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0、0、106532

基本的に管理人の更新履歴&呟き&お知らせ用です。
緊急でご連絡がある場合は書き込みしてもらえるとメールよりは返信早いかも。
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お知らせ。 syerty 投稿日: 2011年04月19日 22:38:29 No.44 【Home】 【返信】

突発的にチャット開放中~。<br>GDでも鰤でもどのジャンルでもお話してくださる方よければどうぞー。<br><br>GDはネタバレありでもなしでもご希望のままに(笑)。<br>でもうっかり言っちゃうかもしれないから絶対ネタバレ嫌な方は逃げてー。<br><br>では、新作とか感想とか書きつつ覗いてます。


GD新刊。(軽くネタバレあり要反転) syerty 投稿日: 2011年04月15日 23:11:53 No.42 【返信】

予想通りのストーリーで嬉しくて、今日は頭痛で死んでたんだけど、一瞬その痛みもぶっ飛びました(笑)。<br><br>浅クロと開発班創成期の秘話と内藤さんの話。<br><br>なんと、38巻目にしてやっとやっと城パパがちゃんと登場しました!<br>格好いい!<br>髪下ろしてる姿とか。<br>ってゆーか髪下ろしてると岩瀬に似てないか?<br><br>それがらみでお城も出たし、内藤さんとパパの関係も見られたし、幸せです(笑)。<br><br>ちょっとマイ設定が色々揺らいだけど。<br><br>あと隠れてるパパの名前は某教授と同じに読めますがいかがでしょうか。<br>とにかく萌え萌えでどうしようかと。<br><br>また落ち着いたらストーリー追いに来ます(笑)。<br>


更新履歴。 syerty 投稿日: 2011年04月08日 15:23:22 No.41 【Home】 【返信】

もう四月ですね。<br>あれから一月近く経つことに全然実感がありません。<br><br>例年よりは暇とはいえ、仕事もわりと忙しい状態になり、日々色々なものに追われる感じで過ごしています。<br>なんかやたらと過食に走っているのはやっぱりストレスかしら。<br>動いてもいないのにやたらめったらお腹が空きます。<br><br>そんな中、無事に桜も咲き始め、うちの窓から見える川岸の桜並木もだんだんピンクに染まってきました。<br>家にいながらにしてお花見できるありがたみを感じつつ(実は花火見物も出来ます)桜餅を味わっています。<br><br>というわけで、今回は「花見」をテーマに拍手入れ替え。<br>前回の拍手と、この履歴で書いていた「繋ぐひと。」「送り出すひと。」「帰ることを願うひと。」はそれぞれ各ジャンルに収納いたしました。<br>消そうか残そうか迷ったけど、これも私のその時の心の動きなので、まあひっそりと。<br>拍手と同じ扱いでGDは総合TOPからのみいけますので、もしよろしければどうぞ。<br><br><br>更新がない日々も、拍手ありがとうございます。<br>ちょっと遡れないくらいになってきたので、近々コメントとメールのお返事だけ載せますね。<br><br>最近お礼が遅くなるのを見越してかコメントが少なくなってるので(笑)、ある意味とっても寂しいのですが、まあ自業自得ですね。<br>すみません・・・。<br><br>そしてその少ないコメントになかなか返信できなくて本当に申し訳ないです。<br>でも、一言あるだけで本当に力をもらっているので、懲りずにまた話しかけてやってくださいませー。<br><br>ではでは、取り急ぎ。<br>また夜に来れたら来ます。<br><br>あー、久々にチャットもやりたいんだけどなぁ。<br><br>今月は連休があるのでそれを目指して・・・。<br>


発送連絡。 syerty 投稿日: 2011年03月24日 17:27:49 No.40 【返信】

Y・H様、大変遅くなりましたが昨日付けで発送しております。<br>無事にお手元に届くことを願っております。<br>もうしばらくお待ちくださいませ。<br><br>では取り急ぎ。


