投稿者:牛原山人
慈悲
物を育(めぐ)み慈(いつく)しむ 心の深きを慈悲といふ
我召しつるひの下人下女に 慈愛あるはいふまでもなし
至極の道理なくば虫蜲(けう)の 命も絶つまじきなり
されば西行の詞にも 山深くわけ入て心を澄まさんより
大悲の深かるんは まさりて覚ゆるといへり
所々に千々の草木の 種は多けれとも ただひとつの雨に
恵み初(そめ)て春の花に 仁愛の徳の色をあらはす 譬(たとへ)は
父母の子を育(めぐ)み養ひて成長立つるがごとく 外より強いたるにも非ず
名聞(めいもん)のためにも非ず
慈悲心(じきしん)お厚き所也