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投稿者:格さん
・大和ハウス、コスモスイニシアをついに買収(2013年04月17日東洋経済記事):http://toyokeizai.net/articles/-/13698 ↑Birds of a feather flock together.(同じ羽毛の鳥は群がる)ということか。 【週刊東洋経済2010年4月3日号から】 マンションの販売会社が購入者を裁判に訴えるという前代未聞の事態が勃発している。 舞台は、東京都多摩地域の13階建て96戸のマンション。3年前に同物件を分譲したコスモスイニシアは1月6日、マンション住民が組織する管理組合を突然、裁判に訴えた。 「(管理組合が主張してきた長期修繕計画の損害賠償請求権など)2217万円の債務が存在しないことの確認を求める」 訴訟の中身は分譲上のトラブルにおける債務不存在の確認請求だが、「被告」にされた管理組合理事長の田中直也さん(仮名、48)はふんまんやる方ない。 「コスモスイニシアは、手抜き工事やずさんな長期修繕計画を作成したことへの反省もなく、瑕疵(かし)への対応を引き延ばすなど、誠意のない姿勢を2年近く取り続けてきた。その揚げ句、司法の場を使って自分たちにいっさい非がないという理不尽な主張を押し通そうとするのは、上場企業の姿勢として理解しがたい」 トラブルのもととなる手抜き工事やずさんな長期修繕計画の作成について、マンションの住民は昨年10月に国土交通省に行政指導を求める文書を送っている。そのうえで昨年11月には前原誠司国交相宛てに、詳細な経緯を記した「上申書」を送付。提訴された後の今年2月には、地域の消費生活センターにも相談している。 事態を重く見た同センターは「消費者事故情報等」として消費者庁に内容を伝達しており、「現在、二つの担当課で宅地建物取引業法(宅建業法)および景品表示法に抵触しているか否かの検討作業が始まっている」(消費者庁)。 また、マンション住民は、管理業務を委託していたコスモスライフ(4月1日に 大和ライフネクスト に社名変更)の親会社となった 大和ハウス工業 の社長以下取締役および監査役全員にも、親会社として会社法の内部統制に基づく適切な子会社管理を行うように求める文書を送っている。 管理会社の責任を追及したのは、「コスモスイニシアから委託を受けて、項目の漏れの多い長期修繕計画案を作ったうえ、鍵の紛失や無断での管理費の引き落としなど、不適切な管理が目立ったため」(田中理事長)という。 こうした中、2月26日の衆議院国土交通委員会では、みんなの党の柿澤未途衆議院議員が同マンションを、「業者による長期修繕積立金の意図的な低額提示」の問題事例として取り上げた。 質問を受けた前原国交相は「まだ(上申書は)読んでいない」としたうえで、「(あらためて)資料をいただければ調査をし、適切な対応を取らせていただきたい」と答えた。また、住民の権利保護を目的に制定されたマンション管理適正化法に、長期修繕計画の低額提示の罰則を導入することについて、「前向きに検討したい」と述べている。 週刊東洋経済の取材要請に対し、コスモスイニシアは、「係争中につきノーコメント」、コスモスライフは「個別案件にはお答えできない」との姿勢を貫く。しかし、資料や実地調査、関係者への取材などを基に、住民と両社のやり取りを検証したところ、両社の顧客への対応には重大な問題があったと思わざるをえない。 施工不良が相次ぎ判明 対応を渋った分譲会社 紛争の発端は、2008年10月。近隣住民からマンションの外壁のあちこちに異変(調査で「白華(はっか)現象」と判明)が生じていると、田中理事長に伝えられたことから始まった(写真1参照)。 白華とはコンクリートの表面に現れた白色の物質で、炭酸カルシウムを主成分としている。多くはコンクリート内部に侵入した雨水が炭酸カルシウムとともに、外壁の表面に浮き出すことによって生じるもので、マンションの外観を損なう。 「分譲からわずか1年余りであちこちにシミのようなものが浮き出すのは理解しがたい」(田中理事長)と考え、当初、コスモスイニシアおよびコスモスライフに原因究明を求めた。 しかし、両社は「原因がはっきりしない」と繰り返すだけだったことから、専門のマンション管理士を通じて、一級建築士の紹介を受けた。建築士が調べたところ、予期せぬ事実が次々と判明した。 同建築士はこう説明する。 「白華現象が竣工から2年も経たずに発生したのは、外壁の防水工事がきちんと行われていなかったため。シーリングを除去し、タイルを取り去って補修を行う必要があった。