更新履歴。 syerty 投稿日: 2011年03月22日 04:26:26 No.39 【Home】 【返信】

更新って言っていいのかわからないけど。<br>ずっともやもやしていた気持ちを吐き出す術をこれ以外に見つけられなかったから、お話として形にしました。<br><br>この下の3つの記事、「送り出すひと。」「帰ることを願うひと。」「繋ぐひと。」です。<br>二次創作の形を取っていますが、今の現状を踏まえての話なので、辛いなと思われたら読まないでください。<br><br>反転すれば読めますので、私のぐるぐるしてる正直な気持ちを読んでやってもいいよって思われたら読んで欲しい。<br><br>そして、これは私の意見なので、それに思うことがあったら教えてもらえると嬉しいなと思います。<br>それはきっと新しい発見だからね。<br><br>んー。<br>幸せな気分になれるようなハッピーな話を書きたかったんだけど、元々がそういう作風じゃなくてなかなか難しくて。<br>でも、落ち込む話でもないかなと思ったり。<br>まあ、私の内面の記録みたいなものかもしれないです。<br><br>作品として残すかどうかもわかりませんがよろしければ。<br><br>ちなみに、「送り出すひと。」は城パパ&城ママ、「帰ることを願うひと。」は原作設定のアレク+城、「繋ぐひと。」は京浮です。<br><br>あ、もちろん、そんな深く考えずに作品として読んでもらっても全然構いません。<br>話として面白いとかつまらないとかそういう感想も普通にお待ちしております(笑)。<br><br>ではでは。<br><br>通販・メール関係、もうちょっとだけお待ちをー。<br>遅れてて本当にすみません!<br>


