投稿者:牛原清泉
礼譲
今の人の礼といふは 身容(なりかたち)の威儀をかは刷(つら)ふ事より
膳のすへやうは 飯の喰やうは 角(かく)するものと
その信を弁(わき)まへ侍(はべ)るを 礼と思へども これらは皆
礼譲(れいじょう)の第二義にて 表一通りの事也(ことなり)
誠の礼譲といふは つつしみ敬ふ事を本ととす
我父母より舅姑(しうと、しうとめ)兄、夫を初(はじめ)として
惣(すべ)て 我より上(かみ)ざたなる人に対しては
真実心(しんじつしん)をもって つつしみ敬ひ
我が身をへりくだりて 先だたぬを礼譲の 第一義とする也
然れども 處(ところ)で尊敬すまじき人に 礼譲の過ぎたるも
洩(へつら)ひなれば 其の分限(ぶんげん)をしるべきもの也