防水上のもう一つの問題が、ウレタン防水がいいかげんに行われていた点だった。2ミリの厚さに塗ることが設計図書に記されていたにもかかわらず、実際は0・1~0・2ミリの厚さしかなかった。そのため、雨水の浸入を防ぐことができず、ウレタン防水のひび割れ部分の下のほうでも白華現象が始まっていた」 当初、コスモスイニシアは白華現象について、「汚れにすぎない」と住民に説明。修繕を渋り、「2年後に様子を見ませんか」と述べていたというが、最終的には「10年保障」を理由にすべて修理を受け入れた。 建築士が驚いたことはほかにもあった。廊下や階段、エレベーター設備を覆うアルミ製の手すり(写真)の取り外し費用が、コスモスイニシアが作成した長期修繕計画書から抜け落ちていたのだ。 建築士によれば、「大規模修繕では、手すりをいったん取り外さなければ、塗装ができない。そのために足場を組む必要があるほか、安全のための仮設の手すりの用意や取り外した手すりの一時的な保管も必要で、2500万円もかかることがわかった」。 また、長期修繕計画の中には、30年目以降の修繕項目として入れるべき重要な設備の更新費用が計上されておらず、その不足金額が3億4000万円にも上ることが今回の調査で新たに判明した。 このように、コスモスライフとコスモスイニシアの業務が、プロと呼ぶ水準には達していなかったのは明らかだ。 しかし、両社は、長期修繕計画の再策定や設計図書の引き渡しなど、管理組合が求めた対応の多くを渋ったうえ、昨年5月には「契約期間の満了」を理由にコスモスライフが管理組合に対し、管理委託業務から撤退する方針を通告。そして今年1月、コスモスイニシアが東京地裁に債務不存在確認訴訟を起こした。 宅建業法第31条およびマンション管理適正化法第70条ではともに、「(業者は)信義を旨とし、誠実にその業務を行わなければならない」と規定されている。しかし、「罰則がないことをいいことに、両社は誠実な対応を拒否している」と田中理事長は非難する。 手抜き判明後に倒産 駐車場施設で問題多発 あまり知られていないが、マンション会社と住民とのトラブルは、各地で発生している。その中には、業者の対応のまずさによって紛争が拡大した事例も少なくない(具体事例は写真2参照)。 大手マンション企業のダイア建設が分譲した東京都内のマンションでは、耐震上の安全性を保つことを目的とした「構造スリット」が設計図書どおりに施工されていないことが判明している。垂直スリットの44%、水平スリットの99%が未施工であることが明らかになった。 しかし、ダイア建設が住民の求める対応を渋り続ける中で数年が経過。「設計図書どおりに修復しなければ、大地震時に人命を損なうおそれが高い」として、08年11月に住民が2億8720万円の損害賠償請求に踏み切った。 ところが、その1カ月後にダイア建設は民事再生法の適用を申請。被害回復が難しくなっている。 ずさんな施工事例のほかに、近年、特に目立つのが機械式駐車場をめぐるトラブルだ。NPO法人北海道マンションネットの菅名一太常任理事は、「機械式駐車場の問題で、12件もの相談を受けている。5月ごろにも機械式駐車場問題に関する対策会議を開き、統一した対応方針を決めていきたい」と述べる。 菅名常任理事が相談に応じた、三菱地所が札幌市中央区で分譲した15階建てのマンションでは、機械式駐車場(36台収容)の鉄製パレット(自動車を載せる台)がさび付き、パレットの下に置いてあった自動車の屋根にさびが付着して落ちなくなる被害が多発。そのため、管理組合はこれまで駐車場に2度の塗装を行い、240万円の費用を支出した。 「道路にまかれた凍結防止剤がタイヤに付着したことが、機械式駐車場のさびの原因ではないか。しかし、分譲時にそうしたリスクについての説明はまったくなかった」 理事長(当時)の榊原文雄さん(仮名、71)が三菱地所に善後策を求めたのは昨年2月。当初、三菱地所の担当者は「相談を受けます」と語っていたというが、2カ月も放置されたために支店長に対応を要求。 しかし、費用の負担を拒否されたため、同社の木村惠司社長宛てに善処を求めたものの、「札幌支店に一任している」との返答が来た。ところが話し合いは進まず、支店長が顔を見せることは一度もなかったという。 三菱地所の説明は、「分譲した1997年当時、凍結防止剤による塩害は予見できなかった。それゆえに費用の負担はできない」というもの。その理由として、三菱地所は「当時、札幌市道ではさびを誘発させにくい酢酸系の凍結防止剤を使用していたこと」を挙げる。 一方、国道などでは塩素系物質が使用されていたことや、当時から塩素系物質が塩害をもたらしていることが知られていたことを理由に、住民は同社に抜本的な対応を求めている。 