繋ぐひと。 syerty 投稿日: 2011年03月22日 04:12:04 No.38 【Home】 【返信】

<br><br>こんな光景を、何十、何百と見てきた。<br><br>時に戦争で。<br>時に大事故で。<br>時に天災で。<br><br>何の罪もなく、何の業もない命が、次々に肉体を離れていくのを、ただ刀を握り締めて見つめていた。<br><br><br>ヒトがその身体を離れ魂魄になってからが死神の仕事の始まり。<br><br>それまでは何があろうとも手を出すことは出来ない。<br>例え、目の前の命を救うことの出来る力を持っていても。<br><br>総てを救えない限りは例外は許されない。<br>それがこの世の理であり、動かせない真実である。<br><br>神と名がついていても、結局どうしようもなく無力な己に、今まで何度も何度も唇を噛み締めた。<br><br>そんなに毎回哀しんでいたら、君のほうがもたないよ、と千年来の恋人は告げる。<br>そういう自分だって、同じように酷く無力感に苛まれているくせに。<br><br>ただこちらを安心させるためだけにいつのものように薄く笑う顔を見て、仕方のない奴だなとそんな彼に苦笑して、またどうしようもなく哀しくなる。<br><br><br>己も彼も同じ罪を背負っている。<br>この世の理というものに縛られたまま、消え行く命をただ見守るしか出来ないという罪を。<br><br>そうであるからこそ自分たちは『死神』と称されるのだと、もう遠く遥か昔から覚悟をして長い刻を生きて来たつもりだ。<br><br>それでも、度々ヒトの世を襲う大小の悲劇を見つめるたびに、心が引き絞られるようだと思った。<br><br><br>浮竹や京楽のように、瀞霊廷内で生まれた貴族は、現世で死して尸魂界へやって来たわけではない。<br>貴族は、その最初から尸魂界に生まれ尸魂界に消えていく。<br><br>そして死神とは、元々はそんな貴族である人間のみがなれるものだったのだ。<br><br>かつて、師が行った改革と共に、今は流魂街出身の死神も多く存在する。<br><br>流魂街に生きる人々は皆、かつて現世にてヒトとして生き、やがて死して尸魂界へと送られた輪廻する魂魄だ。<br>彼らにその前世の記憶はないはずだが、それでも現世でヒトの世の苦しみを見つめる時、彼らは貴族の死神たち以上に、その光景に特別な感情を抱いているように見える。<br><br>それを見止める時、浮竹は少しだけ、師の意に反して死神は貴族のみの方が良かったのかもしれないと思うことがあった。<br><br>魂にその記憶の欠片すらない自分でも、この光景にこんなにも心揺らされるのだ。<br>であるならば、実際にこの世界に生きた彼らの魂魄の、その奥底にあるものが死神としての規制を超えて揺らがないと誰が言えるだろうか?<br><br>この手で助けられる命が次々に失われて行く時に、その力を決して使わないでいられると誰が保証できるだろう、と浮竹は憂う。<br><br>そんな考えは、死神としての誇りを持つ流魂街出身の同僚や部下たちに対する侮辱だと、よくわかっている。<br>それでも、この世の悲劇を千年の永きに渡ってそれこそ飽きるほどに見てきた己ですら、今この瞬間も、悲鳴や怒号や嘆きを耳にするたびに、伸びそうになる手を何度も抑え付け握り締めなければならないのだ。<br><br>死神ですら届かぬ領域から前触れもなく起こる災禍に、それが起こるたびに、己の無力さに対する苛立ちばかりが募った。<br><br><br>「浮竹」<br><br>そっと、大きな手が伸びてきて、握り締めた拳を開かせる。<br>強く強く爪が食い込んだ白い手のひらには、紅い跡が刻まれていた。<br><br>「これ以上握り締めると血が出るよ」<br>「……このくらい、平気だ」<br>「キミは平気でもね。魂葬する時に手が滑ったらどうするの」<br><br>今まで何度も繰り返されたやり取りに、浮竹は僅かに俯いた。<br><br>穏やかで静かな京楽の言葉はいつだって変わらない。<br>いつだって軽薄さとやわらかさの内側に冷静さと慎重さを隠している彼は、誰よりも正しい判断を下す。<br><br>多分、浮竹よりもずっと深い場所を彼はいつも冷徹なまでに冷静に見つめているのだ。<br><br>けれどそれでも、それは決して彼が無感情であるということではない。<br>感情の示し方が、浮竹と京楽とでは少しばかり違うだけだ。