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投稿者:小心者
DLN(DH工業グループの管理会社)から建物診断の実施方針とその見積書がきた。 やはり、身内が販売した建物の診断だけに、見事なまでに無難な検査内容である。 各棟2か所実施の中性化※1試験では、散見する不具合や築21年から判断して恐らく中性化深さ2.0cm~1.7cm程度かと思うが、これを以て「あと20年以上は中性化が鉄筋に到達することはないので大丈夫」だとか言うのであろう。 残念ーん!、これは鉄筋のかぶり厚さが基準通り4.0cm(4.0センチ:地上部柱・梁の場合。図参照)ある場合の話だ! 今、現実にこの建物で起きている柱コンクリート爆裂剥離箇所のかぶり厚さは前にも書いた通り、なんと0.5cm(5ミリ)しかない。とんでもない手抜きだ! 要するに、中性化試験でいくら鉄筋のかぶり厚さ以下であることを確認しても、肝心要の躯体コンクリート内の鉄筋が正しい(基準かぶり厚さ)位置にあるのかどうかが判らなければ、それは、まったくもってナンセンスに他ならない。 電磁波レーダー法などでの『鉄筋探査(位置・かぶりの非破壊調査)』を敢えてやらないのは、このうえ更に不具合箇所が露見することを避けているとしか思えない。コンクリート中性化試験結果(イ)と鉄筋探査結果(ロ)を重ね合わせたものだけが真のコンクリート中性化判定である。いくらあと何十年は大丈夫だと言われても、(イ)のみで判断した全体評価の信頼性はまったく無いのに等しい。例えば、鉄筋探査した結果のかぶり厚さが2.0cm未満だった場合なら築21年物の中性化は既に鉄筋にまで到達していると判断することで、鉄筋腐食(酸化)の元凶である水や酸素や炭酸ガス(CO2)の侵入を断つため(表面保護,ひび割れ注入,中性化領域回復工法など)の適切な延命修繕計画が初めて立案可能になる訳である。 電磁波レーダー法による鉄筋探査(位置・かぶりの非破壊調査)費用は@6,000円/m2程度である。 当建物はバルコニー側アウトフレーム・廊下側インナーフレームのため、廊下側の柱は1面探査となる。(バルコニー側なら2面探査が可能。) 廊下側の柱面積は1フロア約2.0m2/1面(平均)なので、鉄筋探査費用(★)は@12,000円/1柱程度となり、仮に単純に各階柱2本ずつ探査した場合の費用は約34万円(14Fx2Px1.2万)である。(なお、梁主筋は柱主筋の内側に配筋されるため廊下側に見る柱梁同面躯体では常に「梁筋のかぶり厚さ>柱筋のかぶり厚さ」である故、柱のみを探査対象としている。また、実際の探査対象はスパン数に応じて各層毎に指定する。(★)は基準値以上の箇所数分のみ管理組合負担とする。) DLNからは、建物診断結果を踏まえた修繕方針や工事仕様および概算数量&概算金額が提示されるようだが、事前の報告書に配筋不具合が多数載ることだけは避けたいという考えは自ずと、建物診断実務だけはDLNが押えたいということに帰着する。この行為は部外者から見ても容易に解ることである。 この行為が齎す先にあるもの、それは、この多くの不具合を呑み込んだまま生み出された当建物の場合に於いては、まさに、告知されることのない“不治の病人”と化すだけである。病巣を見つけても既に根治不可である・・・。但し、まともな技術を以て最善の処置がなされたならば延命は可能の筈である。 ※1・・・コンクリートの中性化と「かぶり」 コンクリートは主成分がセメントであるため内部がアルカリ性であるが、外部からの炭酸ガス(CO2)の侵入によって別の化学物質となり、その結果、コンクリートはアルカリ性を失い中性になる。中性になると鉄筋の不動態被膜※2(バリア)が失われ腐食が始まる。これが鉄筋コンクリートの「中性化」である。 そのため、構造物を使用し続ける予定の期間内は中性化による被害をくい止められるように鉄筋コンクリートには「かぶり」と呼ばれる3~7cm以上(学会基準)の中性化から鉄筋を守るための層をもって余裕を持たせている。但し、それはコンクリートがちゃんとしたものであればの話であり、工事中に加水や型枠早期脱型などの手抜き工事を行った場合はこの限りではない。 コンクリートの「中性化」によって不動態被膜(バリア)を失った鉄筋は空気中の酸素によって錆びていき、鉄は錆びる際に体積が膨張するので、コンクリートの内部から鉄筋が膨らもうとする力が働き、コンクリートはその力に抗しきれず、ひび割れを起こす。そうして出来たひび割れを伝って、また新たな錆びの原因となる水や酸素、そして炭酸ガス(CO2)が入り込む・・・。まさに死への一途を辿るのみである。 中性化深さの計算は一般的には、岸谷式の水セメント比(w/c)=0.6 普通ポルトランドセメント使用の場合の次式が良く使われる。 t=7.2・X^2  (tは年数、Xはcmである。) ※2・・・鉄筋の不動態被膜 コンクリート中を満たす「水酸化ナトリウム」や「水酸化カリウム」というアルカリ性(pH12~13)の水溶液がある場合に鉄筋表面に形成される緻密な皮膜(20~60オングストロームの酸化膜)のこと。コンクリートがアルカリ性を維持していれば、この不動態被膜(バリア)で鉄筋は覆われているため腐食しない。しかし、コンクリートが中性化してくれば不動態被膜は破壊され消失してしまう。その結果、鉄筋表面は活性態になり酸化(腐食)が始まる。(また、塩化物イオンによっても不動態被膜は破壊される。←海砂混入コンクリートなど) 【関連記事】 ・鉄筋のかぶり厚さ不足 <RC造柱の帯筋が露出!> ( No.255 ):http://rara.jp/royal_chateau_nagaizumi/page255
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