑な被害認定業務の実施に資することを目的とする。 2.住家の被害の程度と住家の被害認定基準等 本運用指針において判定する住家の被害の程度は、「全壊」、「大規模半壊」、「半壊」又は「半壊に至らない」の4区分とする。 「全壊」、「大規模半壊」及び「半壊」の認定基準は、下表のとおりである。 被害の程度 認定基準 ●全壊 住家がその居住のための基本的機能を喪失したもの、すなわち、住家全部が倒壊、流失、埋没、焼失したもの、または住家の損壊が甚だしく、補修により元通りに再使用することが困難なもので、具体的には、住家の損壊、焼失若しくは流失した部分の床面積がその住家の延床面積の 70%以上に達した程度のもの、または住家の主要な構成要素の経済的被害を住家全体に占める損害割合で表し、その住家の損害割合が 50%以上に達した程度のものとする。 ●大規模半壊 居住する住宅が半壊し、構造耐力上主要な部分の補修を含む大規模な補修を行わなければ当該住宅に居住することが困難なもの。具体的には、損壊部分がその住家の延床面積の 50%以上 70%未満のもの、または住家の主要な構成要素の経済的被害を住家全体に占める損害割合で表し、その住家の損害割合が 40%以上 50%未満のものとする。 ●半壊 住家がその居住のための基本的機能の一部を喪失したもの、すなわち、住家の損壊が甚だしいが、補修すれば元通りに再使用できる程度のもので、具体的には、損壊部分がその住家の延床面積の 20%以上 70%未満のもの、または住家の主要な構成要素の経済的被害を住家全体に占める損害割合で表し、その住家の損害割合が 20%以上 50%未満のものとする。 ※全壊、半壊:被害認定基準による ※大規模半壊:「被災者生活再建支援法の一部を改正する法律の施行について(平成19 年 12 月 14 日付府政防第 880 号内閣府政策統括官(防災担当)通知)」による *本運用指針においては、住家の損害割合により、住家の被害の程度を判定する場合の具体的な調査・判定方法を定めるものである。 3.住家の被害認定基準等と被害認定調査の運用 (省略) 4.適用範囲 本運用指針は、地震、水害及び風害による下表のような住家被害を想定して作成したものである。これら以外の災害で住家に被害が発生した場合、本運用指針の考え方等を参考に、被害認定基準等に基づき適切に被害認定を行う。 災害 想定している住家被害 地震 ・地震力が作用することによる住家の損傷 ・地震に伴う液状化等の地盤被害による住家の損傷 水害 (省略) 風害 (省略) 5.調査方法 災害による住家被害が発生した場合、災害ごとに定める次の方法で調査を行うこととする。なお、場合により、補遺に定める方法で調査を行うこともできる。 ●地震による被害 地震により被災した住家に対する被害調査は、第1次調査・第2次調査の2段階で実施する(調査棟数が少ない場合等においては、第1次調査を実施せず、第2次調査から実施することも考えられる)。 第1次調査は、外観目視調査により、外観の損傷状況の目視による把握、住家の傾斜の計測及び住家の主要な構成要素(外観から調査可能な部分に限る)ごとの損傷程度等の目視による把握を行う。 第2次調査は、第1次調査を実施した住家の被災者から申請があった場合に実施する。第2次調査は、外観目視調査及び内部立入調査により、外観の損傷状況の目視による把握、住家の傾斜の計測及び住家の主要な構成要素ごとの損傷程度等の目視による把握を行う。 なお、第2次調査は、原則として申請者の立会いを必要とする。 また、第2次調査は、原則として内部立入調査を行う必要があるが、倒壊の危険がある等、内部立入調査ができない相当の理由がある場合は、外観目視調査のみでも可とする。 ●水害による被害 (省略) ●風害による被害 (省略) 6.判定方法 (一部省略) ●地震による被害 (1) 外観による判定 住家の外観から判定し、一見して住家全部が倒壊している場合、住家の一部の階が全部倒壊している場合及び地震に伴う地盤被害により基礎に著しい損傷がある場合は、住家の損害割合を 50%以上とし、全壊と判定する。 (2) 傾斜による判定 (木造・プレハブの住家) (省略) (非木造の住家) 住家の傾斜が 1/30 以上の場合は、住家の損害割合を 50%以上とし、全壊と判定する。 住家の傾斜が 1/60 以上 1/30 未満の場合は、(3)により住家の損害割合を算定する際に、傾斜による損害割合を 20%とすることができる。 (注1) 傾斜は原則として住家の 1 階部分の四隅の柱又は壁の四隅を計測して、単純平均したものとする。 (3) 部位による判定 住家の主要な構成要素の損傷に係る目視調査結果等から、部位ごとに損傷率を算定し、当該損傷率に部位別構成比を乗じて得られる部位別損害割合の和を住家の損害割合とする。 住家の損害割合が 50%以上の場合を全壊、40%以上 50%未満の場合を大規模半壊、20%以上 40%未満の場合を半壊、20%未満の場合を半壊に至らないと判定する。 なお、木造・プレハブの住家にあっては、(省略)。 (注2) 非木造のうち集合住宅等の大規模なもので、全体で調査、判断することが困難な場合は、被害が最も大きいと思われる階のみを調査し、全体の損害割合として差し支えない。 ●水害による被害 (省略) ●風害による被害 (省略) 7.部位別構成比の取り扱いについて (省略) 8.集合住宅の扱いについて 原則として1棟全体で判定し、その判定結果をもって各住戸の被害として認定するものとする。ただし、住戸間で明らかに被害程度が異なる場合は、住戸ごとに判定し認定することも必要である。 ※建物全体の傾きや躯体(外壁、屋根、柱・耐力壁)の損傷は建物全体共通の被害であるため、原則として1棟全体で判定し、その結果をもって各住戸の被害として認定する。水害等により浸水した階の住戸と浸水しなかった階の住戸のように、住戸間で明らかに被害程度が異なる部位(天井、内壁、建具、床、設備)がある住戸の場合、当該被害の大きい住戸については、住戸ごとに判定し、認定することも必要である。 9.応急危険度判定及び被災度区分判定との関係 応急危険度判定は、大規模地震の直後に一般的に実施されるが、これは建築の専門家が余震等による被災建築物の倒壊危険性及び建築物の部分の落下の危険性等を判定し、その結果に基づいて当該建築物の当面の使用の可否について判定することにより、二次的災害を防止することを目的とする。したがって、落下物の除去等、適切な応急措置が講じられれば判定が変更されることもあり得る。すなわち、応急危険度判定で「危険」と判定された住家が、必ずしも全壊又は半壊と認定されるとは限らない。 また、被災度区分判定は、建築主の依頼により建築の専門家が被災した建築物の損傷の程度及び状況を調査し、被災度区分判定を行うことにより、当該建築物の適切かつ速やかな復旧に資することを目的とする。すなわち、被災建築物の損傷の程度、状況を把握し、それを被災前の状況に戻すだけでよいか、またはより詳細な調査を行い特別な補修、補強等まで必要とするかどうかを比較的簡便に判定しようとするものである。 したがって、応急危険度判定及び被災度区分判定は、災害による個々の住家の「被害の程度」を判断することを目的とした被害認定業務を行うための本運用指針とはその目的、判定基準を異にするものである。 ただし、住家の被害を調査するにあたり、傾斜度など調査内容において共通する部分もあることから、本運用指針による調査に先立ちこれらが実施されている場合に、相違を踏まえた上でその内容を活用することも考えられる。 具体的には、調査対象とする地域の設定、調査する地域の順番の決定等、被害認定調査の方針を決める際に、応急危険度判定の判定結果を参考にする。また、調査する被災住家に応急危険度判定のステッカーが貼付されている場合には、被害認定の判定の参考にすることができる場合もあるため、その判定結果及びコメントを確認することとする。 10.調査結果の記録等 調査結果(調査票、損傷状況の分かる写真等)については、被災者から求められた場合等に、住家の被害の程度の判定結果及びその理由について情報提供できるよう、適切に記録、整理しておく。 11.その他 (省略) |
「建築学会の基準」と「内閣府の基準」との乖離 この 2つの基準には大きな「乖離」がある。 驚くべきことに東日本大震災での調査結果では、 建築学会の判定基準が「小破、中破、大破、倒壊」とした建物が、り災証明書の認定基準では「全壊」と認定されたのである。 また、「無被害、被害軽微、小破」でも、「半壊」と認定された。 ( RC造マンションはこの分類が良く当てはまるケースが多い。これは、同じ RC造であっても、オフィス、学校などと比較して、マンションには細かなディテールが必要になる部分が多いため、と推測される。) ◆建築学会の判定基準 (1) 倒壊──少なくとも、倒壊した部分は、解体して建て直す必要がある。 (2) 大破──解体、または大規模な補強工事を必要とする。 (3) 中破──部分的な補強工事、または補修工事を必要とする。 (4) 小破──構造体を補強する必要はないが、非構造体の補修は必要とする。 (5) 軽微──仕上げ材の補修を必要とする。 (6) 無被害──若干のひび割れがあっても、補修は必要としない。 これに対して、 ◆り災証明書の認定基準は、 (1) 全壊──住家がその居住のための基本的機能を喪失したもの。すなわち、住家全部が倒壊したり、損壊が甚だしいため、補修しても元通りに再使用することが困難なもの。 具体的には、住家の損壊が延床面積の 70%以上、または住家を構成する主要な要素の損害割合が 50%以上に達したもの。 (2) 大規模半壊──半壊の内、損壊部分がその住家の延床面積の 50%以上 70%未満、または主要な構成要素の損害割合が 40%以上 50%未満のもの。 (3) 半壊──住家が居住に必要な基本的機能の一部を喪失したもの。すなわち、住家の損壊が甚だしいが、補修すれば元通りに再使用できる程度のもの。 具体的には、損壊部分がその住家の延床面積の 20%以上 70%未満、または主要な構成要素の損害割合が 20%以上 50%未満のもの。 このように、建築学会の判定基準と、り災証明書の認定基準は、なぜ大きく食い違うのか。 理解しなければならないのは、 ◆建築学会の判定基準は、主に「建築の構造体(柱、梁、壁)の損傷」と「人間の死傷」の関係に注目していることだ。 換言すれば、建築基準法が求める「大地震により建物が倒壊して、人間を死傷させてはならない」とする耐震基準に基づいている。 これに対して、 ◆り災証明書の認定基準は、主に「被災後の生活をどう建て直すか」という、被災者の生活実感に基づいている。 このように、2つの基準は、目指す方向が違っているのである。 ◇ 玄関のドアが開かなくなったとき 2つの基準の「判定、認定」結果が大きく異なるのは、例えば玄関ドアの被害である。 鉄筋コンクリート造のマンションで住戸の玄関に金属製のドアを取り付けるとき、おおむね、次のような方法で行う。 (1) まずコンクリートの壁に穴を開け(開口部を作っておき)、その穴にドアの枠を固定する。 (2) さらに、その枠とコンクリートの間にモルタルを充填して、ドアの枠とコンクリート壁を一体化する。 (3) 通常、ドアと枠の間には、3ミリ程度の隙間がある。 大地震でコンクリート壁が変形すると、ドアの枠も一緒に変形する。そして、枠の変形が 3ミリを超えると、ドアは開かなくなる。 このとき、ドアの枠が 3ミリ以上変形しても、 ◆建築学会の基準によると、判定は、せいぜい「軽微、小破」どまりである。 しかし、 ◆り災証明書の基準では、ドアが開閉できなければ住民は生活できないため、「住家が居住に必要な基本的機能の一部を喪失したもの」として、少なくとも「半壊」と認定されることになる。 建築学会の判定基準が、マンション居住者の立場から見ると、ある意味で「現実離れ」しているため、居住者は悩まざるを得ないことになる。 おそらく、東日本大震災ではこの事実に気づかないで、最寄りの市町村に「り災証明」の申請をしていなかったマンション管理組合もあったと思われる。 |
応急危険度判定士到着前までの自己チェックポイント! 鉄筋コンクリート建物の地震被害損傷度チェック << 専門家到着前までの自己チェックのPOINT >> 大きな地震で建物に被害が認められる場合に、緊急的に建物を使い続けても良いのかを判断するための簡単な自己チェックポイントです。 大きな地震によって建物に被害が生じている場合、その状況やそのまま建物を使い続けて良いのか確認が必要となります。 こうした判定は「応急危険度判定」といい、市町村などの行政庁から要請を受けた「応急危険度判定士」という専門家により判定するものです。 今回取り上げた「自己チェック」は、 この応急危険度判定士による判断が待てない場合に、自分で使用停止の要否を判断する材料として、建物や付帯設備の損傷度をどのように見れば良いのかというPOINTをピックアップしたものです。 建物の損傷は陰に隠れている場合もあります。このチェックで大きな被害が見つからなかったとしても、早めに専門家による確認を受けてください。また、大きな余震のあとも、繰り返しチェックを行うようにしてください。 1.まず全体を目視して、ひと目でわかるような損傷がないか確認します。 建物から離れたところから建物をぐるり一周して、すぐにわかるような被害や異常がないかを確認しましょう。 ・建物全体または一部での崩壊や落階がないか? ・基礎部分に大きな破壊や上部とのズレがないか? ・建物全体または一部にひと目でわかるような傾きはないか? ・近接建物に同じような状況が確認されないか? 一つでも確認されれば危険と判断し、使用を中止しましょう。 以下の立ち入っての調査も行わないようにしましょう。 また、下部に記載した「落下危険物の有無」についても確認しておきましょう。 2.少し近づいて周辺地盤の状況を確認します。 ●周辺の地盤に崩壊などは見られないか? A. ない B. わからない C. ある ●建物と地盤の高さに差が出ていないか? A. 段差ができているが20cm未満である B. 20cm以上1m以下の段差ができている C. 1mを超える段差ができている ●建物に傾きはないか計測する(下げ振りによる傾きの測り方:上図参照) A. 1/60未満 B. 1/60~1/30 C. 1/30を超える (注意:少なくとも1階分以上の高さで計測します。) ここまで安全が確認されたら 3.建物の内外部で壁や柱、梁などの構造体の状況を確認します。 立ち入りの際には建物内部に落下しそうな天井や空調機器、照明などがないか?などを良く確認して、脱出の経路も確保しておきましょう。 ●コンクリートの柱や壁、梁などに2mm程度以上のひび割れがあるか? A. ない B. ある 次に、最も被害が大きいと思われる階の柱の状況をチェックします。全ての柱を確認する必要はありませんが、なるべく多くの柱をチェックします。 ●損傷度4の柱の割合:幅2mm以上の大きなひび割れが多数生じ、コンクリートが剥落し鉄筋が露出している状態の柱の本数割合(該当当本数/調査した本数) A. 10%未満 B. 10~20% C. 20%を超える ●損傷度5の柱の割合:露出した鉄筋が曲がっていたり、鉄筋の内部にあるコンクリートにも潰れや破損があるような柱の本数割合(該当本数/調査した本数) A. 1%未満 B. 1~10% C. 10%を超える *構造体の状況は表面がモルタルやボード類で仕上げられ、コンクリートなど本体の状況が確認できない場合があります。また、仕上げのモルタルのみがひび割れていたり、剥離している場合もあります。これは仕上げ材が剥離したり破損しているのであって、必ずしも構造体が破損しているわけではありませんが、こうした場合は、覆っている仕上げ材を剥がすなどして、構造体本体の状況を確認する必要があります。 ------------------------------------------------------- ◎判定(応急危険度判定表をもとにした”めやす”) 以上のチェックが ・すべてAの場合・・・・・大きな問題はないと思われます。 ・Bが1つ以上ある場合・・・・・「要注意建物」となります。継続した使用については注意が必要です。対応としては当面の間使用を避け、できるだけ早めに専門家に見てもらってください。 ・Cが1つ以上またはBが2つ以上ある場合・・・・・余震の影響なども鑑み、「危険建物」として当面使用しないようにしてください。建物への立ち入りや周辺に近づくことも避けてください。また、近隣建物にもその旨を連絡して避難してもらう必要もあります。 ------------------------------------------------------- 4.構造体以外の外周落下危険物などの確認。 その他、建物構造体の危険性とは別に、建物外周での落下危険物を確認することも忘れないようにしましょう。 ・窓枠や窓ガラスに歪みや割れは見られないか? ・外装材(モルタルやタイル、石)にひび割れや落下は見られないか? ・看板や高所に取り付けた空調外機などの機器類に傾きや留め具の脱落などがないか? ・屋上の看板や空調機器類に傾きや転倒がないか? など 何れにせよ被害が認められたときは、とりあえず使用を中止し、避難を行った上で所轄の行政庁に届けるとともに、早く専門家による判定を受けることが重要です。 また、後日の「り災証明」申請の為にも、出来れば写真などを撮っておくこともお勧めいたします。 *必要な用具など ●建物の図面 ●カメラ ●建物の傾斜を測る道具として ・下げ振り(図参照) ・傾斜計 ●脚立 ●ハンマーやバールなど、仕上げ材を剥がすことができる物 など 【参照サイト】 ・耐震ネット | 鉄筋コンクリート建物の地震被害損傷度チェック:http://www.taisin-net.com/solution/taiseis_eye/87lvn700000137bu.html |