<br><br>浮竹は、それを誰よりもよく知っている。<br><br>けれど、それがわかっていても、浮竹は時に恋人のその冷静さが酷くもどかしかった。<br><br><br>「わかってる!」<br><br>少しばかり語気を強めて、開いた手で刀をしっかりと握り直す。<br>始解し、二本に分かれた斬魄刀が、主を宥めるように震えた。<br><br><br>通常、現世の魂葬に隊長格が派遣されることはない。<br><br>今回浮竹と京楽が共に派遣されたのは、彷徨い出た魂魄の数があまりに多かったからだ。<br><br>死した魂魄は、死神によって魂葬され尸魂界へ送られる。<br>魂葬は、死神なら誰でも行える作業だが、しかし同時に行う者の手腕によって確実に上手い下手がある作業だった。<br><br>下手なものが行えば、魂魄に更なる痛みと苦しみを与えることとなり、魂魄そのものに傷がつくこともある。<br>傷が深ければ、その魂魄は現世での記憶は消えても物理的な傷は消えないまま流魂街へと送られてしまうのだ。<br><br>魂魄に傷がつくということの意味を、誰よりもよく知る浮竹は、それゆえに今回、己が現世へ降りることを願い出た。<br><br>隊長格は、魂葬の手腕も特別なのだ。<br>彼らはより多くの魂魄を、無傷で魂葬することが出来る。<br>これだけの数の魂魄でも、その総てを無傷で尸魂界へ送ることが出来るのだ。<br><br>教え子のその意を汲んで、総隊長は今回、特別に浮竹の現世行きを許した。<br>ただひとつ、同じ隊長である京楽の同行を条件として。<br><br><br>「さぁ、お行き。決して手を離さないで」<br><br>屈み込んだ京楽が、手を繋いだままの母子を同時に魂葬する。<br>浮竹と同じく二刀一対の彼の刀の柄尻は、寸分違わず同時に二つの魂魄の額に押し当てられた。<br><br>これで、彼らは流魂街の同じ場所へ送られる。<br>母子であったという記憶は残るまいが、互いを愛しむその想いはきっと残るだろうと思いながら、浮竹は己も眼前の魂魄に向き合った。<br><br><br>闇に覆われた現世の片隅で、まだ生のある若い女性が同じくまだ若い男性の身体に縋って泣き叫んでいる。<br>その声に引き止められて、その男性の身体から抜け出した浮竹の目の前の魂魄は急速に半虚になりかけていた。<br><br>そしてこの魂魄は虚と化したら確実にあの女性を喰らうだろう。<br>例えそれをあの女性自身が望んでいるのだとしても、彼女に生がある限り、それを赦す訳にはいかない。<br><br>浮竹は一瞬だけ瞑目し、徐々にヒトの表情を失いつつある魂魄に向き直った。<br><br><br>「まだ間に合う」<br><br><br>低い囁きに、ほんの僅か反応する瞳。<br>その瞳を見つめて、浮竹は遥か遠い下界を指差した。<br><br>「彼女にはまだ彼女を愛する人がいる。君以上の強さではありえなくとも、彼女を愛し、彼女の生を望むものはまだたくさんいるんだ」<br><br>死に自ら近づこうとする彼女を引きとめようとする無数の白い手。<br><br>あれは念だ。<br>彼女の命を逝かせまいとする、多くの人々の思念。<br>せめて彼女だけでも生きろと願う人々の心。<br><br>その白い手を見た瞳がほんの少し理性を取り戻す。<br>ヒトと虚の狭間で揺らぎ、苦しげに歪んだその顔に、浮竹は始解を解き己の指先を差し伸べた。<br><br>「彼女を愛しているのなら、今もその気持ちがあるのなら、彼女を喰らう前に君はゆくんだ。その手伝いをするために俺は来た。今ならまだ間に合う。君はまだ、彼女を救える」<br><br>闇に染まった双眸から、一筋光が流れる。<br><br>それは、魂魄のみになった存在が流す乾いた涙。<br>その光が、浮竹の指先を走る。<br>その僅かな温もりに、浮竹は微笑んだ。<br><br>胸に開いた僅かな孔を、それ以上拡げないようにとでもいうように、その青年は己の胸元を掴む。<br>浮竹はそれを見て取って、己の刀を握り直した。<br><br>「大丈夫だ。ヒトは強い。彼女もきっとまた立ち上がる。だからどうか君も幸せになりなさい」<br><br>彼が行き着く先が流魂街のどこの場所なのか、浮竹にはわからない。<br>この先、この魂魄と出会うことなどないのかもしれない。<br><br>でもただ今は、彼を少しでも安らかに魂葬することだけを願って、浮竹は己の刀の柄尻を掲げた。