投稿者:どら春
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あん (日、仏、独合作) 2015年 日本国内 1位~50位映画興行収入ランキング ランク外
監督 河瀬直美
脚本 河瀬直美
音楽 David Hadjadi 主題歌 - 秦基博「水彩の月」
主演 永瀬正敏(千太郎)、樹木希林(徳江)
登場人物
千太郎 : どら焼き屋『どら春』の雇われ店長。
徳江 : 手の不自由な老婆
ワカナ : 高校受験を控える中学生。
佳子 : 徳江の長年の友人。
どら春のオーナー : 店主である夫がどら焼き屋を千太郎に任した。
ワカナの母 : ワカナと二人で暮らしている。
陽平 : ワカナの先輩で高校生。
若人 : どら春のオーナーの甥。
【起】
春になると桜の咲き乱れる公園のそばに小さなどら焼き屋があります。
学校帰りの中学生がたむろしていたり、時折買いに来てくれるお客さんがあたったりする店の雇われ店長千太郎は、決してどら焼きや甘いものが好きなわけではないのだが、訳あって先代から店を任されており、ただ、毎日、黙々とどら焼を焼き続けています。
ある日、そんな千太郎の店に「アルバイト募集」の張り紙を見て、ひとりの老婆が訪ねてきました。千太郎は何度もことわりましたが、彼女は自分が作ったものだという「あん」を置いていきました。
捨てようと思ったそのあんを食べた千太郎は、そのあまりの旨さに驚き、そしてついに彼女を雇うことにしました。
彼女の名前は徳江といい、町はずれの住所を書いて帰って行きました。
【承】
翌日からどら焼き屋に徳江はあんを作りにやってきました。
徳江の作るあんは特別でした。甘いものが苦手な千太郎でさえ、その味のとりこになってしまうぐらいです。
あんを作って50年という徳江のあんづくりは、豆のひとつぶひとつぶの声を聴きながら丹精込めて作り上げていくものでした。
それまで千太郎が使っていた業務用の一斗缶にはいったものとは大違いで、そのため、店には行列ができる日がくることがあるくらいでした。
千太郎も、最初はあんを作ってもらうだけのつもりだったのですが、そのうちに店を手うだってもらうようになり、店の常連の中学生たちまでもが、どら焼きはもとより徳江を慕って店にくるようになりました。もちろん、ひとりぼっちのわかなちゃんもです。
そんなある日、店のオーナーが千太郎のもとに血相を変えてやってきました。
【転】
オーナーは、「徳江はハンセン病という病気かもしれない。店に来た私の友達が言っていたもの。そんなことが町に広がったら大騒ぎになって、店もやっていけないようになるから早く辞めさせてほしい。」と言うのです。
確かに千太郎も彼女が手が少し不自由なのには気がついていました。
そして、徳江が書いていった住所を見てみると、そこは町はずれにあるハンセン病の療養所でした。
しかし、徳江と徳江の作るあんを手放すことができなくなっていた千太郎は、オーナーに猶予をもらうように頼むのですが、やがて、行列ができていた店が誰も来なくなりました。徳江の病気のことが広まってしまったのでした。
そして、徳江は、どら焼き屋を去っていきました。
千太郎はなんとか徳江のつくるようなあんを作ろうとするのですが、ダメで、またやりきれないような思いで過ごしていました。
そんなある時、わかなちゃんが徳江と約束したからと言って一羽のカナリアを連れて店にやってきました。
【結】
千太郎とわかなちゃんは、2人で町はずれにある療養所を訪ねることにしました。
そこは、町のすぐそばにありながら町からは完全に遮断されたような空間を作っていて、そこでは、ハンセン病にかかった人たちが静かに暮らしていました。
そしてそこで、千太郎とわかなちゃんは、徳江と徳江の親友の佳子さんから彼女達の人生について聞かされるのでした。
徳江の作るあんはそんなどうしようもない過去のやるせなさとそれを耐え抜いてきた思いがいっぱい詰まったものだったのです。
2人から自分らしいどら焼きを作ってくださいという言葉を胸に、千太郎は、新たなどら焼きづくりに励みますが、思うようにはいかず、また、わかなちゃんと一緒に療養所を訪ねたのでした。
そこで待ったいたのは、徳江の死を報せる佳子さんでした。そして、佳子さんは、千太郎達に徳江さんからが残した手紙を渡すのでした。
そこには徳江さんの想いがいっぱい詰まっていました、そして次のような言葉が書いてありました。
「私達はこの世を見るために、聞くために、うまれてきた。この世は、ただそれだけを望んでいた。だとすれば、何かになれなくても、私達には生きる意味があるのよ。」
徳江さんが小豆の声に耳をすましていたように、私たちもいろんなものの声を聴こうとし続けなければならないのではないでしょうか。
The End - hmhm -