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『エネルギー自治で地域再生』諸富徹(岩波ブックレット15/6)
愉しい本棚 投稿日:2018年06月16日 20:11 No.119
▶岩波書店より
再生可能エネルギーへの投資が加速している.しかし,再エネ事業を大手企業が担っているのでは,集権的な電力供給システムの形は変わらない.本書では再エネ普及で先進的な長野県飯田市を取り上げ,地元で再エネ事業を担うことの重要性と,事業推進の過程で地域の住民自治力が涵養されることを指摘する.再エネ事業をハード面だけでなく,ソフト面とも一体のものとして分析し,将来の方向性を指し示す.

■著者からのメッセージ

 再生可能エネルギー(以下,再エネ)がいまほど注目されている時代は他にありません.日本では特に,東日本大震災と福島第一原発事故後,再エネの普及拡大が,大きな課題となっています.ただし,再エネは単に量的に増やすことだけが重要なのではありません.それが分散型エネルギーであることから,地域の持続可能な発展に寄与する可能性が十分にありますし,そのように育てる必要があります.筆者は,それを可能にする鍵が「住民自治」にあると考えています.本書は,長野県飯田市を本拠として再エネ事業を行っている「おひさま進歩エネルギー株式会社」(以下,おひさま進歩)と飯田市の事例を通じて,このことを明らかにしていきたいと思います.〔……〕
 おひさま進歩は,市民共同出資による太陽光発電事業のパイオニアであり,メガソーラー企業とは異なった,地域に根差した社会的企業のモデルとして全国に知られています.〔……〕 域外の大企業ではなく,地元企業が再エネ事業を軌道に乗せて地域再生に寄与する道筋をつけるのは,それほど簡単なことではありません.実際,多くの自治体が政策環境を整えても,「担い手不在」のために事業立ち上げに躓いてしまうことがよくみられます.そうした中で,おひさま進歩の成功が示す卓越性は,いよいよ光って見えます.〔……〕
 関わりが深くなるにつれて,改めて再エネ政策先進国ドイツと比べてもまったく遜色のない飯田市行政の先進性と,職員の力量の高さに驚くことになりました.人口規模にして約一〇万人の比較的小規模な都市が,どうしておひさま進歩という全国的にも有名な事業体を生み出すことができただけでなく,日本全国に先駆けて先進的な政策を次々と打ち出すことができたのか,そして,それを支える基盤はいったい何なのか.こうした疑問が次々と湧いてきました.〔……〕
 飯田市は先進的な地域エネルギー政策という点でも,また,地元企業や住民が協力して再エネビジネスを立ち上げていく仕掛け・仕組みという点でも,きわめて豊富な事例を私たちに提供してくれます.筆者は,そこからエネルギー自治と住民自治の関係,そして地域の持続可能な発展について,多くを学ぶことができるのではないかと思います.本書では,おひさま進歩と飯田市を,エネルギー自治の「生きた教科書」として取り上げ,その成功の秘密を探っていきたいと思います.
(「はじめに」より)