<br><br><br>愛する人と離れたくない気持ち、その狂気に近い感情を、浮竹もまたよく知っている。<br>自分が死に近づく時、苦しくて寂しくて恐ろしくて、愛する人を引き寄せようとする弱さを知っている。<br><br>それはきっと、死に逝く方も遺される方も同じだけの強さで願う、狂おしいほどに愛する存在を求める気持ち。<br><br>今度こそ、ダメかもしれないと諦めかけた時に、いつでも傍にいる存在を引きずり込んでしまいそうな自分の身勝手さを、誰よりも自分自身がわかっている。<br><br>けれど、それと同時に、浮竹は知っているのだ。<br>そうやって自分が引き寄せようとしてしまう存在を、なんとか留めようとする大勢の人々がいることを。<br><br>それは、彼の忠実な副官であったり、いつまで経っても不肖の弟子である自分たちを叱ってくれる師であったり、永きに渡って己を支えてくれた先輩であったりする。<br><br>彼らがいるからこそ、浮竹は狂おしく求めるその存在が、それでも例え自分を失っても生きていけるだろうと確信できる。<br><br>それは酷く曖昧で矛盾した考えだ。<br><br>自分と共に死の孤独に飛び込んで欲しいとどこかで願いながら、それでもせめて彼だけは幸せに生きて欲しいとも願う。<br><br>その相反する感情は、それでもどちらも真実だった。<br><br><br>「どちらが正しいのかはわからない。でも、彼女にはまだ彼女を必要とする存在がある。そうである限り、彼女の生まで絶つことはできない」<br><br>切なげなその浮竹の言葉に、青年は微かに頷いた。<br><br>京楽が魂葬した母子のように、同時に死せる魂は、ある意味では幸せなのかもしれない。<br><br>しかしそれは、終焉を伴う幸せでもある。<br>そこには、進む未来はない。<br><br>でも、生き残った魂には、いつか新たな別の幸せが訪れる可能性が無限に広がっているのだ。<br><br>それゆえに、ヒトはヒトの生を願う。<br>生きてゆくうちにいつか再び出会えるかも知れぬ幸福を願う。<br><br>そしてそのヒトの世の営みを、浮竹たち死神は見つめ続けるのだ。<br>己自身の生を全うする日まで。<br><br>「安らかに逝くがいい。新たな命を得てまた人を愛せ」<br><br>ゆっくりと目を閉じた青年の額に、羽根のような軽さで柄尻を押し当て、浮竹は微笑む。<br>消え行く魂魄の光の欠片が、嘆き続ける女性に降り注ぐのを彼は見た。<br><br><br>「生きろ」<br><br><br>どうか生きて、またその命を次に繋げ。<br><br>願いを込めて、浮竹は天を振り仰ぐ。<br><br>次々に魂葬されていく魂魄が、星のように輝き溶ける。<br>その輝きの下に、優しく微笑む誰よりも大切な存在の姿があった。<br><br><br>****************************<br>例えば、この世に二人だけだったら、片割れがいなくなったら自分も消えたいと望むでしょう。<br>否、それはもしかしたら、二人だけじゃなくても、一番大切な人を亡くしたらみんなそう思うことなのかもしれない。<br>実際、その哀しみに耐え切れなかった人も知っています。<br>でも、そうしてもうひとつの命が消えたら、そのことをまた悼む人がいる。<br>もしかしたらまたその人も、その哀しみに耐えられないかもしれない。<br>そう思うと、その哀しみの連鎖はある意味で、復讐の連鎖と同じくらい怖いものなのかもしれないと思います。<br>生き残ったことに意味がある助かったことに意味があるとか、私はそんな風には思わない。<br>それが運命だとか天命だとかそんな風にも思わない。<br>ただ、たくさんの偶然の重なりの上で生きているなら、やっぱり生きている以上は誰かに何かを繋げていかなきゃいけないんじゃないかなと思います。<br>どれだけ孤独に思えても、生活している以上誰かとは繋がっているみたいに。<br>死んだほうがマシって思えることがこの世の中にはごろごろしてるってわかってる。<br>それでも今生きているなら、今生きてて死んだほうがマシって思ってるなら、そう思ってることを誰かに伝えて欲しい。<br>そうしたら、そうじゃなくなるかもしれないから。<br>綺麗事かもしれないけど、本気でそう思ってます。<br>今回の震災を通じて特に。<br><br>****************************<br>