加えて住民は、機械式駐車場の修繕費用が20年間で865万円で済むという三菱地所が分譲時に提示した長期修繕計画も問題視している。 「同じメーカーの別のマンションの機械式駐車場(15台)では機械の入れ替えに必要な金額を含めて2800万円以上もかかるとされている。なぜ、36台の当マンションが865万円で済むのか、納得のいく説明がない」(榊原理事長)。 自浄作用がなければ罰則強化の可能性も 神奈川県大和市内のマンション(5階建て、35戸)でも、修繕計画をめぐる紛争が起きている。このマンションでは08年11月に、378万円をかけて機械式駐車場を含む鉄部分の塗装を行うことや、長期修繕積立金の倍近い値上げ計画が、突然持ち上がった。 不審に思った住民の佐久間忠さん(仮名、74、昨年10月に理事長に再任)が管理会社に問いただしたところ、事前に修繕工事計画に関する説明会を開く予定がなかったことが判明する。 さらに調べてみると、管理会社が多額の工事を行わせようとして裏で糸を引いている疑いも浮上。計画内容を精査したところ、必要性の乏しい箇所が多いことがわかり、当面の処置として15万円で済ますことにした。また、この管理会社では未経験の高齢者に管理業務を再委託するなど、管理の質にも問題が多かったため、入札で他社に切り替えた。 現在、日本では国民の1割以上に当たる1400万人がマンションで暮らしている。そして多くの人がマンションを購入し終(つい)の住処(すみか)にしようと考えている。にもかかわらず、購入者や管理組合を保護する仕組みは脆弱だ。 宅建業法やマンション管理適正化法など、契約について定めた法律はあるものの、罰則規定が弱いため、売り手本位のセールスや管理会社の不適切な対応が依然として目立つ。 しかし、こうした姿勢が長続きしないことは確かだ。今後は、法改正による罰則強化も浮上する可能性がある。業界が売り手本位の姿勢を改めないかぎり、トラブルは後を絶たず、企業の信用も高まらないだろう。               * * * * * * * インタビュー/大久保和孝・新日本有限責任監査法人CSR担当パートナー *トラブルの原因は販売姿勢 経営者の真摯な対応が必要 マンション販売では、コストが適切に反映されていない「長期修繕計画案」を提示して販売している不動産会社も多い。月々の修繕積立金の所要額を、実態よりも低く見せることで、マンションを売りやすくしていると言われても仕方がない。いざ、10年後、20年後に大規模修繕工事に直面すると、住民が多額の一時金支出や修繕積立金の大幅引き上げを迫られる例は少なくない。 高度成長期であれば、売り方が多少乱暴でも、結果オーライとなりやすかった。しかし、低成長が続き、人口の高齢化が進む現在、居住者の将来の所得増を当てにした修繕積立金の計算が成り立たないことは明らかだ。 *不十分な説明で紛争発生 現場任せの対応は限界 にもかかわらず、販売・管理会社は経済情勢を踏まえた修繕積立金の設定や顧客への十分な説明をしてこなかった。その結果、重要事項について「きちんと説明を受けていない」というトラブルが発生する。 他方、購入者ももっと賢くなる必要がある。マンションは本体の購入金額が高額であるため、購入額ばかりに関心が集まり、反面、月々の管理費や修繕積立金が適正か否かについて目が届きにくい。 顧客が油断していると、悪質な業者につけ入るすきを与える。無論、トラブルの第一義的な原因は、マンション販売会社の姿勢にある。 企業は自社に不利な情報であっても、きちんと開示していくことが必要だ。そのうえで、責任を持って顧客に対応していくことが、評価される時代になってきた。 トラブル発生時にも法的責任を超えた販売・管理会社としての社会的責任を自覚し、問題に真摯に向き合い対応を図る必要がある。社会の価値観が大きく変化する中、このような業界にとって本質的な問題については現場任せにせず、経営者自身が正面から向き合うことが必要だ。 【関連記事】 ・大和ハウス、コスモスイニシアをついに買収(2013年04月17日東洋経済記事):http://toyokeizai.net/articles/-/13698 ● ↑ Birds of a feather flock together.(同じ羽毛の鳥は群がる) ということか。 【元記事】東洋経済 2010年4月15日 ・マンション住民の困惑、ずさんな施工や修繕計画でトラブル続発:http://toyokeizai.net/articles/-/4007
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