帰ることを願うひと。 syerty 投稿日: 2011年03月22日 03:53:03 No.37 【Home】 【返信】

<br><br>「準備できた?」<br>「ええ」<br><br>長い黒髪を高く結い上げ、覗き込んできたパートナーに、城は静かに頷いた。<br><br>いつもと変わらないやり取り。<br>いつもと変わらない笑顔と、いつもと変わらない声。<br><br>その、あまりにいつも通りな状況に、城は微笑んだ。<br><br>おかしなものだ。<br>これから自分たちは確実に死に近い場所へと行くのに。<br><br>それでも、心はこんなに凪いでいて、触れた存在はいつも通りに穏やかであたたかだ。<br><br>人間というのは、本当に面白いものだ、と城は思う。<br><br>恐れに囚われてパニックに陥るのも人。<br>それを宥めて冷静にさせるのも人。<br>魂を吐き出すように嘆き哀しむのも人。<br>それをひたすら慰め励まし続けるのも人。<br><br>躓いて転ぶのも、そこから立ち上がって歩き出すのも、すべて同じ人の営みだ。<br><br>人がそうして行う事柄の違いは、一体何処から来るのだろう?<br><br>もって生まれた性格?<br>育った環境?<br>教えた人間?<br><br>守るべきものを持っている人が強くて、そうでない人が弱いのならば、既に家族のない自分は、酷く弱い存在であることになる。<br><br>守るべきものがないのなら、戦う必要もないはずなのに、自分はこうして戦地へ行こうとしている。<br><br>命を懸けることになるのだと知っていて。<br><br>守るべき存在がいないのに、それでも誰かを守ろうとするのは自己犠牲という名の自己満足だろうか?<br><br>この世界に一人きりの自分でも、誰かを守って死ねるかもしれないという甘美な誘惑。<br><br><br>命を落とす確率が高いのなら、少しでも孤独で、少しでも年嵩の者が行くべきだ、と告げた城に、石川は容赦なく手を上げた。<br>自分の方が泣きそうな顔をして。<br><br>城は、今でもそう告げたことを後悔はしていない。<br><br>誰だって、家族や恋人や友人を亡くしたくなんかない。<br>だったら、哀しむ人間が物理的に一番少ない人間が一番初めに赴くべきだ、と城は思う。<br><br>例えば、両親と多くの兄弟がいる本木よりも、天涯孤独な自分の方がもしもの際には絶対的に哀しむ人間は少なくて済む。<br><br>この職場で共に過ごした同僚たちはきっと城の死だって哀しんでくれるだろうが、それでもその哀しみは家族を亡くすものとは重みが違う。<br>城は、自らもそうして家族を亡くしたものとして、それを事実として知っていた。<br><br>綺麗事なんか今更言っても仕方がない。<br>悲しみの度合いは、その関わり方で絶対的な差が出るのだ。<br><br>それでも、石川はその言葉を真っ向から否定した。<br><br>『今、お前は生きていて、俺や他の皆と既に繋がっている。その時点でお前はもう一人じゃないし、その命の重みに差なんかない』<br><br>強い瞳でそう告げた石川に、城は苦笑した。<br><br>ああ、この人ならば本気でそう思っているのかもしれない。<br>それだけの強さと愛情を、この人は抱えられるのだ。<br><br>かつて、城の父がそうであったように。<br><br><br>でも同時に、城は知っている。<br><br>人間の価値観は、人それぞれ違うのだ。<br>そして、彼らのようにそういう風にあれる人は決して多くはない。<br><br>大抵の人は、罪悪感を覚えながらも自分や自分の周りの小さなコミュニティを一番に守ろうとする。<br>そこには、意識的にしろ無意識的にしろ歴然とした優先順位があるのだ。<br><br>それは多分、人間だからではなくて動物としての本能なのだと思う。<br><br><br>石川の強い言葉を、傍らで聞いていた西脇もクロウもアレクも、多分それが石川だから言える理想論だと知っている。<br><br>石川にとっては本当にそれが真実だし、それは決して間違ってはいないのだ。<br><br>けれど、城の言葉もまた、真実であり間違ってはいない。<br><br>誰かが犠牲にならねばならぬなら、その犠牲にも順位を付けねばならぬ。<br>全員で行動できないのなら、その順位は必ず必要になるものだった。<br><br>定年間際の隊員が志願したのも、城のように天涯孤独な隊員が志願したのも、それをわかっているからだ。<br><br>それは、彼らにとっては自己犠牲ではない。<br>彼らにとっては、それが今考えうる最良で最善の選択であり、一番合理的なやり方だった。<br><br><br>英雄と呼ばれたいわけではない。<br>自分が犠牲になって皆を助けたいと聖人のようなことを思っているわけでもない。<br><br>ただ、誰かが何かをしなければならないのなら、少しでもたくさんのものを残せる人が生き残ったほうがいい。<br><br>少しでもたくさんの人を哀しませないで済む方法を実行した方がいいと考えただけだ。<br><br>その考えに関しては、城は石川になんと言われようと違える気はなかった。<br><br><br>けれど、そんな自分にこうして共に行くと告げたアレクの存在は想定外だ。<br><br>城にとってアレクという存在は、まさに多くの人間と密接に繋がっている『犠牲になってはならない』存在だった。<br><br><br>「本当にあなたも行くんですか」<br>「しつこいね、城ちゃん」<br><br>いつも通りの口調でアレクは笑った。<br><br>その表情に気負いも恐怖もなく、その濃い色の瞳はまっすぐに城を見つめていた。<br><br>「あなたには家族も大勢いるでしょう。まだ間に合います」<br><br>アレクの戦闘力は確かに桁違いだが、それでもそれがないからといって失敗するような任務でもない。<br>けれど、アレクは城のその言葉に首を振った。<br><br>「お城が志願して行くのはお城の勝手。だから俺もクロさんも西脇さんも止めなかったでしょ。でも、俺がそれについていくのも俺の勝手だよ」<br>「意味がないといっているんです。こういう言い方は好きじゃありませんが、このままでは無駄死にすることになりますよ」<br><br>いつも通りの世間話をしているような静けさで城は告げる。<br>けれど、アレクはその言葉にふっと笑った。<br><br>「それだよ」<br>「は?」<br>「お城はさ、死ぬ気で行く気だったでしょ」<br>「……確率的にそうなる可能性が物凄く高いと思いますが?」<br>「うん。でもさ、それは飽くまで確率なんだよね。百にどれだけ近くてもさ、百じゃないんだ」<br><br>そこは大きな違いだよ、とアレクは笑う。<br><br>「死ぬ気で行ったら絶対死ぬよ。自分がそうなるって思ってるんだもの。だから俺はどんな絶望的な場所にだって死ぬ気で行ったことなんて一度もない。毎回毎回絶対生き残ってやるって思ってる」<br>「あなたらしい考え方ですね」<br>「馬鹿にしてる? 言っとくけどね、これは本当のことだからね。よくさ、強く願えば必ず叶うって言うでしょ。お城はさ、そういうの信じないよね?」<br>「ええ」<br><br>それは、どれだけ願っても、叶わなかったことがあることを知っているからだ。<br>けれど、アレクは真剣な表情でそんな城を見つめた。<br><br>「願えば叶うっていうのはね、人は願えば動く生き物だからだよ」<br>「動く?」<br>「強い願いはね、願っただけで終わらないんだ。その願いを叶えるために、じゃあ次はどうしようって考える。考えたら考えた分だけアイディアが出て、今度はそれを実現するために動こうとする。その連鎖が願いを叶えるんだよ」<br><br><br>祈りの力だけでは何も動かせない。<br><br>けれど、祈れば次の行動に出ることができる。<br>祈ることができる人間は動かすことのできる手や足や頭があるのだから。<br><br><br>「だから俺は一緒に行く。絶対にお前と一緒に生き残ってここに戻ってきて、一緒に岩瀬の前で隊長に抱きつかれてみせるよ」<br><br><br>本当に、人間というのは不思議なものだ。<br><br>城の中の理性の部分が、そんなのは夢物語だと告げている。<br>アレクが何を言ったところで危機的な状況は変わらないし、命を落とす確率も変わらない。<br><br>それでも、この瞳に見据えられると、ここへまた戻ってこられるかもしれないという根拠のない期待が生まれてくる。<br>そして総ての覚悟を決めたはずの自分は、その祈りに縋りたくなっていた。<br><br>「お前は独りだったら絶対に自分の死を恐れない。でも、俺が一緒だったらお前は俺の死を恐れるだろう」<br><br>ふっと笑って、何処か得意げにアレクは告げる。<br><br>「俺が一緒だったらお前は最後まで生きることを諦めないよ」<br><br>宣託のように告げられたその言葉に、城はしばらく絶句して、そしてやがて小さく笑った。<br><br><br>「……本当にあなたはポジティブというかオプティミストというか……。敵いませんね」<br>「ふふふー。惚れ直しちゃった?」<br>「元々惚れてません」<br><br><br>いつも通りの口調で、いつも通りの表情で。<br>いつも通りのやり取りをして、戦いに赴く。<br><br>独りで行くはずだった場所へ、掛け替えのないパートナーと共に。<br><br><br>「諦めない、か」<br><br><br>覚悟を決めるのもギリギリまでなりふり構わず足掻くのも、どちらもやっぱり人ならば、その一番最期の瞬間まで諦めないで理想を追うのもいいかもしれない。<br><br>せめて、この優しい人だけは、彼を待つ人々の元へ生きて帰せるように。<br>そして、出来る事ならば自分も彼の隣に戻れるように。<br><br>強く願って、城は一歩を踏み出した。<br><br><br>****************************<br>これは、どんな仕事でもそうだと思うんだけど。<br>こうしたい、ああしたいって目標を決めないと、絶対に達成はできないし、無理だなって思うと本当に無理になる。<br>職業柄、毎月ノルマがあるんだけど、ありえない目標でも、私が無理だなって思うとそれは下の子にも伝染して無理だなってムードになるんだよね。<br>それが多分、現場の士気ってやつだと思う。<br>だから多分、リーダーには理想論としか思えないようなことを大真面目で言える石川さんみたいな人が向いている。<br>私はどっちかというと城ちゃんタイプなので結構大変。<br>でも、せめてアレクさんくらいにはなりたいな、と努力してます。<br>最大限の努力を今も続けている方々に。<br>今は終わりが見えなくても、永遠なんてないって信じて日常へ帰る日を願い続けて欲しいと思います。<br>直接手助けできない私たちも願い続けて動くから。<br><br>****************************<br>


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